第5回 その資格は、誰のための資格ですか?
樋口研究室
山口紀子
2010/12/15
■ 国によって有効範囲が変わる?
資格には、それを認定する機関や組織があって、大きく「国」や「コミュニティ」や「企業」に分かれます。
「国」の資格というのは、情報処理技術者試験に代表される「国家試験系」の資格のこと。
「コミュニティ」の資格というのは、技術の普及や標準化を目指す「IT団体系」の資格のこと。
「企業」の資格というのは、IT製品を開発製造するソフトやハードの会社が実施する「ベンダ系」の資格のこと。
国家試験系(国)の資格を所有していると、あなたの住んでいる国で、自身の専門性を証明できます。
しかし、その国を飛び出してグローバル(世界)で働きたいと思ったら、自国の証明書だけで専門性を証明するのは難しくなります。
そういうときには、IT団体系(コミュニティ)の認定する資格が重要になってきます。コミュニティが認定する資格は、国際的に統一されているので、外国で自分の専門性を証明するのに役立ちます。
これからあなたの活躍したいフィールドを「国」という範囲で見ると、取得したいと思う資格が変わってくるかもしれません。
■ 顧客によって有効範囲が変わる?
もし顧客のシステムで採用されている製品が決まっているなら、ベンダ系(企業)の資格が有効になってきます。
顧客は自社が採用しているハードやソフトを中心とする範囲で物事を見ています。自社が採用している製品に詳しいスペシャリストがサポートしてくれれば、顧客はうれしいでしょう。
もしあなたの専門性が顧客の使っている製品に一致しているのであれば、ベンダ系の資格は、顧客を安心させる手段の1つになるかもしれませんね。
■ 会社の歴史で有効範囲が変わってくる?
会社の歴史によっても、資格の有効範囲が変わってくることがあります。
例えば、日本に本社があったり、日本を基点にしてグローバル展開する会社では、その歴史的な経緯から、国家試験系の資格を重視する会社が多いようです。
逆に、最初からグローバルな環境を相手にしている外資系の会社では、国家試験系よりも、最初から世界的に通用するIT団体系(コミュニティ)の資格を重視する傾向にあるようです。
これから世界に飛び出して活躍しようとするエンジニアなら、国際的に通用する資格を所有する、という選択も1つの手です。その場合、専門性を磨くのと同時に、語学力を磨いておくことも、今後のキャリアアップを考えるうえで大切です。
■ その資格は誰の役に立つか。資格をキャリアに活用するための視点
ITの世界の技術は新陳代謝を繰り返します。会社や顧客のビジネスモデルも、恐ろしいスピードでどんどん変わっていきます。
ですから、資格は一度取得すれば終わり、というわけにはいきません。
時代の変化に合わせて資格の内容を更新する、新しく取り直すなど、常に自分の専門性をリニューアルする行動が大切になります。
あなたが取得したい(あるいは取得済みの)資格を、図「資格が役立つ範囲ビュー」を使って眺めてみてください。そうすると、あなたの資格が誰の役に立つものなのか見えてくると思います。
図 資格が役立つ範囲ビュー 自分の取得する(している)資格が、誰に役立つ資格かをしっかり考えよう。たくさんの人に満足を与える資格となって、結果的に自分のキャリアップにつながっていく |
1. あなた自身に役立つ資格ビュー
会社や国に依存せず、あなた自身が価値アリと判断した資格(専門性)がこのビューに入ります。このビューの資格をキャリアに活用するためには、あなたが積極的に、自身の専門性を世の中にアピールしていく必要があります。
2. 相手に役立つ資格ビュー
相手の要求に合わせて取得した資格(専門性)がこのビューに入ります。このビューの資格をキャリアに活用するためには、相手の要求が変わったら、素早くあなたが提供できる資格も変えていくという柔軟性が求められます。
3. 相手の、さらに「先の相手」に役立つ資格ビュー
相手があなたの資格(専門性)を活用して、さらに「先の相手」に専門性を提供するときに役立つ資格がこのビューに入ります。このビューではテクニカル系も大切ですが、管理や維持といったリーダーシップやマネジメント、ヒューマン系の専門性も必要になってくるかもしれません。
このビューを広げたり縮めたりして、あなたの資格が有効に活用する範囲を見定める。そのうえで、新しい技術を学ぶ。これが資格をキャリアに活用するための基本行動になります。頑張って資格取得に励んでください。応援しております!
筆者プロフィール |
山口紀子●樋口研究室の認定コーチ。ヒューマンマネジメントの分野で活躍しているコンサルタントだが、IT分野の知識も豊富でエンジニアからの信頼が厚い。 |
» @IT自分戦略研究所 トップページへ |
@IT自分戦略研究所は2014年2月、@ITのフォーラムになりました。
現在ご覧いただいている記事は、既掲載記事をアーカイブ化したものです。新着記事は、 新しくなったトップページよりご覧ください。
これからも、@IT自分戦略研究所をよろしくお願いいたします。