第2回 会議は問題解決のための知的格闘技
アクセンチュア 齋藤博史
2008/11/17
■8:00―― 出社、メールチェック
今日は、プロジェクトの中間報告会の日です。昨晩はかなり遅くまで報告資料の作成を行っていたので、オフィス近くのビジネスホテルで軽く睡眠を取りました。
職場までは歩いてわずか1分。「んー、通勤時間が短いというのはなんて快適なんだ♪」。職住近接には良しあしがありますが、寝不足気味の今日のような日には、通勤時間をショートカットできるライフスタイルに強く引かれます。
メンバーのうち何人かは朝まで残って、ぎりぎりまで資料のブラッシュアップをしていたようです。Outlookを開いてみると、やけに重たいファイルが添付されたメールが何通も届いていました。みんな遅くまでお疲れさまです! ほかの会議の連絡や同期からの問い合わせのメールに答えてから、報告資料の昨日の時点からの変更個所を重点的に確認することにしました。
■9:00―― 報告会資料の最終レビュー、修正指示
あらためて資料を見てみると、最初の面影がほとんどなくなっていることに気付きました。中でも大きく変わったのが、「秘孔」とでもいうべきか、取り組むべき方向とその中心点がはっきりしてきたことです。
今回のプロジェクトの命題は、システム運用の標準化です。当初、検討の過程で出てきたいくつかの課題事項はバラバラに羅列されており、解決策も個別の取り組みに終始していた感がありました。しかし、クライアントからのさまざまな意見や指摘をもう一度振り返り、時間をかけて煮詰めていったことで、「そもそも、何のために運用を標準化するのか?」という、明確な目的意識が湧出(ゆうしゅつ)してきました。
このことにより、施策が真に必要なものに絞り込まれ、実施効果が見えてきたのです。蓮の葉に落ちた滴のごときかすかな感動を覚えました。
「自己満足に陥っている場合ではない……」。ふとわれに返りました。クライアントとの報告会は13時からです。われわれの主張が確固とした根拠に基づくものとなるよう、細かな部分も含め、メッセージの修正をメンバーに託します。
■10:00―― 新規提案資料の準備
実は、今日は報告会のほかにも、まだ別のイベントがあります。
相手があることなので、いつもできるわけではないのですが、可能な限り会議は同じ日に重なるように調整しています。移動の時間をセーブでき、ターゲットを集中できるので、その方が自分の仕事をコントロールしやすいのです。その代わり、「会議の前の日は決まって帰宅が遅くなる」という副作用を覚悟する必要があるのですが……。
今日はあるクライアントに、新規案件に関する提案の時間をもらっています。上司であるパートナーに、準備した資料のレビューを依頼し、具体的な進め方について討議します。
今日のところは、われわれの提案に対していろいろと意見をもらい、できればいくつか宿題を出してもらえれば、まずは成功かなと考えています。
■12:00―― 昼食
クライアントとの会議前に、腹ごしらえをして勢いをつけなければなりません。会議前のこの時間帯は、いつもながら落ち着かない感じがします。弁当をほお張りながら、会議の進め方をシミュレートしてみます。
私がまだ入社2年目のアナリストだったころ、当時チームリーダーであった先輩が、会議前には決まってトイレに行っていたのを思い出しました。
このときは、パッケージシステム導入の是非をめぐり、クライアントの業務側担当者とそれは厳しい折衝が日々繰り広げられていました。先輩は、自分よりも年齢も経験もはるかに上のクライアントを向こうに回し、1人奮闘していました。その裏で、会議直前になると強烈な吐き気に襲われ、トイレに駆け込んでいたのです。私はそのことを、だいぶ後になって知りました。
プロジェクトを預かる身になってみて、そういう感覚を実感できるようになりました。そして、あの先輩の懸命な姿を思い起こすたびに、弱気な心を排し、自らを奮い立たせるのです。
■13:00―― 会議(プロジェクト中間報告会)
いよいよ、このプロジェクトにおけるこれまでの艱難(かんなん)辛苦が実を結ぶときです。クライアントの情報システム部長以下、担当者が一堂に会しての中間報告会が始まりました。
入社したてのころは、ITに関する知識も経験も不足しているうえ、クライアントを前にした緊張で、資料に書いてあることを棒読みするだけで精いっぱいでした。コンサルタントに昇格してからは、ある程度の自信が付き、自分の考え、思いを披露することができるようになりました。しかし当時の上司からは、「独り善がりの主張の押し付けで、クライアントがどう感じ、何を望んでいるかをおもんぱかっていない」と指摘されたことが幾度もありました。
今日は、メインスピーカーをチームメンバーの1人に担当してもらいました。検討の経緯から始まり、現行システム運用における主要課題の整理結果、運用業務の標準化に向けた取り組みの必要性およびその効果についてのひと通りの説明が続きます。私は補足的な説明をしながら、出席者の目を見てその考えを読み取ろうと必死でした。
幸い、焦点を外してはいないようです。しかしクライアントからは、核心をつく質問が飛んできました。「どうやってこの案を実現するのだ?」
……次回に向けた重要な宿題として、この質問を記録しておかなければなりません。
会議終了。さあ、次の会議の準備 |
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