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「転職でキャリアアップ」のウソ・ホント

第11回 転職経験、4回。こんな私でも転職できますか?

アデコ
高野和幸

2007/11/26

短期間で再び転職することになっても……この仕事をしたい!

 龍野(仮名)さんは27歳。大学を卒業してから5年間、派遣社員としてクライアント企業に常駐し、社内のヘルプデスク担当として業務に取り組んでいました。

 龍野さんはかねて、いずれはネットワークエンジニアとして活躍したいと考えており、そのために資格をいくつも取得するなど努力を重ねていました。そして20代も後半を過ぎたころ、いよいよネットワークエンジニアへの転身を目指して転職活動を開始しました。が……。

 多忙な業務の合間をぬって行う転職活動は、苦戦の連続でした。その焦りから、活動の目的は徐々に、「派遣社員から正社員へ」にシフトしてしまう結果に。最終的に正社員として採用されたものの、業務内容は派遣社員のときと同じ、ヘルプデスク担当ということになってしまいました。

 「正社員であれば、気分も変わって仕事に打ち込めるのでは」との淡い期待も、以前と変わらない業務に従事する間に打ち砕かれ、ネットワークエンジニアとして活躍したいという気持ちは以前よりもずっと強くなってしまいました。

 転職から2カ月。まったく業務に集中できなくなってしまった龍野さんは、こんな状態でいるより、いっそのこともう一度転職をしようかと考えるようになりました。しかし、わずか数カ月の勤務後、再度の転職となると、前回より企業からの評価が厳しくなることは容易に予想されます。「そんな人を採用する企業なんてあるのだろうか」と考えてしまい、なかなか一歩を踏み出せません。どうしていまの仕事で我慢ができないのだろうと、自分自身を責めることも増えていきました。

 興味が持てない業務、上がらないモチベーション、そして自分を責める日々。ついに龍野さんは、ストレスが原因と見られる胃痛でダウン。1週間ほどの休養を余儀なくされました。

 自宅で横になって天井を見つめながら、やっぱりしたい仕事がしたい、するべきだと気付いた龍野さんは、ようやくもう一度転職活動をスタートする決心をしたのです。

「ポジティブの呪縛」から脱出成功

 友人からの紹介を受けて私が龍野さんに会ったとき、彼女が一番心配していたことは、「面接の際に、転職理由をどのように説明すればいいのか」でした。

 前回の転職から短期間での転職であること、現在の会社に入社する際の判断が軽率であったことは明白な事実。どのようにポジティブに説明すればいいのか、どんなに考えても良いアイデアが浮かばず、最終的に「やっぱり自分はダメな人間なのかも……」と思い切りネガティブな気持ちになってしまうとのこと。

 私はそんな龍野さんに、こう質問してみました。「失敗したことを失敗ではないと抗弁するのと、失敗であることを率直に認めて、次に同じ失敗をしないように気を付けたいと考えているポイントを説明するのと、どちらが簡単ですか?」

 龍野さんは、即座に「後者です」と回答。私もそれを支持しました。

 「『あなたの短所は何ですか?』と質問され『短所はありません』と回答する人よりも、『自分の短所は短気なところです。なので、よくよく考えてから行動に移すようにしています』と回答できる人の方が、一緒に働くのに安心ではないですか」と尋ねると、龍野さんは大きくうなずいてくれました。

 こうして「ポジティブの呪縛」から解き放たれた龍野さんは、面接でも前向きに失敗を認め、「同じ過ちを繰り返さないよう、今度こそネットワークエンジニアとして頑張りたい」と説明できるようになったのです。

 私も企業への応募の際には、前回の転職活動では忙しさもあり賢明な判断はできなかったことを素直に反省していることを伝え、ネットワークエンジニアになることへの強い意欲を、数々の資格取得などを具体例にしっかりとアピールしました。

 努力の甲斐あって、龍野さんは私が予想していた以上に多くの企業から内定を得ることができました。そしてついに、念願のネットワークエンジニアとしての第一歩を踏み出すことができたのです。

不利な状況でも、前向きな姿勢でプラス評価に

 転職回数が多いこと、前回の転職から短期間での転職であることは、ほぼ間違いなく、企業にとってはマイナスの評価ポイントになります。

 だからといって、それを克服する方法がないわけではありません。しっかりと過去の自分を分析し、次に生かしていこうとする姿勢があれば、その前向きな気持ちを評価してくれる企業はあります。

 そして前向きな意欲を裏付けるため、どんなポイントに注意しているのか、どんな努力をしているのかを具体的にアピールできれば、さらに評価を高めることも不可能ではないのです。

 どんなに不利だと思える状況であっても、キャリアアップへの情熱があれば、それを乗り越えることができる。私はそう信じて、みなさんを応援しています!

 

今回のインデックス
なんと転職5回目! 谷原さんの作戦は?
前回の転職から2カ月で再転職! そのとき、龍野さんは?

筆者プロフィール
アデコ 人材紹介サービス部 コンサルタント
高野和幸
1974年埼玉県生まれ。大学卒業後、テレビゲーム雑誌、パソコン雑誌の編集・ライターを経て、2001年アデコに入社。スーパーバイザーとして、通信キャリアや大手航空会社のユーザー系システム開発企業にて派遣スタッフの管理を担当し、厚い信頼を得る。現在はキャリアコンサルタントとして、IT関連職種を中心に転職希望者のサポートを行っている。日本産業カウンセラー協会認定 産業カウンセラー、日本産業カウンセラー協会認定 キャリアコンサルタント資格取得。

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