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転職。決断のとき

第42回 スキルアップとキャリアアップを両立したい

加山恵美
2007/7/9

スキルアップとキャリアアップが両立できない

 いくつかのプロジェクトリーダーを続けていくうちに、その先の姿が見えてきた。次に昇格するとしたら「主任」である。主任となると4〜5人のプロジェクトを5〜6つ、掛け持ちして進ちょくを管理する。当時藤田氏の部署にはITエンジニアは80名いた。この80名に3人の主任が采配(さいはい)を振る。プロジェクトリーダーを4〜5年務めれば主任になるのは自然な流れだった。

 2007年になると「主任となるのも、もうすぐ」と藤田氏は察するようになってきた。直属の上司も藤田氏を主任にしたがっているように見えた。プロジェクトリーダーは給料を上げるための妥協だったが、主任は気が引けた。なぜなら主任となると駒を動かすことに専念することとなり、もう開発には携われなくなる。

 「主任はこの会社には必要な役職だ。自分にはそれができる」という自負はあったが、主任となり管理に専念すればITエンジニア人生は終わりとなる。しかし藤田氏はまだ開発を続けたかった。新しい技術に触れてスキルアップを続けたかった。これまで得たスキルを陳腐化させてしまうのも惜しかった。「果たして自分は主任になることを望んでいるだろうか」と自問自答した。

 スキルアップとキャリアアップが二者択一の状態となってしまった。片方を取れば片方を捨てることになる。

 「この会社ではスキルアップとキャリアアップを両立させる道はない」と悟った。藤田氏にとって片方のみを選ぶのはできなかった。それにもう少しで35歳。転職するなら35歳を越える前に決めた方が有利だと考えた。

@ITジョブエージェントで自分が希望した企業に再就職が決まる

 しかし藤田氏は就職活動が面倒で苦手である。「だめだったらこの会社に残ろう」とあまり高望みはせず、@ITジョブエージェントに登録することにした。登録してすぐに6〜7人から「お会いしませんか?」と人材紹介会社から返事が来た。これまでとは格段に違う効率の良さに「これって、楽じゃん」と感激した。

 仕事が忙しかったこともあり、メールの文章から1人を選んでエージェントと相談することにした。それがキャリアコンサルタントの宮脇氏だった。同氏もITエンジニアを経験しており、自分の境遇を理解してもらえるのではと思ったからだ。会ってみると、その通りだった。

 藤田氏はこれまでのITエンジニア経験で他社の内情や評判にも詳しくなった。そのため登録したプロフィールには希望する会社をいくつか指名していた。これらは当てずっぽうでも高望みでもなく、自分の適性も考えた上でのことだ。

 結果的にこの選定はほぼ間違っていなかった。宮脇氏は藤田氏が指名した会社を含め8社ほど紹介したが、最終的に藤田氏が最初に指名した2社に絞られた。これまで何度も転職を重ねた藤田氏だが、複数の会社に対して同時に就職活動をするのはこれが初めての機会である。どちらも年齢を重ねてもITエンジニアとしてのキャリアパスがある会社だった。最終的には希望する企業から採用の返事をもらうことができた。

新天地で新しいキャリアをスタート

 再就職先が決まり、上司に退職を打ち明けた。すると藤田氏を主任にする心づもりでいた上司はひどく驚き「これから君を主任にしようと思っていたのに。ぼくの計画が……」と嘆いた。

 この上司はつい最近藤田氏の上司になったばかり。とても親身になってくれるいい上司だった。それまでの上司は「スキルアップとキャリアアップを両立させたい」と相談しても相手にしてくれなかった。それで藤田氏は転職を決断してしまったようなものだった。

 「せめてこの人が1年早くぼくの上司になっていたら転職しなかったかもしれません」と藤田氏はぼそっとつぶやいた。しかし少し考え直して「でもあの会社ではスキルとキャリアは片方しか選べなかったから、決断する時期がずれていただけかもしれません」と言った。違う過去を仮定したところで現在は変わらないが、現実にはスキルを捨てずにすむ道を選べたことは確かだ。

 そうして藤田氏は10年間勤めた会社を去り、2007年4月から新しい会社に入社した。最初は簡単なトレーニング、そしてアサイン待ちを経て5月の連休明けから単身赴任で大きなプロジェクトに参画している。まだ着任したばかりではあるが、「意思決定が早いです。そしてみんなタフ」と驚いている。

 周囲を見渡すとスキルアップを続けながらキャリアを築いている人を何人か見出せる。藤田氏がスキルアップへの旺盛(おうせい)さを失わない限り、スキルアップとキャリアアップを両立させることはできるだろう。少なくとも本人は「きっとできる」と実感している。

担当コンサルタントからのひと言

 藤田さんにはじめてお会いしたとき、前向きで勢いがあり、勉強熱心な方という印象を抱きました。

 最初の打ち合わせでは、「このまま主任となってライン管理を行うべきか」あるいは転職にチャレンジして「もっと現場でITエンジニアとして経験を積むべきか」という点にフォーカスを当て、いろいろとディスカッションしました。

 主任という道を選んだとしても安定した生活は保障されているものの、やはり内面の欲求としては、「もっとエンジニアとして勉強したい」という気持ちが表に出ていましたので、私としては転職という選択肢にチャレンジしてくださいとお勧めしました。

 ただ、絶対にいまの会社を辞めなければならないという必然性が無い以上、リスクも考慮して、キャリアアップにつながるトップ企業数社を候補として紹介し、もしそれらがすべてご縁がなければ、いまの会社に留まることも視野にいれてくださいというスタンスで転職活動にのぞんでいただきました。

 結果として、最初に藤田さんが指名した企業に無事に内定を得て、ご入社となりましたが、これも藤田さんの熱意が企業に十分伝わった結果だと思います。

 今後もいろいろな経験を積み、勉強の日々が続きますが、嫌なことも、リスクがあることも、前向きにとらえてしまう藤田さんの性格で、乗り切っていただければと思います。

キャリアコンサルタント 宮脇啓二氏


 

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