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ITエンジニアのための社会人大学院巡り

第1回 社会人大学院で「ビジネスと技術の橋渡し」を学ぶ

岑康貴
2009/5/22

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プロジェクトチームで生まれるもの

 同大学院の特徴の1つとして「PBL型教育」が挙げられる。「PBL」とは「Project Based Learning」、すなわち「問題解決型学習」のことを指す。5人前後の学生がプロジェクトチームを組み、実際にプロジェクトを遂行し、目的を達成する。

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 「プロジェクトチームで課題解決に取り組むわけですから、お互いの信頼関係の構築が必要です。相手を信頼し、自分を信頼してもらう。我を通すだけでは駄目です」

 過去に扱ったプロジェクトテーマは、

  • インターネットサービスにおけるコミュニケーションインフラの企画

  • PMOの立ち上げとプロジェクトマネジメントスキル育成プログラムの実施

  • 東京都港湾局の業務改革提案

  • ラショナル統一プロセス(RUP)に基づいたWebアプリケーションの開発

  • 東京都建設局と楽天株式会社における業務改革提案

  • Webマイニングによるクロスメディア広告効果の検証

など、現実のビジネスに即したものが多い。

 「企業での実際のプロジェクトは、上からいわれたことをやる、ということが多い。上下がありますよね。でも、PBLは全員が対等な立場で問題解決に当たります」

 自然と役割分担が行われる。同大学院に集まる学生は前述のとおり目的や立場が多様であり、技術は得意だがマネジメントが苦手な人も、その逆もいる。自分に足りないものを求めてきているはずなのに、いざプロジェクトとなると自分の得意分野に集中しようとしてしまうのだという。

 「プロジェクトの進め方1つとっても、大手企業の方は理論をきちんと学んで資格を取得されていることが多いので、理論的に進める傾向にあります。その分、やや頭でっかちなケースが見受けられます。逆に、中小企業の方は『理論なんて役に立たない』といわんばかりに、現場経験に基づいて進めます。そこで衝突が起きるわけです」

  中村さんも教育の立場に立っているため、どちらかというと理論を重視するタイプだ。だが、かつては現場経験もあるため、どちらの意見もよく分かるのだという。「それでも『死ぬ気で頑張る』は良くないと思いますが……プロジェクトの成功パターンを活用した方がいいとは思います」と苦笑い。

「夢工房」と名付けられたワークスペース。
ここでプロジェクトチームが日夜、議論を重ねる。

テクノロジーとマネジメントをバランス良く学ぶ

 働きながら通うことになる社会人大学院。中村さんは「大変だった。死ぬかと思いました」と本音を語る。

 「とはいえ、研修業界は忙しさに波があるので、時間の空く時期に集中することができました。エンジニアの同期たちも、プロジェクトの状況に応じてコントロールしていましたね」

 中村さんはアドバイスとして「自分の年間スケジュールを把握したうえでカリキュラムを選択してほしい」と語る。もっとも、それができる学生を見たことはないそうだが。

 数ある社会人大学院の中で、産業技術大学院大学を選択するポイントはどこにあるのだろうか。

 「IT系の大学院はいろいろありますが、同大学院はテクノロジーとマネジメント、両方をバランス良く学べるところがポイント。MOT(技術経営)系の大学院だと、マネジメントというよりも経営に近くなってしまいますよね。経営に近いものを学びたい人には物足りないかもしれませんが、現場のプロジェクトで悩んでいるエンジニアにとっては最適だと思います」

 現場の技術とマネジメントをバランス良く学びたいエンジニアにとっては、選択肢の1つとなり得るようだ。

 「あとは、学費が安いこと。コストパフォーマンスは抜群です」

標準化を通じて現場を変える

 最後に、中村さんに「エンジニアが大学院で学ぶ意義」を聞いた。彼女は「自分の仕事を標準化できることだ」と回答する。

 「管理標準や開発標準。標準化というのは難しくて、現場ではなかなか活用されないことが多く、大手企業でも模索中です。でも、標準化できると、仕事が楽になるはずなんです。無駄はなくなるし、開発期間が短くなる。どうしてもエンジニアは我流に頼りがちですが、意義はあると思います」

 理論を学び、標準化を行うことで、自分でその意義が納得できるようになる、と中村さんは語る。自分で納得できたら、それを会社や現場に提案する。会社や現場を変えることができるようになる――それがエンジニアが大学院で学ぶ意義であるという。

 エンジニアが大学院で学ぶということ。そこには「技術を身に付けたいから」「キャリアアップに有利だから」などの素朴な動機以上の何かが存在するようである。本連載では次回以降もさまざまな大学院を訪ね歩き、その「何か」を模索していきたいと思う。

 

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