スキル創造研究室 Book Review(5)
IT業界初心者に贈るお薦めの本5冊
千葉大輔(@IT自分戦略研究所)
2007/6/11
新年度を迎えて2カ月、新人の皆さんも徐々に社会人としての生活に慣れてきたのではないだろうか。社会人になるとそれまでとはまったく違う環境に置かれる。会社の中には分からないことが多いし、仕事でも「どうすればいいんだ」と戸惑うことも多い。
新人にとっての苦労にはいろいろなことがあるが、その中の1つに「業務知識が足りないこと」が挙げられるだろう。特に元からPCの扱いやプログラミングに慣れている人と比べ、まったくITのことを知らない人は不安に感じることも多いだろう。
そんな不安を払拭(ふっしょく)すべく、今回は@IT編集部と@IT自分戦略研究所の編集者が、IT業界初心者にもお薦めの本を紹介する。どんな本があるのか見てみよう。
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イラストですっと頭に入るネットワークの基礎知識 |
改訂版 図解でよくわかる ネットワークの重要用語解説 100 きたみりゅうじ著 技術評論社 2006年3月 ISBN:4774127019 1974円(税込み) |
最初に紹介するのはRFIDの編集担当者が「管理者を目指す新人は必読」と薦める、『改訂版 図解でよくわかる ネットワークの重要用語解説 100』(きたみりゅうじ著、技術評論社)だ。
仕事をしていくうえでまず困るのが、会話の中で使われている用語が分からないこと。後で調べようと思い、用語辞典を見る。しかし、そこでは調べようと思った専門用語が、さらに別の専門用語で説明されていて、要領を得ずに分かったような気になってしまうことがある。
文章ではなかなか頭の中に入ってこない、何となくすっきりしない状態のときに、図で概要を確認できると、「なるほど、こういうことか!」と理解できる。
本書では、「クライアントとサーバ」や「TCP/IP」という基礎的な部分から、ハードウェア、ネットワークで使われている各種プロトコル、「RSS」など比較的新しい用語まで、1項目につき見開き2ページにわたって解説文とイラストで、丁寧に解説されている。
かわいいイラストを眺めながら肩ひじを張らずに楽に読めるお薦めの1冊だ。ITエンジニアとして基本となる用語が収められているので、新人のみならず、新人を教える立場の若いITエンジニアにとってもいい教材となるだろう。
基本原則を身に付け柔軟な対応を |
セキュリティはなぜ破られるのか 岡嶋裕史著 講談社 2006年7月 ISBN:4062575248 903円(税込み) |
資産、脅威、脆弱性からなるリスクをどうコントロールするかといったことや、江戸時代の関所の話から「危険なものは入らせない。価値のあるものは出さない」というセキュリティシステムの本質の説明をじっくりと行っている。
本書はセキュリティの基礎知識を中心に書かれているため、人によっては物足りないかもしれない。しかし、著者は次のように述べている。
次々と新しい脅威が明らかになり、多様化したリスクに対応しなければならない現状では、個別事例を多く学ぶ価値がどんどん減ってきています。セキュリティの本質を理解することで、未知の局面、新しい技術に直面してもそれに対応しうるセキュリティ力を身につけることができます |
もちろん技術的な知識を学ぶことは重要だが、「セキュリティを高めるために必要な要素」、「なぜセキュリティが破られるのか」という原則を踏まえたうえで技術を学ぶことが効果的だろう。
さて、ここまではまったくの初心者向けの本を紹介してきた。次から紹介するのは、そこから1歩踏み出すときにお薦めの本だ。特に紹介者が実際に現場の中で役立った本を紹介する。
これを読めば各分野の専門書を読むための準備ができる |
Ciscoビギナーズガイド第2版 トビー・ベルト、アンソニー・ベルト、トム・ソーネシー著、前田奈美、鈴木弥生、シスコシステムズ訳 翔泳社 2002年9月 ISBN:4798102156 5450円(税込み) |
@IT自分戦略研究所の編集者の長谷川玲奈が紹介してくれたのは、『Ciscoビギナーズガイド第2版』だ。前職で「ネットワークをきちんと学びたい」と考え始めたころに出合った本だという。
「ビギナーズガイドの名のとおり、ネットワーク技術の初心者向けの内容を載せています。OSI参照モデルにおける7層スタックの役割、スイッチやルータの働きというところから、VoIPやSANまで幅広くカバー。シスコ製品の例も多いのですが、そういった個所からもネットワークの基本的な考え方が学べるはずです。
この本で基礎を押さえれば、ネットワーク製品の説明書や各分野の専門書を読むための準備ができたことになるでしょう。先輩ネットワークエンジニアともひと通りの話ができると思います」と推薦コメントを寄せてくれた。
コメントにあるように、非常に多岐にわたる用語の解説や、ルータなどハードウェアの仕組みや役割、設定方法を学ぶことができる。辞書代わりとしてデスクに常備しておきたい1冊だ。
10日でJSP/サーブレットを学ぶ |
10日でおぼえるJSP/サーブレット入門教室 第2版 山田祥寛著 翔泳社 2004年12月 ISBN:4798107328 2940円(税込み) |
Java Solutionフォーラム担当編集者がお薦めするのは、『10日でおぼえるJSP/サーブレット入門教室 第2版』だ。
「この本はJSP/サーブレットの基礎を10日で覚えてしまおうという内容です。Tomcatの環境構築やデータベースとの連携など、業務にすぐ役立つ情報が細かく丁寧に解説してあるので、JSP/サーブレットの仕事をする必要がある方には、とても役立つ本といえます」
この本を推薦してくれた、担当編集も実際に本書でJSP/サーブレットの基礎を習得したという。章の始めに狙いと実行画面があるので、ゴールが分かりやすく、初心者でも戸惑うことなく読み進めることができるだろう。まずはJSP/サーブレットを触ってみたいといったときにお薦めだ。
いつか来る過酷なプロジェクトに備える |
デスマーチ 第2版 ソフトウエア開発プロジェクトはなぜ混乱するのか エドワード・ヨードン著、松原友夫、山浦恒央訳 日経BP社 2006年5月 ISBN:4822282716 2310円(税込み) |
最後に筆者がお薦めするのは、『デスマーチ 第2版 ソフトウエア開発プロジェクトはなぜ混乱するのか』だ。デスマーチ、つまり過酷な開発プロジェクトについて、「なぜデスマーチは起こるのか」という定義の部分から始まり、デスマーチとなったプロジェクトではどんなことが起こっているのかといった部分まで解説している。
まだ、会社に入って間もない新人にはぴんとこないかもしれないが、「地獄? 戦場? 火を噴くプロジェクト死闘編」や「出動! 火消しエンジニア 火事場では何が起きているのか」といった記事にあるような、非常に過酷な状況に置かれる開発プロジェクトにいつか遭遇することがるだろう。来るべきその日に備え、いまのうちから自分がデスマーチプロジェクトに置かれたときに、一体何ができるのか、また何をすべきなのかを考える必要があるだろう。
まずは著者がいう「若者のカワイイ楽観主義『土日に出てくればできますよ』」は当てにならないことを、わが身を振り返ってお知らせしておこう。
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