pr

テクノロジ・コンサルティング・キャリアファイル

クラウド最前線――5年後、10年後を見据え、クラウド戦略を実行に移す

クラウドによってITはどう変化していくのか――クラウドビジネスの5年後、10年後を見据えながらコンサルタントは戦略を立案する。「日本発の事例を作り、それを海外に輸出したい」――数年前からクラウドについて研究してきたコンサルタントが語る、「クラウドの最前線」。

  企業ITの在り方を抜本的に変えるクラウドの最前線

accenture
長部亨氏
アクセンチュア
テクノロジー コンサルティング本部
IT戦略・インフラグループ
シニア・マネジャー

 クラウドの導入の本質は、「持たざる」ITの形態にシフトすることです。従来、企業ITは自前で過剰にシステムを保有していました。しかし、クラウドは、必要に応じてIT資源を“サービス”として利用する形態であり、従来のIT部門ならびにIT業界全体の構造を、大きく変化させるものと考えています。

 また、クラウドは、IT部門という限定的な場面での単なるテクノロジー・トレンドではなく、ビジネス構造を抜本的に変革するイノベーションの起爆剤であると、アクセンチュアは捉えています。

 では、クラウドによりどのようなビジネス価値を向上させる新しい可能性が開けるのか、その最前線はどこまで進んでいるのか。私は、アクセンチュアの日本オフィス内の「クラウド・イニシャティブ」という組織に所属しており、社内外のクラウドの情報を一元的に収集・分析し、メッセージを発信する立場にあります。また、IT戦略・インフラグループという組織では、企業のCIOやIT部門の方々と一緒に、「IT戦略」=今後のITのあるべき姿を策定するというミッションのために、クラウドを活用したITによる価値提供機会を、日々議論しています。

 数年前と比べて、クラウドへの取り組みは格段に多くなり、アクセンチュアでも導入事例の蓄積が増えてきています。こうしたクラウドの導入経験を踏まえ、クラウドは、ITをどのように変えていくのでしょうか。コンサルタントの立場から見た「クラウドの最前線」を紹介しましょう。

  ソフトウェアの部品化・再利用をクラウドで実現

 これまで、企業ITはそれぞれの目的ごとにシステムを構築し、業務プロセスが変化すればシステムごとに個別改修を行うなど、“サイロ型”のシステム構成でした。システムごとにIT担当者が割り当てられるため属人化が進み、システム運用というお守りを続けていかなければならないために全体のIT運用コストは肥大化します。このように、これまでのシステムは「変化に対する柔軟性に乏しい」ものでした。

 クラウドは、これまでの情報システムの悪しき慣習を抜本的に変革する好機と捉えられます。もちろん、十把一絡げにすべての情報システムをクラウドに移行するというものではありません。基幹系システムは、自前で保有する方が事業継続性やセキュリティの面から良い場合などがあるからです。しかしながら、「ノンコア」と呼ばれる、メールなどのコミュニケーション基盤や、案件管理などのCRM系システム、中核業務の周縁部にある「勤怠管理」や「承認ワークフロー」といったシステム領域は、クラウドで構築し、既存のシステムと、“疎”な形態で連携させる(≒ソフトウェアの部品化)ことが可能になっていくものだと考えています。

 ソフトウェアの部品化は、長年にわたって成果がなかなか出ない分野でした。SOA(サービス指向アーキテクチャ)の概念はソフトウェア部品化への取り組みの一種といえますが、企業におけるその導入はなかなか進みませんでした。それが、クラウドという新しい潮流に伴い、再びその実現の芽が出てきました。SOAの考え方で、疎結合な情報システムを作り、ソフトウェア部品としてクラウド上に展開し、BPRとセットで、組み換え可能な情報システムとして機能させる――そのような環境が整い始めているのです。

 一方、クラウドは利用側である企業のIT部門だけでなく、製品・サービスを提供するITベンダー側にも大きな影響を与えます。クラウド型のビジネスと志向するなら、既存事業の収益性をいかに担保するのかを熟考しなければなりません。

 アクセンチュアにとって、SI事業はコンサルティング事業と同じぐらい重要な事業の柱です。しかし、従来型のSI案件に比べ、クラウド案件は1つ1つの案件規模が小さいため、少ない人数で効率的な開発を実施していく必要があります。

 このひとつの解として、ソフト開発業務の“工業化”があると考えます。現在、アクセンチュアでは、海外の大手銀行様のアプリケーション開発・維持運用案件において、クラウド上の開発部隊をインドに集約して開発プロセスを標準化すると共に、再利用可能なソフトウェアを部品化する体制を確立しています。通常のシステム開発と同じように、私たちはお客さまが使うシステムを開発しますが、その際に「作ったシステムをクラウド上のソフトウェア部品としていかに再利用し、連携していくか」という考え方を適用しているわけです。現在では、この工業化された考え方を日本国内でも適用し、北海道でも同様の体制を確立しています。

