エンジニアライフ時事争論(8)
「幸せなソフトウェア開発」時代の終焉
@IT自分戦略研究所2009/12/24
「コスト削減が厳しくなった」「案件が減った」「そもそも仕事がない」……多くのITエンジニアにとって、2009年は厳しい年だったことだろう。
12月16日から22日にかけて、@IT自分戦略研究所は特集「SIerの未来、エンジニアの未来」を公開した。特集では、2009年のSIer事情を概観し、SIerとITエンジニアが今後どのように生きるべきなのか、「クラウド」と「内製化」というキーワードを軸に考察した。今回は特集の番外編として、現場のITエンジニアに「SIerの未来、エンジニアの未来」について執筆してもらった。SIerやITエンジニアは、これまでと同じような仕事のやり方で生き残っていけるのだろうか?
■開発から運用・サポートへ。中心軸の意向を考えたSIer
まずは、2009年のSIerの動きから。『きっと「+」なスキル 〜軸になるスキル構築〜』を執筆するCompTIA日本支局は、「2009年は、SIerがサポート力強化を目指した年だった」と振り返る。
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「サポート力を強化するにはどうすればよいのか」。CompTIAには、多くのSIerからこのような相談が寄せられた。今年、不況のあおりを受けたユーザー企業の多くが、新規のシステム開発を控える傾向にあった。SIerは「安定した収入の維持」と「顧客企業とのつながりの継続」のため、業務の中心を開発から運用・サポートにしようと模索した、とCompTIAは分析している。
■「どうやるか」ではなく「なぜやるか」を考えよ
次に、SIerの今後を担う「ITエンジニアの育成」のあり方に警鐘を鳴らすコラムを紹介しよう。『Road To IT-Engineer / ITエンジニアの生きる道』の高橋秀典氏は、「進むべきゴールをしっかり持っているIT企業とITエンジニアが少ない」ことについて、問題提起をしている。
IT業界には「高度IT人材」が必要だという。ならば「高度IT人材」とはどのような人材か? 「高レベルのITSSを取得している」「上流工程を担当できる」から「高度IT人材」なのだろうか。高橋氏は「それは違う」と述べる。なぜなら、高度な技術を持っていても、「5年後に自分がなりたい姿」を考えられない中堅層がたくさんいるからだ。
日本のIT企業が抱える根本的な問題は「戦略のなさ」ではないか、と高橋は問う。彼らは「どうやろう」ばかりを考えて、「なぜやるのか」を考えていない。
「『どうやるか』ではなくて『何をやるのか』という目標を明確に定義でき、周囲をリードして結果を出せる人材」が、今後必要なのではないか、と高橋氏は提案する。高度なIT技術を持つ人材、経験の豊富な人材も必要だが、それ以上に「目的を設定でき、周囲を牽引できる」人材が、IT業界の未来には必要なのだ。
■何でもこなすスーパーエンジニアでなければ生き残れない?
「作ったものを売る」時代から、「作ったものを使って便利なサービスを提供する」時代へと確実に移行している、と指摘するのは『ソフトウェア開発に幸せな未来はあるのか』のにゃん太郎氏だ。
にゃん太郎氏は、コラムタイトルでもある「ソフトウェア開発に幸せな未来はあるのか」という問いに、「現在のSIerに幸せな未来はない」と答える。ソフトウェア開発産業は存続するだろう。しかし、開発の単価が確実に安くなっているいま、これまでと同じやり方ではSIerもITエンジニアも生き残ることができない、とにゃん太郎氏は指摘する。
では、これからITエンジニアはどうすればいいのだろうか。にゃん太郎氏は、3つの未来を提示した。
まずは、「ITエンジニアとして生き残ることを目指す」という選択肢。しかし、この場合は「すべての工程を1人でこなせ、かつ完成まで早くこぎつけられる」のが条件だ。これまでは、開発単価がそれなりにあり、チームで結果を出すことが求められていた。しかし、現在はソフトウェア開発の単価が安くなっている。これまでの分担作業ではコストの回収が困難になるため、1人の人間が開発工程すべての業務をこなさなければならなくなるだろう。
「ITエンジニアの道を捨てること」を視野に入れてもいいのでは、とにゃん太郎氏は提案する。もし上記のように「1人で何でもこなす」ことが無理ならば、別業界で生計を立ててもいいのではないか。「コンピュータを使う中小企業では、ソフトウェア開発の経験が有利に働くかもしれない」とにゃん太郎氏はアドバイスする。
最後の選択肢は「独立・起業」である。Webサービスの構築なら、それなりに仕事があるだろう。しかし、この場合も「営業は向いていない」「接客は苦手」といわずに、何でもやるという意気込みが必要になる。これから先、仕事を「できるかできないか」「苦手だからやらない」で選んでいてはITエンジニアとして生き残れない。これからは、1人で何でもできる「スーパーエンジニア」になることが求められているのかもしれない、とにゃん太郎氏は語る。
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