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第3回 HolyGrail――オンライン勉強会Roppongi.JSの挑戦

岑康貴
2008/8/22

オンラインとリアル。現代のエンジニア・コミュニティには、2つの活動領域が存在する。その境界線を越えて活動する人たちにフォーカスを当て、これからのコミュニティ像を探る。

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 エンジニアが開く数々の技術勉強会。その開催場所を見ると、やはり東京を中心とした関東圏が多い。そんな中で一時期、不思議な「場所」で開かれる勉強会が存在した。名前は「Roppongi.JS」、場所は「オンライン」。

 オンラインで勉強会、というユニークな試みは、試行錯誤の連続だったようだ。2008年3月にスタートしたこの勉強会は、同年7月に「一時凍結」を宣言した。

 なぜオンラインだったのか。リアルな勉強会との違いは。そして「凍結」の意図とは。主催者である「HolyGrail」氏に伺った。

初心者にもJavaScriptを使ってほしい

 
 
Roppongi.JSを運営する堀邦明氏

 Web上ではHolyGrailという名前で通っている、堀邦明氏。某Web企業でJavaScriptやPHPなどを扱うフロントエンドのエンジニアとして働く彼は、「1000人スピーカプロジェクト」などでも話した経験を持っている。

 「東京に住んでいると、勉強会がたくさんあるので、行く機会も多いですね」

 そんな中で堀氏は、初心者や非プログラマ(デザイナーなど)に向けたJavaScriptの勉強会がないことに気付く。JavaScriptの大きなコミュニティ・勉強会では「Shibuya.JS」が存在したが、「内容が高度過ぎるので、もっと初心者向けのものがあってもいいのではないか」と考えたという。

 「JavaScriptはメモ帳とWebブラウザさえあれば書けるので、初心者の第一歩に向いているはず」

 そう考えた堀氏は、以前にネタとしてドメインだけ取得していた「Roppongi.JS」を思い出す。このドメインを元に、初心者向けの勉強会を開催したらどうだろうか。

 しかし、勉強会を開くとなれば場所探しが必要になる。さらに、東京で開催するとすれば、関東圏の人しか参加できず、その場に来ないと内容が分からないという欠点もある。そこで、堀氏は1つの実験を行おうと考えた。それが、「オンライン勉強会」という試みだった。

オンライン勉強会のメリットとデメリット

 2008年3月にオンライン上でスタートしたRoppongi.JS。毎週火曜日の夜に1時間、コードリーディングを行うというライトな形式だ。チャットで読み進めるため、気軽に行えるだけでなく、勉強会のすべてがログとして残るのがいいところだという。

 オンラインでの勉強会のメリットは、どのようなところにあるのだろうか。

 「オンラインなら日本全国、どこからでも参加できるというのが一番の魅力です。また、途中からの参加や、途中での離脱が自由にできるのも、参加者からするとメリットだと思います。リアルでは交流するのが苦手な人でも、オンラインなら見ているだけ、という参加の仕方があります」

 しかし、逆にデメリットもあったと堀氏は語る。

 「チャット形式だと相手の顔が見えないため、テンポが悪くなるということがありました。リアルの勉強会だと、聞いている人の顔を見たり、場の空気を感じ取ったりすることで、『あ、付いてきていないな、理解が追い付いていないな』といったことを知ることができます。それによって柔軟に進めることができるのですが、オンラインだとそれができない。ちゃんと付いてきているか、不安になることもありました」

 チャット上でのレスポンスは、慣れている人の声が大きくなってしまう傾向にあったことも課題だったと話す。初心者を取り込むという趣旨に反するからだ。

 勉強会には「欠かせない」と話す人が多い「懇親会」が開けないのもオンライン勉強会の弱点だ。ただし、堀氏は「人と顔を合わせて、お酒を飲み交わす、というのは、別の形でやればいいのではないでしょうか」と話す。

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