第9回 リーダーの方程式「信頼+安心+納得=安定を与える人」
樋口研究室
山口紀子
2011/4/25
■現場を支える土台をつくる、3つの「安定ビュー」
リーダーが「信頼感」「安心感」「納得感」を関係者に与えることで、現場や仕事の土台が安定します。決断力や交渉力といったスキルは、自分が関わる人々、現場の「安定」上に成立します。逆に、どんなに決断力や経営力があったとしても、信頼できない、安心できない、納得できない人はリーダーとは呼びたくないでしょう。
(1)「信頼感」を与える行動ビュー
「リーダーに付いていこう」「リーダーのいうことに従っても問題ない」と感じさせる行動。「ウソ」をついたり「デマ」を流したりすることは禁物です。
(2)「安心感」を与える行動ビュー
「失敗してもリーダーが回復援助してくれる」「リーダーのヘルプを借りることで再生できる」と感じさせる行動。相手に安心を与えるためには、いつでも「相談」できる体制を整える、「アドバイス」を適切に行うようにしてください。
(3)「納得」を与える行動ビュー
「リーダーの発言や行動に違和感がない」「ロジカルで筋が通っている」と感じさせる行動。相手を納得させるためには、「宣言」したことや「約束」したことは必ず実行することが不可欠です。
■リーダー不在時には安定ビューが欠けている
「リーダー不在」だと人々が感じる時は、上記の3つの安定ビューがそろっていません。以下のような現場を想定してください。
例えば、人の話をたくさん聞いてくれるリーダーがいたとしましょう。しかし、リーダーが聞いた内容をまったく覚えていなかったら「信頼」できません。
テクニカルな知識と経験で超一流といわれているリーダーがいたとしましょう。しかし、リーダーが、「その仕事は私の責任範囲ではない」などと言ってしまうような人なら、「安心」して仕事を頼めません。
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どんな仕事でも素早く仕上げるリーダーがいたとしましょう。しかし、リーダーが自分の得意な仕事しか引き受けていなかったら、メンバーは不公平を感じて、決して「納得」しないでしょう。
安定をもたらせない人がリーダーになると、さまざまな悪影響をもたらします。職場の雰囲気やメンバーのモチベーションは下がるし、不満が溜まって仕事の効率が下がります。リーダーは、役職名ではありません。たとえ「リーダー」と呼ばれる人がいたとしても、その人がチームや顧客に安定を与えられないなら、それは「リーダー不在」の状態なのです。
■リーダーは難しい。だけど、リーダーになることを逃げてはいけない
最後に、リーダーの役目をまとめましょう。
- メンバーや顧客に対して、常に信頼や安心、納得を提供しながら
- 安定した仕事環境をつくり
- 会社の利益を上げる
リーダーの仕事は非常に難しいですが、経験や年齢を重ねるにつれて、リーダーの役目を求められるようになってきます。この事実から逃げていては、良いキャリアを築けません。
リーダーを目指す、あるいはリーダーになることを求められているエンジニアは、以下の「3つの指針」を意識して仕事に取り組んでみてください。
(1)面倒くさい仕事でも、ずるずると後回しにせず、優先順位を考えて行動する→責任逃れを防止し、メンバーや顧客に信頼感を与える
(2)常に勉強や観察、情報収集を怠らない→自分の経験やスキルアップにつながって、相手に安心感を与える
(3)ドタバタしている時でも、状況をじっくり眺めて落ち着いた行動と判断をする→失敗しても理由をきちんと説明できることが、相手に納得感を与える
筆者プロフィール |
山口紀子●樋口研究室の認定コーチ。ヒューマンマネジメントの分野で活躍しているコンサルタントだが、IT分野の知識も豊富でエンジニアからの信頼が厚い。 |
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