第10回 “想定外”と思考停止せず、キャリアに潜むリスクを見直す
樋口研究室
山口紀子
2011/6/9
仕事環境が安定している時ほど「何かが起こった時のこと」を想定しない。しかし、その態度には大きなリスクが潜んでいる |
■ 「想定外」は本当に想定外なのか?
「今の仕事を続けていて、その先もエンジニアとしてやっていけるだけのスキルや経験が身に付くのだろうか?」
「今はそれなりに案件があるけれど、継続して受注をもらえるのか?」
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震災以降、多くのエンジニアからこのような言葉を聞きました。それぞれ心配することは違いますが、これらの発言には「これまで当たり前だと思っていたものが一瞬にしてなくなる」ことへの気付き、対処法の模索がうかがえます。
さて、震災以降、最もよく聞いたキーワードの1つが「想定外」です。確かに、これほどの規模を想定して日々を過ごしていたという人は多くないでしょう。しかし、「想定外」という言葉を言い訳にしている人々がいるのも事実です。本来ならきちんとリスクを見積もり、さまざまな対策をしなければならないのにそれを怠り、問題が起こってから慌てて対応する……この数カ月でこのような姿を多く見てきました。
キャリアづくりについても同じことが言えます。現状が安定している人ほど、何かが起こったときのことを考えずに、漫然と仕事をこなしてしまいがちです。しかし、「今考えてもしょうがないから考えない」という姿勢には、大きなリスクが潜んでいます。今回のテーマは、キャリアづくりにおいて「想定外だ!」と嘆かないためのビューチェンジです。
■仕事に恵まれているはずのAさんが感じる不安
Aさんは、ITサービス会社に勤務して15年目のベテランSEです。顧客の情報システム部門に常駐して、基盤システムの運用管理の仕事をしています。趣味はテニスで、学生時代はテニス部のキャプテンを務めていました。同僚や顧客先からの評判はとても良く、何か仕事のトラブルを抱えているわけでもありません。順風満帆に見えるAさんですが、当の本人は「自分のキャリアに不安がある」と不安な様子。
「15年間、良い人や環境に恵まれて仕事をしてきました。でも、この恵まれた環境が問題なのではと感じているのです」
「恵まれている」ことが問題……一見うらやましい限りの悩みですが、Aさんは真剣です。Aさんはここ10年近く、ほぼ何も大きなトラブルがなかったことが問題ではないかと考えています。
Aさんは、地震発生後しばらく、テレビで震災状況を見ていたそうです。「家やビルが、一瞬にしてなくなってしまう姿は衝撃でした」――「どんなに頑丈に作り上げたものでも、一瞬の出来事で破壊され得る」「今までは問題がなくても、それが継続するとは限らない」ということに、Aさんは気が付いたそうです。
■現状は特に問題がない≠これからも問題は起こらない
Aさんの仕事や生活は特に問題がなく、恵まれています。しかし、現状がこれからも続くとは限りません。安定している期間が長ければ長いほど、変化への対応は鈍くなります。
「想定外とは、想定していないことへの言い訳にすぎない」――いつ来るか分からないことについては考えないでおこうというスタンスではなく、何かが起きてもすぐに対処できるよう備えておきたい。Aさんはそう考えるようになったと言います。私たちは常にこのことを意識しておくべきでしょう。「現状は特に問題がない≠これからも問題は起こらない」。
■安定に慣れ切っていないか? キャリアのリスクをチェック
以下のチェックリストでは、「あなたがキャリアにおいて現在、抱えているリスク」を判定します。まずは、自分がいくつ当てはまるか数えてみましょう。
□3年以上、同一の顧客を担当している
□3年以上、同一の仕事をしている
□3年以上、自分の周りの上司や同僚も同一の仕事をしている
□3年以上、会社が同一の組織や体制を維持している
□3年以上、自分の職務や職制(担当や主任、主席、主査、課長など)が変化して
いない
□3年以上、昇級や昇格がない
□3年以上、課長やグループリーダー(管理職)のアドバイスが変わっていない
□3年以上、上司との目標面談が短時間で終了する
□3年以上、論文や経験事例を提出していない
□3年以上、昇進や昇格、資格の試験に合格していない
あなたはいくつ当てはまりましたか?
想定外と言わないためのビューチェンジ方法 |
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