エンジニアが語るリレーエッセイ
エンジニアに資格は必要か?
第14回 資格と実力主義風社会

R.K氏
2002/11/20

毎回さまざまな分野のエンジニアに、「エンジニアに資格は必要か?」をテーマに、自身の実体験などを織り交ぜて語っていただく。エンジニアの“生”の声を紹介する月刊リレーエッセイ。今回は、エンジニアになって日の浅い文系出身のエンジニアが、学歴と資格とを比較する。そしてその結論と自分の経験から、資格をどう思うのかを紹介する。

IT業界で気になること

 IT業界で働いていて嫌でも意識することは、ほかの人が情報処理関連の資格を持っているのか? 持っているとしたら何の資格を持っているのか? ということです。これは、会社の上司や先輩、後輩、またお客さまや協力会社の人などに対して常に感じているのです。

 この感覚は、ある人がどこの大学の出身なのかが気になる感覚と似ているようです。学歴だけで食っていける時代は終わったといわれ、実際そうだと思いますが、素直に「どこの大学出身ですか?」と聞きづらいのは、学歴は気になるけれども、なぜか聞いてはいけないことのように思えるためではないでしょうか?

 学歴と同じように聞きづらい質問が、「何の資格を持っていますか?」というものです(私だけでしょうか?)。資格を持っていない人が相手に聞く場合は、自分が持っていないのに、この人が持っていたら……、と思うと聞きづらく、持っている人が相手に聞く場合は、自分は持っているのに相手が持っていなかったらとか、自分より上級資格を持っていたらとか、相手の方が下の資格だと“イヤミ”なヤツだと思われるだろうなどと考えてしまうからでしょうか?

学歴と資格で食える時代は終わった?

 学歴と同じように考えるのであれば、資格を持っているからといって食える時代は終わったと、考えることができます。つまり、資格を持っているから仕事ができるわけでも、がっぽりとお金を稼げるわけでもないはずです。ところが、そうでもないと思うことがあります。

 多くのIT系の企業などでは、資格の取得に対して報奨金や何らかの手当てが支給されることが多いですし、昇格や昇給にも影響があるのは事実でしょう。さらに、就職でも多少は有利に働くことが多いのは確かだと思います。それだけ、資格を企業が評価しているのだと思います。

 学歴が幅を利かす時代は終わったのに、どうして資格を持っていることが評価されるのでしょうか? 資格を持っていると仕事ができるのでしょうか? 極端な話、資格を持っていると偉く、より高度な資格を持っているともっと偉いのかと、ちょっとひねくれたことを考えてしまいます。西洋風の実力主義社会になってきてはいますが、年功序列型の社会でもそうであるように、その体質・本質はあまり変わっていないのだと思ってしまいます。日本人は、看板やブランドに弱いのだと実感します。例えば「あの人は東大出身だよ」と聞くと、ちょっと引いてしまうことがあるような場合です。

 そのため、高学歴の人は仕事ができる人のように思えるし、頭がいい人だと思えます。しかし、その人が本当にできる人かどうかは分かりません。では、仕事ができる人材かを証明することはできるのでしょうか?

仕事ができる証明は可能か

 資格などがなくても仕事ができると思っている人がいて、それを第三者に証明する方法はあるでしょうか? これまでの業績を証明する方法があるなら別ですが、客観的な尺度はないように思います。そのため、学歴や資格で人を判断する方が簡単で分かりやすいので、評価や差別化の尺度になっているのだと思います。

 そもそも何のために資格を取るのか? 取りたいのか? 人それぞれで目的は異なると思います。具体的な話をすると、基本情報処理技術者の午後の試験問題は、C言語、COBOL、Java、CASLIIから選択できるようになっています。この試験を受けるときに、仕事で使う言語で勝負するか、受かりやすい簡単なものを選択するかによって、資格取得に対する目的意識が分かるように思います。

 取ってしまえばこっちのものと考える人、資格を取って手当てだけもらえればいいと思う人は多いはずです。しかし、資格を通して少しでも自分の能力(スキル)を上げたいと純粋に考える人であれば、このような考え方はしないはずです。

 結局、スキルではなくステータスを上げたいと考えている人が多いのではないでしょうか?じゃあ、資格を持っていても無意味かというと、そうではない点はあると思います。

そして自分の経験からいえること

 自分の経験では、大学受験以来、机にかじりついて勉強するような機会はなかったのですが、資格の勉強をするに当たり、仕事の合間の時間を割いて努力するようになりました。その結果、集中力がつくようになり、だらだらとした生活をせずに時間を有効に使うようになりました。忙しくて、自分の好きなこともできなくなるけれども、毎日が充実している感じがするので、よいことだと思っています。だから、資格はそれを取る過程に得るものがあるのだと思います。

 人間は、一生勉強していれば、それは充実したものになるでしょう。しかし、仕事で疲れて、ぼーっとしていたい気持ちも分かるし、朝もゆっくり寝ていたいし、楽してもうけたいし、宝くじ当たったらどうしようとか考えてるし、人間は楽して生きたい生き物だから仕方がないことかもしれませんが、自分に厳しくすることはよい精神修行になるし、強くなれます。それに、強くなった実感も得られるのです。

 それが自信につながれば、資格を取ることはいいことだと思います。資格取得に関しては、そこに至るまでの過程を評価する尺度として考えられるようになれば、学歴も資格も触れたくないもの、触れられたくないものではなく、気持ちよく受け入れられるものになるのではないかと思います。

筆者紹介
R.Kさん中堅ソフトウェア会社に入社して2年目のエンジニア(24歳)。現在は、ERPパッケージソフトのモジュールを開発中という。もともと理系ではなく大学の文系卒のため、プログラムは入社後に初めて経験したという。入社1年後に基本情報処理技術者を取得し、現在ネットワーク、オラクルの資格取得に向けて勉強中。趣味は、サーフィン、スノーボードなどアウトドアスポーツだという。

「リレーエッセイ エンジニアに資格は必要か?」



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