第3回 市場価値を高めたい人は成長分野を目指す
アデコ 大田耕平
2008/8/20
目的別の実例を挙げながら、転職における成功・失敗の要因を探る。皆さんの参考となる「道」を探してほしい。 |
転職の目的別に事例とポイントを紹介する本連載。今回のテーマは「自分の価値を高めたい」です。
「世間で通用するITエンジニアになりたい!」「いまの自分が得られる評価はどのくらいのものなのだろうか」「業界で通用する技術が身に付いているだろうか」。日ごろ転職希望者に相談を受けていると、このような思いを抱えている方が多いように思います。
今回は、「自分の価値を高めたい」と考え、異なるアプローチを取った2人のITエンジニアのケースを紹介し、価値の向上を目的とした転職を実現するためのポイントについてお話ししたいと思います。
■正直いって、もっとお金が欲しい
蒲田さん(仮名)は25歳のシステムエンジニア。大学では理工学部で建築学科を専攻していたものの、技術計算に用いていたプログラミング言語に興味を持ったことをきっかけに、IT業界を中心に就職活動をしました。そして、創業から数年のパッケージベンダに入社。1年目はカスタマーサポート担当としてクライアントからの問い合わせに対応、2年目からはアプリケーションの導入と保守を担当していました。この企業では初の新卒入社。まだ研修の体制も整っていない組織で、自発的に行動し、技術スキルを身に付けて活躍していました。
入社して3年がたったころ、蒲田さんは転職を意識し、当社の人材紹介サービスに登録に来たのでした。
大田(筆者) 今回は、なぜ転職をしようと思ったのですか。
蒲田 市場価値を高めたいといいますか……、正直にいうと、将来的にもっと給料を上げたいと思っています。
話を聞くと、いまの企業はベンチャーであり、賃金テーブルや評価制度もあいまいで、上司を見ていてもこの先の大幅な給与アップは望めないとのことでした。
大田 蒲田さんの強みは何だと考えていますか。
蒲田 自社製品である人事パッケージを通じて身に付けた業務知識が強みだと思います。
大田 反対に弱みだと思われている部分はありますか。
蒲田 いままで身に付けたスキルが、どれも中途半端なものであるところです。カスタマーサポートとアプリケーション保守、簡単なプログラムの修正、短い期間ですが営業を担当していたこともあります。同期がいないので比較ができませんが……。教育制度もないのでスキルは自己流になってしまっていると思います。もし会社が倒産したら、外の世界でやっていけるか、正直いってとても不安です。
話を聞いたところ、蒲田さんの会社では、自社製品の開発工程や品質管理について、独自のあいまいな手法を取っていることが分かりました。小規模企業ではありがちですがドキュメントも整備されていないとのことでした。
■幅広い選択肢を視野に入れ、将来的な市場価値向上を
大田 将来的にどのようになりたいというイメージをお持ちですか。
蒲田 正直いって悩みますね。人事業務寄りのコンサルタントやプリセールスにも興味がありますし、プロジェクトマネージャなどのマネジメント業務に対するあこがれも強いです。
蒲田さんは最初、それまで身に付けた人事業務の知識を生かしたパッケージベンダのコンサルタント職やポストセールス職への転職に興味を持っていると話していました。しかし、より詳しく聞くと、人事システムの開発にこだわりがあるわけではないとのことでした。
そこで私は、この時点で専門性を求めるのではなく、5〜10年後にコンサルタントやプロジェクトマネージャなど幅広い選択肢を得られるキャリアを積んだ方がよいのではないかと提案しました。まだ若い蒲田さんにとって(25歳です)専門性を身に付けるための技術の下地をつくった方が、結果的に市場価値を高めることにつながると思ったからです。
そこで蒲田さんは、教育体制や品質管理のノウハウがしっかりしている大手から中規模のシステムインテグレータを受けることにしました。
その結果、数社から内定通知をもらい、その中から経験を高く評価してくれた従業員800人規模のシステムインテグレータにリーダー候補として入社したのでした。市場でも需要のある開発系エンジニアとしてしっかりとした基礎を学び、さまざまなキャリアが得られる道を選んだのです。
キャリアは順風満帆。でも、もっと市場で評価されたい! |
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