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転職。決断のとき

第50回 遠回りして気付いた、「ITエンジニアこそが天職だ」

加山恵美
2009/4/8

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人材紹介会社を訪問し、意外な出会いが

 このころから橋本氏は、Webサイトからも知識やノウハウを得るようにしていた。Javaの記事を@ITで読んでいたところ、@ITジョブエージェントが目に入った、登録して転職サービスを使ってみることにした。

 SJC-P取得が功を奏したのか、6〜7社の人材紹介会社からメールが届いた。うち半分には実際に会社へ足を運んだ。

 橋本氏は、人材紹介会社が提示する仕事内容を注意深く聞いた。自分が希望する仕事に近いかどうかを判断するためだ。橋本氏が希望していたのは、顧客から要望を聞き出し、それに基づいて開発を行うことだった。

 最初に訪問した人材紹介会社はアビリティスタッフ。橋本氏は同社の第一印象を「アットホームな雰囲気がありました。担当の古屋さんは元ITエンジニアということもあり、信頼できました」と話す。

 思わぬ偶然もあった。運命の出会いというべきかもしれない。橋本氏が訪問した同じ日、アビリティスタッフに入社した社員がいた。その人はアビリティスタッフの近くにあるシステム会社から転職してきたという。

 引き合わせてもらったところ、その人は橋本氏に前職であるシステム会社への転職を推奨してきた。しかも至極熱心に。当初橋本氏はその勢いに疑問を感じた。なにせ、他人に自分が退職した会社を勧めているのだ。懐疑的になっても無理はない。

 しかしいろいろと話を聞いてみると、その会社が自分の希望に合っていて、相性も良さそうだということが分かってきた。何しろ直前まで社員だった人の生の声なので、信ぴょう性は高い。橋本氏は、その会社への転職をまじめに考えるようになった。

キャリアパスが想像できた会社を第一志望に

 結局、橋本氏はこの会社を第一志望に据えた。決め手は「将来のキャリアパスが具体的に想像できたから」ということだ。

 第一志望は決まったものの、並行してほかの会社にも当たってみることにした。人材紹介会社3社から提示された会社を吟味し、20社ほどに応募した。そのうちのいくつかの面接を受け、内定を得た。第一志望の会社からも、めでたく内定が出た。

 そのときは「勝ち取った」という気分だった。「これでITエンジニアの仕事ができる」と喜びでいっぱいだった。

 内定をもらうまで、不安で仕方がなかった。年齢の問題と未経験であることに加え、面接での受け答えに心残りがあったからだ。しかし、企業は橋本氏に良い評価を与えてくれたのだ。

果敢に「厳しい職場」を希望したものの

 2007年4月、橋本氏は第一志望の会社に、新卒と一緒に入社した。中途入社扱いではあるが、スキルからすれば新卒に限りなく近い。そのため、新卒と一緒に2カ月間の新人研修を受けることができたという。「中途だと孤立してしまうかもしれない」という会社の配慮もあった。

 これで自信がついたのか、配属先には「厳しい職場」を希望した。「鍛えてもらおうと思ったからです」と橋本氏。

 配属された先は、想像以上に厳しい職場だった。前職では大学に常駐していたこともあり、勤務時間は9時から5時までだったが、今度の配属先はひと月の残業時間が140時間を超えるほどだった。橋本氏の頭を「後悔」がよぎったこともあったほどだ。

 残業が多かった理由の1つには、実践的なスキル不足が挙げられる。例えば「すぐに仕様書を書いてください」といわれても、どう書けばいいのか分からない。最初なのでいろいろと手間取った。

 かなり苦戦したが、それも4カ月ほどで終わった。プロジェクトが終了し、9月になってから夏休みを取って帰省した。それまでがよほど過酷だったのか、顔が相当やつれていたらしい。家族や友人から心配された。

仕事も将来像も目的意識をはっきりと

 「いま思うと、最初の職場はいい経験でした」と橋本氏はいう。「あれだけ勉強したつもりでも、やはり現場は違うということが身にしみて分かりました」

 ITエンジニアの仕事において、コミュニケーションがいかに大事かということも理解できた。顧客の要件は正しく聞き取ること、思い込みで仕事を進めてはいけないこと。プログラミングの際には、他人が後から保守を行うことを考え、分かりやすいコードにすることも学んだ。

 数年経験すれば自然と身に付くことではあるが、橋本氏は厳しい職場を望んだおかげで、最初の数カ月でそれを会得できた。

 その後は短期間の社内開発を経て別の開発現場へと配属され、現在に至る。まだ開発や保守が中心ではあるが、目指す将来像が心にある。ITアーキテクトだ。

 「いつかは基本設計などの上流工程を経験し、システムの根幹を担うようになりたいと考えています。現在は知識をため、ロジカルに考えるスキルを磨いています。設計書を書くときには、誰のためか、何のためかを明確にしようと考えています」と橋本氏は話す。

 遠回りはしたものの、橋本氏はもともとITエンジニアに向いていたのだろう。目的意識をはっきり持ち、目標に向かって真正面から努力することを惜しまない、これが成功の理由だろう。4年間のギャップなど、すぐに埋まってしまうかもしれない。

担当コンサルタントからのひと言

■「タイミングをつかんで成功した橋本氏」

 転職が成功するか否かは、タイミングに大きく左右されることがあります。今回の橋本氏の事例は、まさにそのタイミングが合った例といえるでしょう。

 面談にいらっしゃったタイミングで当社に新しい社員が入社し、その社員からいままで自分が働いていた企業を紹介されるなど、本来あまりないケースだと思います。ですが、ある人が相談にいらっしゃったその日に、その人にぴったりの求人案件が当社に届いたというケースはよくあります。

 「タイミングは自分ではコントロールできない」と思うかもしれません。しかし、早め早めに動くことで、チャンスを広げることができるのです。

 橋本氏の場合も、仮に1カ月、いや1週間、転職活動を始めるのが遅ければ、タイミングを逸していたかもしれません。

 「思い立ったが吉日」といいますが、転職を考え始めたらまずはエージェントに相談してみるのが、タイミングを逸さないという意味で良いことだと思います。


 

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