第4回 苦手な仕事から逃げず、最後までやり抜く方法
樋口研究室
山本隆之
2009/1/23
過酷な環境にさらされながら、常にコンピュータ並みの正確さを要求されるITエンジニアたち。メンタルヘルスをうまくコントロールするには? 樋口研究室の「ITコーチ」たちが、現場でいますぐ使えるメンタルヘルス改善のワザを教えます。 |
気が進まないけれど、どうしてもやらなければいけない。そういう仕事を頼まれたら、皆さんはどうしますか。
上司にいわれたから、人がいないから、責任者だから。理由はいろいろあるでしょうが、そういう状況ではモチベーションが下がり、メンタルヘルスにも悪い影響が出てくると思います。
今回は、気が進まない仕事をやり抜く秘訣(ひけつ)をお話しします。
■優秀すぎる新人のトレーナーを任されたSE
あるシステムエンジニア(SE)の話です。このSEは入社して7年目、お客さまの基盤システム構築を支援する部門に配属されています。
SEは上司から、新人のトレーナーを依頼されました。その新人は理系の大学院を卒業し、すでにバリバリのプログラマです。SEは、自分はまだ経験不足でスキルが足りないと感じています。そんな自分に優秀な新人を預けられても困る。そう思って、一度は断ったそうです。でも上司は許してくれません。だから渋々引き受けたそうです。
ある日のこと。トレーナーであるSEのところに、新人が怒った顔をしてやってきました。新人はこのようにいいました。
「なぜ私は、研修の評価が低いのですか?」
研修では、新人たちがいくつかのチームに分かれてプログラムを作ったそうです。新人は、自分たちの書いたプログラムはよくできていると主張しました。チームのメンバーにどんどん意見をいったし、そのため完成も全チームの中で一番早かったそうです。
にもかかわらず、この新人の評価は「C(あまり良くない)」でした。新人は、コンピュータの知識のないほかの新人よりも、自分の成績が悪かったことに怒っていたのです。
■「先輩のアドバイスは迷惑です」
SEはトレーナーなので、研修担当者のコメントを見ることができます。読んでみると、「レポートの不提出」「2回の遅刻」「業務と無関係なインターネットの閲覧」「チャットの使用」などと書かれていました。この新人は自分勝手な行動が目立ち、チームでの共同作業にも問題があったようでした。
SE自身も、新人は自分の意見を強引に通そうとすると感じていましたし、周囲の同僚も同じ意見を持っていました。SEはこのことを、研修担当者のコメントも交えて新人に話しました。そこで新人から出た言葉、これが強烈でした。
「プログラムを書いたことがない先輩には、きっとこの研修も理解できないと思います。そんな人のアドバイスは迷惑です」
SEは愕然(がくぜん)としてしまいました。確かに、SEは設計やコーディングの経験が豊富なわけではありません。技術知識も、理系大学院出身の新人に負けているかもしれません。そこを見事に突かれた、そう感じたそうです。SEはいいます。
「やっぱり私には無理だったんだ……。そう思いました」
自信がないことを無理に行って失敗すると、ますます自信がなくなります。私も同じような思いをしたことがあるので、SEの悩みが分かりました。励ます方法をいろいろと考えましたが、なかなか良いアイデアが浮かびませんでした。
新人の態度が変わった理由 |
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