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ITエンジニア向上プロジェクト

第6回 お金だけじゃない。副業で得られるもの

千葉大輔(@IT自分戦略研究所)
2007/1/24

現在ITエンジニアという職業は3Kといわれ、若者の間では人気が落ちてきている。さらにエンジニアリングの世界から離れてしまうITエンジニアも増えているという。@IT自分戦略研究所はこの事態を見過ごすことはできない。そこでITエンジニアの価値や生活を向上させるヒントを探る。

  現在のIT業界は好景気といわれているが、その影響を肌で感じているITエンジニアはまだそれほど多くないかもしれない。そうした中で収入を上げる手段として「副業」を考える人も多いのではないだろか。

 労働政策研究・研修機構の「日本人の働き方総合調査結果」によると、正社員の6%に当たる人が副業をしているという。

 友人の仕事の手伝いや株式投資など、どのような副業をするのかは、人によってさまざまだ。だが、収入に加えて、自分のスキルやキャリアにとってプラスになるような副業ができれば、これに越したことはない。実際に副業をしているITエンジニアに話を聞き、そのメリットや副業を続けていくための条件などを探る。

普段から意識的に人脈をつくる

 今回話を聞いたのは佐藤誠一氏(仮名)。佐藤氏はネットワークインテグレーションやサーバ運用を行う会社の運用部門の責任者として働く傍ら、副業として本業と同じサーバ運用の仕事を個人で請け負っている。主に管理・運用を行うが、案件によっては初期構築やシステム開発の一部も行うという。「サーバ管理の仕事は大きな問題がなければ、それほど手をわずらわされることがありません。ほかに副業をしている人からすると特殊なケースだとは思います」

 佐藤氏が副業を始めるきっかけとなったのは、現在勤めている会社への就職だった。いまの会社に誘われた際、それまで仕事をしていた会社から「抜けられると困る」と相談を受けたという。「そこで1週間のうちの何日かをいまの会社の仕事、残りの何日かをそれまでの会社の仕事と割り振ったのが最初です。それを承諾してもらうという条件で就職を決めました」。とはいっても、佐藤氏がいま勤めている会社は本業に支障が出なければ副業は構わないというスタンス。特に副業に関して制限を設けていない。実際、佐藤氏の同僚の中には副業を持っている人が何人かいるという。佐藤氏が個人で取引をしている企業は現在4社。もう間もなく1社追加されるという。

 こうした案件をどのようにして獲得しているのだろうか。「お声掛けをいただくことが多いです。あまり自分から営業するものではないと思っています」と佐藤氏。では、顧客から声を掛けてもらうには何が必要なのだろうか。「とにかく知り合いをたくさんつくっておくこと。そして自分が副業を持っていることを、それとなく伝えること」だと佐藤氏は話す。そうすることで「これくらいの規模なら」と顧客から声を掛けてもらえることがあるという。「普通に仕事をこなすことができれば、自然と評判は上がっていきますし、同じ顧客が別の案件を任せてくれることもあります」

副業のメリットは「お金」だけではない

 本業と副業という二足のわらじを履くことで得られるメリットは何か。まず考えられるのは「収入」だ。佐藤氏の本業と副業で得られる収入の割合はおよそ6対4。収入全体に対して、副業で得られる収入が大きなウエートを占めている。「副業分の収入がないと生活を維持することが少し難しいです。最近は本業の調子も良くなったので以前に比べて楽になりましたけど」

 収入面でのインパクトもさることながら、佐藤氏は「本業では得られない経験」を副業のメリットとして挙げる。普段からさまざまな経験を積むことで、1つの仕事だけでは得られない経験、スキルの獲得も狙える。「普段の仕事では触れないような環境のサーバに触れることが自分の中ではすごく大きいことだと感じています。またドキュメントの書き方も勉強できました」

 さて、6対4という収入の割合に対して、作業に充てる時間の割合はどのようになっているのだろうか。「本業が8割で副業が2割といったところです」と佐藤氏。サーバ管理という仕事の性格上、一時的に作業が立て込むことがまれにあるが、現状はあまり時間をかけずに済んでいるという。「時間をかけないで済むような案件を選んでいるという面もあります」

 ただ、少し手が掛かる案件の場合はまた様子が変わる。「以前に金融系の企業の仕事を請けていたことがありますが、システムが休止している深夜帯のメンテナンス作業が発生し、その作業には事前のレビュー、作業の報告書も必要で、予想以上に時間を侵食されました」と佐藤氏は話す。あまりの忙しさに本業に充てる時間を圧迫することもあったという。

 副業に興味のある人だけでなく、将来起業を考えている人にとって、こうした経験から参考にできる点は多い。

「人付き合い」と「自分のスキルを把握すること」が続けるポイント

 個人で副業を続けていくために必要な能力を佐藤氏に聞いてみた。佐藤氏は「1番は人付き合いだと思います」と話す。仕事を続けていくためには常に顧客を獲得するためには、普段から意識的に人付き合いしていくことが必要だ。佐藤氏自身、さまざまな場に出るようにはしてるという。インターネット上のコミュニティに知り合いをつくるなども有効だろう。このような人脈の広がりも本業だけでは得られないものの1つだ。

 そして、副業を続けていくためには「仕事を請け、それをこなすだけのスキル」はもちろん必要だ。個人で副業を持っている場合、守ってくれる会社があるわけではない。自分がどのくらいの範囲の仕事であれば、しっかりと責任を取れるのかという判断もしなければならない。「自分のできることとできないこと、どのくらいの時間を充てられるかということを明確にする必要があります。1番最初に顧客と話すときに『このくらいの時間しか充てられません』ということは必ず伝えるようにしています」

 「副業」というとどうしても副収入を得るためのものというイメージが強い。確かにそれが大きな目的として、副業を始める人も多いだろう。しかし、副業をすることで得られるものはお金だけではない。本業だけではなかなか体験できない多くの経験の存在も重要だ。

 現状では副業を禁止している会社は多く、黙って副業に手を出すことはリスクも伴うが、自分自身の成長や目的のために会社と交渉してみるのも手だ。また、副業が許されている職場であれば、積極的に副業を始めてみるのもよいだろう。


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