エンジニアが語るリレーエッセイ
エンジニアに資格は必要か?
第7回 資格が重要なのは技能を伴うこと

山太氏
2002/4/3

毎回さまざまな分野のエンジニアに、「エンジニアに資格は必要か?」をテーマに、自身の実体験などを織り交ぜて語っていただく。エンジニアの“生”の声を紹介する月刊リレーエッセイ。今回は、ゲーム会社でプログラマとして働く筆者が、自分の現状と将来を見据えて、資格について考えたことを紹介する。

実務をこなす中では資格を意識しない

 私はいま、ゲームソフト制作会社でプログラマとして働いています。一口にプログラマといってもさまざまな仕事があり、会社全体のネットワーク管理、デザイナーが使用する3D CGツールのプラグイン作成、デザイナーが作成したデータを実際のゲーム中に出せるようにデータの変換を行うコンバータの作成、ゲームアルゴリズムの作成など、意外と広範囲にわたります。私は主にコンバータやゲームアルゴリズムの作成を担当しています。

 そんな私には、正直なところ実務をこなす中で「資格」を意識することはほとんどありません。会社にも資格制度のようなものはなく、強制されることもありません。

 私が資格の有無を一番意識したのは、大学生のころだったと思います。学部が情報科であったこともあり、大学から試験を受けるようにいわれ、第2種情報処理技術者試験(現在の基本情報処理技術者試験)とCG検定2級を取りました。とはいえ、当時も資格が仕事に役立つという考えはなく、入社試験などで多少は有利になるのではないかという程度の考えでした。このようなスタンスで取り組んでいたためか、資格を取る過程で学んだはずのことは、現在ではほとんど覚えていません。まったくお恥ずかしい限りです。

重要なことは資格の取り方

 このように書くと、私が資格を否定しているように思われてしまうかもしれませんが、決してそうではありません。それよりも、学生のころの私のように、資格の内容に目的を感じることなく、その場限りで頭に詰め込んで資格を取るという行為自体が問題だと思うのです。

 詰め込んだものが残っていればまだいい方だと思うのですが、目的意識がなく、取りあえずで覚えたものは忘れるのも早いと思います。IT関連の資格で必要なのは、当たり前かもしれませんが、実務との連動だと思います。紙上でいくら知識を詰め込んだとしてもそれを道具として使えなければ意味はありません。ところがIT関連の資格を見ても、その資格を持っている人が実際職場においてどういった仕事ができるのかが、よく分からないものがあります。そのために資格に対してあまり信頼感が持てない現状があるのではないでしょうか。

資格の理想と現在の自分の現実

 資格とは、理想的には知識と技術が結び付いて初めて意味を持つものだと私は思います。これが、私の資格に対する考えです。それで実際仕事をするうえで資格を取る必要があるかどうかという話ですが、私の場合、冒頭でも述べましたが普段仕事をしていてこの資格を持っていればよかったなどと思う機会はほとんどありません(それはゲーム業界だからでしょうか?)。その理由としては、社内に資格制度はなく、外部の会社とのやりとりもなく、社内という閉じた環境にいるので、資格の有無を評価される機会もないからでしょう。自分の評価は、実際どういう仕事をしてきたのかでしか判断されません。

 ですから現在の私には、資格を取る勉強をすることよりも社内のいろいろな人とコネクションを作り、さまざまな情報を集められるようにすることが重要になっています。集めた情報を自分なりに整理した情報こそが、資格にも勝るものになっています。

 こうしたことは、どういった職場で働いているかによって、大きく異なっているところなので一概にはいえないのでしょう。ただ、少なくとも私の職場ではこれまで、この人は以前のプロジェクトでこの部分のプログラムを担当していたので、またお願いしよう、といった話はあっても、この人はこの資格を取得しているからこの仕事をしてもらおうといった話は聞いたことがありません。

それでも考える資格の取得

 そうした状況で働いている私ですが、最近、書店で何気なくIT関連の資格本が置いてあるコーナーに行くことがあります。ゲーム業界も移り変わりが激しく、私の同期は入社当初十数人いたのですが、いまでは片手で数えられるほどの人数しかいません。私自身も漠然といまの仕事をいつまで続けられるのか、最近よく考えます。別の会社に移る際、同じゲーム業界であればこれまでのノウハウがある程度通用するとは思うのですが、ゲーム以外のプログラマとなるのであれば話は別です。他業界の事情をほとんど知らないので、どういった技能が求められているのか、少しでも感じ取れればと思い、つい書店に足を向けているわけです。

 資格自体は、私にとってある程度の目安でしかないので、求められる技術の方に目を向け、その取得に力を入れ、その結果として資格が付随してくれば一番望ましい形なのかなと思っています。最後になりますが、ステータスアップするためだけの資格ではなく、技能を伴った資格がもっと増えることを願っています。

筆者紹介
山太ゲームソフト開発会社でプログラムを担当。これまで主に家庭用のゲームに携わってきたが、自分が本当に仕事をやりきったと感じられるものにはまだ出合っていないという。 

「リレーエッセイ エンジニアに資格は必要か?」



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