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転職目的別・これが私の生きる道

第2回 2次請けから元請け。IT業界でステータスを上げたい!

アデコ 山口孝之
2008/8/8

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正社員として、当事者意識を持って働きたい清水さん

 もう1つ事例を挙げましょう。清水さん(仮名)は30歳、当社に相談に来たときは派遣スタッフとして、外資系ネットワーク機器メーカーでプリセールスをしていました。その5年前に、営業職からIT業界にキャリアチェンジした人です。

 「清水さんが転職を考える動機を教えていただけますか」

 「いまは派遣社員なのですが、やはり正社員になりたいと考えているのです。5年前は未経験でIT業界に入るのは難しくて、まずは派遣からと思っていましたし、いろいろな職場を経験できるのも魅力でしたが」

 「では、いま正社員になりたいのは、どんな理由からですか」

 「『安定』もありますが、やはり一番の理由は『やりがい』でしょうか」

 清水さんいわく、周りにいるメーカー社員の関心事は、新製品に搭載された先端技術や他社製品とのシェア争い、今年度の業績やボーナスの額などだそうです。派遣社員の清水さんは、そういった話題にいまひとつ関心を持てないそうです。

 派遣社員としてでなく、正社員として、強い当事者意識を持って働きたい。自社の新技術やシェアにもっと関心を持てるようにして、やりがいを持って働きたい。清水さんの希望はそういうことのようでした。前述した瀧田さんと同様、仕事のやりがいを得るために「ステータスを上げる」ことを求めていたのです。

日系企業の正社員は、年収が低い?

 清水さんは、現職と同様のネットワーク機器メーカー数社に応募しました。でも書類選考はすべて不合格で、面接の依頼は1つもなかったのです。その大きな理由は英語力でした。

 ネットワーク機器メーカーの多くは外資系であり、業務に英語力が必要とされるケースは多々あります。清水さんも外資系メーカーに就業していたため、英文のメールを読むことには慣れていましたが、英会話となるとまったく経験がありませんでした。清水さんの会社では、本社とのコミュニケーションは正社員が担っていたからです。今度は清水さんが正社員を目指しているわけですから、かなりの英語力が求められるのです。

 私が清水さんに提案した求人には、数は少なくとも日系企業がありました。しかし清水さんは、外資系企業ばかりを選んで応募していました。なぜなのでしょうか。

 「実は、年収が合わないかと思って……」

 何と、清水さんは年収を下げたくないとの意向があって、年収が高いイメージのあった外資系企業にばかり応募し、日系企業への応募を避けていたのです。当時、清水さんの派遣社員としての年収はかなり高いもので、転職で正社員になることによって年収が下がる可能性がありました。清水さんはこのことを気にしていたのです。

 私は清水さんに、中長期的に考えて会社選びをすることを勧めました。英語があまり得意ではないのに外資系企業にこだわり、チャンスを逃していては本末転倒です。もしいったん収入が下がったとしても、今後追いつくことも追い越すことも可能です。何よりも、メーカーの正社員として働くことで得られる『やりがい』は、お金には代えることのできない価値なのではないでしょうかとお話ししたのです。

 結局、若干の収入ダウンはありましたが、清水さんは日系のネットワーク機器メーカーへプリセールスエンジニアとして転職しました。決して大手企業ではなく、シェアも外資系の著名な製品に水をあけられている状況とのことでした。でも清水さんは自社製品のシェアを高めるため、自社のビジネスを拡大させるため、日々充実した毎日を送っているそうです。

転職には、テーマが必要

 瀧田さん、清水さん、2人に共通している成功のポイントは、最終的には転職のテーマがぶれなかったことです。

 瀧田さんも清水さんも、仕事に「やりがい」を感じるため、ステータスを上げたかったのです。大手企業にこだわったり、収入にこだわったりと、若干の迷いはありましたが、それでも2人ともステータスを上げることに関しては揺らぎはありませんでした。これが、瀧田さんと清水さんの生きる道だったのです。

 会社選びの要素はたくさんあります。人によって、その優先度はさまざまでしょう。多くを求めながら成功する人もいますが、通常は求めれば求めるほど可能性が小さくなってしまうものです。生きる道が決まっているなら、トレードオフできるものはトレードオフして、その道に集中すべきです。

 皆さんは、自分なりの「生きる道」を見つけていますか?

 

今回のインデックス
 2次請けから元請けへ……瀧田さん
 派遣社員から正社員へ……清水さん

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筆者プロフィール
アデコ 人材紹介サービス部 コンサルタント
山口孝之
千葉県出身。大学卒業後、建設会社にて人事、経理などの管理業務を経験。その後ITエンジニアに特化したスカウト型の人材紹介会社に転職し、キャリアアドバイザー業に従事する。その後アデコに参画し現在に至る。キャリアアドバイザーとしては一貫してIT業界、インターネット業界を担当。ギャップのない転職を支援するための情報収集能力、転職者側と採用企業側の両方の目線で行うカウンセリングには定評があるという。


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