  日本発、世界展開のクラウドを

 クラウドを活用した日本発の先進的なIT事例を作り、それを海外に輸出したい――これが、私のITコンサルタントとしての目標でもあり、野望でもあります。

 例えば、ガス業界の業務システムを取り上げましょう。ガス会社は、日本には200社以上もありますが、それぞれが地理的なエリアで商圏が別れており、直接的には競合状況ではないと言えます。

 ここでまず考えられるのが、「システムの共同利用化」です。業務形態はどの企業もそれほど変わらないので、複数の企業間にてクラウド上でシステムを共同利用化することで、“割り勘”によるITコスト削減効果の最大化も実現できます。また、コールセンターなどのオペレーション業務も共同化すれば、もし引っ越しなどで違うガス会社と契約をすることになったとしても、顧客情報の連携によって継続的なサービスの提供を実現することが可能になるでしょう。

 さらに、日本流のきめ細かな業務プロセスに対応し、クラウド化した情報システムは、高品質・低コストなITとして競争力が高く、将来、新興国などグローバルで勃興することが想定されるスマートシティを支えるIT基盤として、海外展開が可能ではないか―そのようなソフトウェア部品群を整備できれば、「日本発のITがサービスとして多くの新興国のインフラ整備に活用されていく」というような未来像が考えられるようになるでしょう。

 ――こうしたことを考えることは非常にエキサイティングです。日本でITコンサルタントとして働くことの意味は、日本の高度な情報システムの知識を、クラウドの力でグローバル展開していけることにあると思います。

  クラウドが進展するロードマップ

 最近、ますますクラウドの“未来”を話す機会が増えています。

roadmapクラウド活用の進化ステップ(クリックで拡大します)

 クラウドへの取り組みは、段階的に移行するでしょう。ステップ1は「試行」で、すでに多くの企業においてクラウド導入中の取り組みであると認識しています。ステップ2は「機能の切り出し」で、“ソフトウェア部品化”の第一歩です。企業の基幹システムなどとクラウドが、情報連携基盤を介して連携し、シームレスな情報のやりとりを可能とする構造が、おそらく2〜3年後には企業ITの主流になると想定しています。

 ステップ3は「業界共通」の業界クラウドです。業種・業界で共通化できる機能群を整備してクラウドに載せます。これは前述のガス業界などのケースをイメージしたものですが、すでに欧州の航空業界では、航空会社間の飛行機チケットの予約・発券などを一元的に管理する情報システムをアクセンチュアが提供しています。今後5年ほどで、製造業やサービス業などの他業界においても、こうした取り組みが本格化するのではないでしょうか。

 ステップ4は「社会基盤」クラウドです。ステップ3で共通化されたクラウドが、業界横断のバリューチェーンとしてクラウド上に形成されます。今後、想定されるスマートエネルギーネットワーク社会の到来を見据えれば、スマートシティ/スマートタウンを支えるICT基盤は2020年くらいを目途に本格化する可能性があります。

 こうした中長期的な移行のロードマップを描きつつ、新たなサービス事業の軸となるクラウド活用のパターンを構築することが、今の目標です。

 アクセンチュアは、ハードウェア製品やデータセンター施設を持っているわけではありませんが、コンサルティングの経験やソフトウェアのアセット(資産)、運用のノウハウを持っています。また、グローバルデリバリーネットワークという形で、世界中に開発者がいることも強みです。クラウドによる改革を実現させるための環境は、すでに用意されています。

  多様な人材の衝突から、イノベーションが生まれる

 イノベーションは、「異分子同士のぶつかり合い」から、さらなる熱量を発生し、新しい価値を創出するものだと考えられます。単一の文化しか持たない組織からはイノベーションは生まれないでしょう。アクセンチュアは、得意分野や考え方、国籍など、多様な人材の集団です。そこに、お客さま、そしてクラウド・プレイヤーの多様な人材との出会いがあれば、必ず新たなイノベーションを起こせるはずです。

 私は、「技術変化をトリガーとした新しいビジネス変革をプロデュースできる最前線の職場にいる」と自負しています。

 ※アクセンチュア「クラウド・コンピューティング・サービス」について
 ※アクセンチュア「IT戦略・トランスフォーメーション」について


アクセンチュアはコンサルタントの経験者採用を行っています。

提供:アクセンチュア株式会社
企画:アイティメディア営業企画
制作:@IT自分戦略研究所 編集部
掲載内容有効期限:2011年11月30日

アクセンチュア
経験者採用募集概要

アクセンチュアでは、経験者を対象に、テクノロジー・コンサルタント、アウトソーシング・コンサルタント、ソフトウェア・エンジニアの経験者採用を行っています。