第8回 正当に評価されないので、会社辞めます
アデコ
藤田孝弘
2007/12/7
■あるシステム開発会社の事例
Aさんは山下さんと同じ、28歳のSEでした。中堅のシステム開発会社でやはりプログラマとして経験を積み、サブリーダーを経て、その年からプロジェクトリーダーになっていました。
山下さんは、同年代のAさんがすでにプロジェクトリーダーとして活躍していることに関心を持ったようでした。山下さんのプロジェクトリーダー像は、「将来目指したいと考えている、遠い先の目標」というものだったため、同年代のプロジェクトリーダーがいるのは意外なことであったようです。
同年代で同じ業界にいながら、なぜこのような違いが出るのでしょうか。
Aさんはその能力を高く評価されたということもありますが、社内の環境にも恵まれていたのだと思います。
Aさんの所属する会社は、500人前後の社員を有する中堅企業です。古くから付き合いのある大手企業のパートナーとして開発案件を受託しており、これが売り上げの多くを占めています。大型案件が多く、要件定義〜テストを責任を持って対応し、プロジェクトの管理はもちろん、メンバーの構成に関しても自社の権限で決定することができるのです。
会社の中でのキャリアパスも明確で、プログラマ→SE→プロジェクトリーダー→プロジェクトマネージャといったキャリアパスから、専門性を高めるキャリアパスまでが用意されていました。
社員はそれぞれの目標を持ち、上司と相談しながら長期的なキャリアパスを決めていくことができます。本人の目標管理・評価は現場にいる上司が行うため、納得度の高い評価ができることになります。
今度は、Aさんの会社の特徴をまとめて紙に書き出してみました。
Aさんの会社の特徴
- 要件定義〜設計〜開発を自社の管理下で業務遂行する
- 大規模案件が中心であり長期的にプロジェクトに参画できる
- 自社のメンバーでプロジェクトを編成している
- 現場に同じ会社の上司がプロジェクトマネージャやリーダーとして存在する
- 上司のミッションの1つに部下の育成と早期戦力化がある
- 評価は直属の上司が行う
■山下さんのチャレンジ。そして成功
上記の山下さんとAさんの会社の特徴を見比べると分かると思いますが、山下さんの会社の特徴は、山下さんの抱える課題としてとらえることができます。同時にAさんの会社の特徴は、山下さんの抱える課題を解決する方法としてとらえることができます。
つまり、山下さんの課題は、Aさんの所属しているような会社に転職することにより、解決できる可能性があると考えられます。
山下さんは私と話す中で、評価に関するものだと思っていた自分の不満が、将来のキャリアパスを描けない環境に対しての不満であることに気付きました。そして、その課題は社内で解決することが難しいと判断し、転職が自分の希望をかなえられる1つの方法であるということを知りました。そして転職をする決意を固めたのです。
山下さんはさっそく、Aさんの会社のような特徴を持つ求人企業に注目し、転職活動を開始。それまでに培ったスキルと上流工程への強い希望、将来の目標をはっきり持っている点が高く評価され、いくつかの内定を獲得しました。その中から特に課題を解決できそうな企業を選んで転職したのです。
現在、山下さんはプロジェクトリーダーとして活躍しています。きっと今年の評価は、山下さんにとって納得のいくものであったに違いありません。
■会社の評価に、不満はつきものだけれど
今回は会社の評価への不満から、「上流工程の仕事ができない環境」こそが課題なのだと気付き、それを転職によって解決した山下さんの事例をお話ししました。
会社の評価に不満はつきものです。評価に不満だからといって安易に転職を考えてしまっては、無駄に転職回数を増やしてしまうことにもなりかねません。
しかし、長期的なキャリアパスを描くこと、それを実現することなど、根本的なところに障害があるような場合、会社の仕組みに何らかの問題があることも考えられます。
まずは、何に不満を感じているのか? 不満を解決する方法は、社内に存在するのか? なければ、転職によって実現できるのか? といった流れで自問自答してみることが重要であると思います。もし解決策が見つからなければ、親しい友人に相談してみるのもよいかもしれません。
今回のインデックス |
「会社の評価に不満があります」 |
山下さんの、本当の不満とは? |
筆者プロフィール |
アデコ 人材紹介サービス部 シニアコンサルタント 藤田孝弘 人事系コンサルティング会社にて人事採用と教育・人事制度関連のコンサルティングに従事。その後、IT専門の人材サーチ会社にてITコンサルタントやSEを中心とした人材のキャリアコンサルタントを経験、現職に至る。これまで、IT業界を中心に3000名以上の転職支援を行った実績あり。現在、@ITジョブエージェントのパートナーとしても活躍中。 |
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