第5回 経理8年のスキルを生かし、会計ソフトのコンサルに
アデコ 山口孝之
2008/9/26
■業界経験が浅い。キャリアアップはできる?
田中さん(仮名)は、昨年(2007年)私が転職支援をした、当時32歳のITエンジニアです。田中さんの転職には、大きな障壁がありました。それは年齢の割に業界の経験が少ないことでした。
@IT自分戦略研究所カンファレンス 上級ITプロフェッショナルのスキルとキャリア 開催 |
日時:2008年9月27日(土) 11:00〜18:00(受付開始 10:30〜) 場所:秋葉原UDX 6F RoomA+B 詳しくは開催概要をご覧ください。 |
田中さんはもともと会計の専門学校を卒業後、メーカーの経理財務の分野でキャリアを積んでいた人です。2004年ごろ、経営不振に伴う早期退職者の募集に応じ、未経験ながらIT業界へ転身したという異色の経歴を持っていました。
派遣プログラマとして活躍していた田中さんですが、当時の職場に不満があったようで、私が転職のサポートをすることになったのです。
山口 さて田中さん、転職をお考えになった理由は何でしょう。現在の職場に何かご不満でもお持ちでしょうか。
田中 はい、不満というより、不安といった方がいいかもしれません。派遣社員として働いておりますが、作業内容は下流工程ばかりですし、給料もあと何年かで頭打ちになってしまうのではと心配しているのです。
社会情勢を反映して、派遣社員で働くデメリットのような内容が多くメディアに取り上げられる中、将来に不安を感じて当社に登録したとのことでした。
「派遣社員」というだけでひとくくりにはできません。重要なのはどんな経験を積み、そこからどんなスキルを身に付けているかです。田中さんの経験を詳しく聞いたところ、確かに年齢に比して不足しているものがあることは否めませんでした。具体的にいうと、下記のような経験不足がありました。
- システム開発の時間的な経験不足
- 設計業務などの上流工程の経験不足
- チームの中でのリーダー経験の不足
田中 そうですか、昔からパソコンが趣味で、この業界だったらやっていけると思ったのですが、やはり20代後半からスタートしたのでは遅いですよね。
落胆する田中さんを見るのは、私にとってもつらいことでした。
私は考えました。直近の3年だけ見ると経験不足ですが、社会人としての11年のキャリアは立派なものです。メーカーでの経理職の経験を生かせる仕事はないものかと。
冒頭にも言及したように、企業がITに期待することはここ数年で変わったように思われます。単なる自動化ではなく、もっと高度な問題解決を期待しているのです。
それの実現を担うITエンジニアには、顧客企業の業務にまで踏み込んだ知識を求められるケースがある。であればきっと、経理として働いていた経験が生かせるポジションはIT業界にあるはずです。
私は、会計系のパッケージソフト開発会社数社の求人状況を探ってみました。すると予想どおり、会計の業務知識を求められるポジションをいくつか見つけることができたのです。
■会計知識を生かして転職活動
会計知識を求められる求人だからといって、田中さんが受かるとは限りません。年齢に比して業界経験が浅いことは、まぎれもない事実なのですから。あとは、経験不足を業務知識で補えるかどうかの勝負になりました。
いくつかの書類選考はパスしました。そしていくつかの面接試験は落ちてしまいました。ポイントになったのは、田中さんに不足しているものとして挙げた3点でした。
しかし、捨てる神あれば拾う神ありです。最終的に田中さんは、会計系の自社製品を持つソフトウェアメーカーの導入コンサルタントとして、採用内定を勝ち得たのです。
導入にかかわるコンサルティングと、導入後の運用支援が主な仕事です。開発工程は外注しているものも多く、プログラミングスキルよりは、会計分野の業務知識や顧客とのコミュニケーションがものをいうポジションでした。
もともと明るい性格で人と話すことが好きな田中さんですから、受かるべくして受かったといえるのかもしれません。
田中さんとは、転職後にお会いする機会がありました。「派遣で働いていたときに比べると、格段にレベルアップできたと思います。一開発者という狭い視野ではなく、大局的にお客さんに向き合えるし、もうキャリアパスで悩まなくてもよくなりました」と話していました。
■得意のスキルを生かせる転職を
企業と従業員の間には、ある種の契約関係が存在します。会社に対して何らかのアウトプットをすれば、報酬という形のインプットがあります。
誤解を恐れずにいえば、業務経験だけではなく、生まれてから培ってきた経験や資質、スキルなどを生かして転職した方が、より多くのアウトプットを出せるはずだし、その分多くのインプットも期待できるのです。
熊田さんと田中さんの例は、いささか極端だったかもしれません。でも転職をするならば、自分をより生かせる環境を希望すべきです。英語が得意なら外資系企業を狙ってみるとか、話すのが上手であればセールスエンジニアを目指すとか、自分をよく分析して、得意のスキルを生かせる転職活動をすべきなのです。
今回のインデックス |
当時はまれなOSSスキルを持っていた熊田さん |
ITエンジニア経験は少ないが、経理のキャリアは8年の田中さん |
筆者プロフィール |
アデコ 人材紹介サービス部 コンサルタント 山口孝之 千葉県出身。大学卒業後、建設会社にて人事、経理などの管理業務を経験。その後ITエンジニアに特化したスカウト型の人材紹介会社に転職し、キャリアアドバイザー業に従事する。その後アデコに参画し現在に至る。キャリアアドバイザーとしては一貫してIT業界、インターネット業界を担当。ギャップのない転職を支援するための情報収集能力、転職者側と採用企業側の両方の目線で行うカウンセリングには定評があるという。 |
@IT自分戦略研究所の関連サービス |
48の質問で面接力を高める! 「面接トレーニング」 ITエンジニアが転職面接で聞かれそうな質問を48個集めました。すらすら回答できれば、面接通過の可能性大! 面接力の向上に、面接前の最終チェックに、ぜひご活用ください。 |
@IT自分戦略研究所は2014年2月、@ITのフォーラムになりました。
現在ご覧いただいている記事は、既掲載記事をアーカイブ化したものです。新着記事は、 新しくなったトップページよりご覧ください。
これからも、@IT自分戦略研究所をよろしくお願いいたします。