第6回 「残業の少ない会社に転職したい」人の本音と建前
アデコ 福間啓文
2008/10/16
■会社の体制が古すぎる
永田さん(仮名)は中堅の独立系システムインテグレータに勤める、28歳の業務アプリケーション開発エンジニアです。新卒で入社して以来順調にステップアップし、プロジェクトリーダーとして活躍していました。
しかし永田さんは、下記のようなことで会社に不満を感じていました。
- 社内ミーティングが多過ぎる(プロジェクトの進行に影響があるほど)
- フレックス制度はあるが、顧客の都合に合わせる必要があり使えない
- 提案書・稟議書の決裁に非常に時間がかかる
- 上司や先輩が遅くまで残っているので帰りづらい
この会社は独立系でオーナー色が強く、設立から30年以上の歴史があり、典型的な一昔前の社風を持っていたのです。
永田さんの不満はだんだん大きくなり、とうとう転職を決意しました。
■同じような会社にばかり応募してしまう
永田さんの希望は、自分の裁量で仕事ができる環境を探すということでした。そこで情報収集を始め、経験のあるアプリケーション開発ができる求人をピックアップしました。その中から「自分のペースでやりがいをもってできる環境です」というようなキャッチフレーズがあるシステムインテグレータを中心に応募したのです。
幸いにも永田さんは年齢と経験のバランスが取れていたため、選考は順調に進みました。しかし、どの企業も永田さんにはピンとこないのです。なぜなら、永田さんが応募した企業は、結局のところ現在の会社とあまり体制が変わらないシステムインテグレータばかりだったからです。
そこで永田さんはキャリアカウンセリングを希望し、私がサポートをすることになりました。
■優先順位を決めて転職先を選択
私の提案は、「イメージだけで会社を選ぶのではなく、実態を考慮して企業選択をしよう」というところから始まりました。次に退職の理由・転職のテーマ・希望をヒアリングし、永田さんが転職先の条件として何を重要視するのかを明示してもらい、優先順位を決めました。そうすると、次のように希望が整理されました。
- 自分のペース、裁量で仕事をしたい
- いままでの経験が生かせるアプリケーション開発をしたい
- 将来的にはマネジメントがしたい
- 会社の業種や格にはこだわらない
- 給与は現職と同程度であれば問題ない
- できれば福利厚生がしっかりしているといい
優先順位が明確になったところで、上位の項目を重視し、ベンチャー系も含めさまざまな特徴のある企業を紹介しました。
結局永田さんは、ネット系ベンチャー企業にアプリケーション開発エンジニアとして入社することを決意しました。決め手は個人の裁量に任せてくれる環境であること、フレックス制度が浸透していることでした。
その後数カ月がたったある日、永田さんから連絡をもらいました。「フレックス制度は気兼ねなく使えています。また入社して分かったことですが、思う存分自己主張ができる環境で、非常に自分の感覚に合います」とのうれしい報告でした。
前職ではミーティング時に、上司への遠慮で本心がいいにくかったそうです。新しい会社では年齢や職位にかかわらず、新しい企画や現状のシステムの問題点など、気持ちよく発言できる環境があるとのことでした。
現在、永田さんはプロジェクトマネージャとして活躍していると聞きます。
以上、2人のケースを紹介しました。「自分のペースで仕事がしたい」という思いは同じでも、環境も価値観も異なるため、対策は異なります。
しかし、2人の成功要因は共通していました。明確なテーマを持ち続け、そこから希望項目を絞り込み、優先順位付けをしたうえで転職活動に臨んだことが、大きな成功の要因だったのではと思います。
今回のインデックス |
もっと子どもと過ごしたい岡部さん |
「会社の体制が古すぎる……」永田さん |
筆者プロフィール |
アデコ 人材紹介サービス部 コンサルタント 福間啓文 1969年生まれ、大阪府出身。私立理系大学卒業後、精密機器メーカーにてソリューション提案営業を経験し、2000年にアデコへ入社。現在、IT系人材・ITエンジニアを専門にキャリアコンサルティングを担当。営業としての観点とキャリアコンサルタントとしての経験から、1人1人のニーズをくみ取り、的確な情報提供・アドバイスをすることを念頭に転職支援を行っている。CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)資格取得。 |
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