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転職。決断のとき

第51回 現職に不満はない。でも英語を使って仕事をしたかった

加山恵美
2009/10/21

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メールの返信が早いエージェントもいたが

 気持ちのうえでは踏ん切りがついた。転職を宣言することで、もう後には戻れなくなった。ここから転職に向けて真正面から取り組んだ。

 長年一緒に仕事を続けてきた仲間に転職を打ち明けるのはつらかった。だが上司に告げた少し後には正直に話した。大規模なプロジェクトだったため、不意を突くように退職して周囲に迷惑を掛けたくなかったからだ。早めに伝えておけば、十分な引き継ぎ期間を持つことができる。

 さて転職活動である。まずは転職セミナーの主催者となるサイト、それから@ITではジョブエージェントとプレミアスカウトに登録した。松本氏は「@ITのジョブエージェントでは登録して1時間もしないうちに最初の返事が届きました。あまりの早さに驚きました」と話す。

 これだけ早いと自動返信のように思えるが、そうではない。エージェントが松本氏のエントリを見て、個別に返信を出したのだ。まずは速攻で返信をくれたエージェントに会ってみた。

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 だが拍子抜けした。転職先として提案してくる会社はどうやら機械的に抽出したかのようだった。熟考した感じには見えなかった。「それにどこか疲れた雰囲気だった」と松本氏は話す。

 次に転職セミナーの担当者と面接した。こちらもどこか違和感があった。「コミュニケーションの行き違いや、やはり機械的な応対に、自分の人生の大きな転換期をまかせる信頼関係を築くのは難しいなと感じました」と松本氏はいう。人間的な相性もあるだろうか。

エージェントとプレミアスカウト、同時並行に

 3人目に面接したのがロード・インターナショナルの麻生愛美氏だった。麻生氏から松本氏へのメールは文面から「よく考えてから提案している」と伝わってきた。初回の面接では話をしただけだが、松本氏は麻生氏について「熱意を感じる人で、自分の意向をよくくんでくれているように感じました」と話す。ロード・インターナショナルからの提案は3社ほどに絞り、転職活動を進めた。

 加えてプレミアスカウトからもメールが届いた。こちらは登録者のプロフィールを見て、企業が直接登録者にスカウトをかけるものだ。エージェントを介さない。

 一時は転職セミナーの会社、ロード・インターナショナル、プレミアスカウトと同時並行に進めることになってしまい、スケジュール調整が大変になった。

 このころ松本氏は「転職活動を通じて自分の市場価値を知りたい」と思うようにもなってきた。大規模のプロジェクトを経験してエンジニアとしても脂が乗っている。年齢も気になってきた。あまり年齢が高いと転職の支障になるかもしれない。「転職するならいまだ」。いまが千載一遇のチャンスのようにも思えてきた。

 2008年4月になるとロード・インターナショナルが紹介した2社とプレミアスカウトの1社に候補が絞られた。

絶妙なタイミングで内定が決まる

 転職とは、ほんのわずかなタイミングで決まるものなのかもしれない。最初に内定が出たのはプレミアスカウトから誘いが来た会社だった。動きが俊敏な会社で 面接がとんとん拍子で進んだ。だがこの会社は3社の中では優先順位が低かった。「最後に内定が出たなら、ここにしていたかもしれません。しかし早すぎまし た」と松本氏。

 より希望の高い2つの会社と面接を進めている間は内定を受諾することはできなかった。だからといってむやみに引き延ばすこともできない。松本氏は内定を辞退した。

 次に内定が出たのが、インドのITサービス企業。現在勤めている会社だ。希望の順序からすると、微妙だった。残った2社はどちらを第1希望としてもいいく らいだった。インド企業は英語力をより必要とする会社で、もう片方は会社規模が大きかった。どちらにも魅力があった。

 インド企業の内定が出たのが5月の連休明け。もう1社は回答待ちの状態が続いた。少し待ってみたが、返事がない。松本氏は「落ちたかな」と思った。できれば両社の結果が出てから判断したかったが、5月中旬にはインド企業の内定を受諾した。

 終わったと思ったが、6月に入るころ、ようやく最後の会社から内定の通知が来た。うれしい半面、残念だった。「もう少し早く出してくれたら」というのが本音だろう。現在の会社で不満はないが、松本氏はこう話す。

 「現在の会社でもかなり年収が上がりましたが、もう1つの会社だとより高い年収になる可能性もありました。内定通知直後は、こちらに決まっていたら将来どうなっていたかな、と考えを巡らせることもありました」。

会社への貢献も胸に将来を展望する

 松本氏は3月に上司や同僚に転職を予告していたので「決まるまで長く感じました」と話す。予告したゆえのいづらさもある。転職活動を悠長になどやっていられないだろう。同時並行に面接が進むなど5月は忙しく過ぎたが、なにはともあれ、転職活動は終わった。

 そして7月からインドIT企業に入社し、ITアーキテクトとして働き始めた。インドとのやりとりが多く、テレカンファレンスや日常会話は英語に なることが多いという。「インドとの時差は3.5時間なので、帰ろうとすると向こうから声が掛かってくることも」と松本氏はいう。

 前の会社は2次請けが多かったが、今回は1次請けで仕事ができる。「すでにあるシステムのエンハンスではなく、いまはアセスメントの段階からかかわることができます」と松本氏。プロジェクトの全体像が把握できる立場になった。これこそ松本氏が望んだものだ。

 入社から1年ほど過ぎ、入社後に担当したプロジェクトを終えたところだ。将来の目標を尋ねると、通常の業務以外に社内の基盤整備にも目を向けていることが分かる。

 松本氏がいま働いている企業はインドのバンガロールに本社を置くITサービス企業だ。インド本社に比べれば日本法人の歴史はまだ浅く、社員規模も小さい。「会社の枠組みとしてまだこなれていないのです。わたしがいるうちに業務と並行で会社の基盤を固めていけたらと思います」と松本氏。

 もしかしたら、新入社員の時期と現在とでは何か重なるものがあるのかもしれない。かつても入社時は小規模な会社だったが、10年間で社員数も事業も発展するのを見てきた。いま松本氏はエンジニアとしてのキャリアを築きながら、新天地となる会社の発展に貢献したいという気持ちを抱えながら働いている。

担当コンサルタントからのひと言
 松本さんのご転職のキーワードは、「元請け」「英語」の2つに尽きると思います。

 日常的に英語を使う環境で仕事をしたいという強い思いをお持ちであることは、ジョブエージェントの登録内容からも明白でした。そのため、元請けで、かつ社内の公用語がほぼ英語であるインドIT企業を想定して、スカウトメールをお送りしました。

 外資系企業は多いですが、日常的に英語を使うポジションとなると、選択肢は非常に狭まります。松本さんのご希望にマッチしている同社で、何としてもうまく選考が進むように、複数回の面談対策や企業へのフォローなど、精一杯のサポートをさせていただきました。

 ご転職後、松本さんにお会いした際、仕事の電話に流暢な英語で対応されている姿を見て、松本さんのご転職は成功したのだと、とても嬉しくなりました。今後、ますますグローバルにご活躍されることを楽しみにしています。


 

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