エンジニアライフ時事争論(16)
「資格は取るだけ無駄」なのか?
資格を活用する5つの方法
@IT自分戦略研究所
2011/2/9
エンジニアは、何のために資格を取るのだろうか? また、資格についてどのような意識を持っているのだろうか。
@IT自分戦略研究所は2010年10月に、スキル・資格に対する意識調査を行った。そこで、エンジニアが資格についてどう考えているのか、興味深い結果を得た。
資格を取る理由として、最も多かったのは「実務に必要なスキルを磨き役立てるため」。次点は「転職や昇進などのキャリア アップのため」だった。
資格を取得し、スキルアップやキャリアアップに生かそうとするエンジニアの姿が明らかになった一方、資格に対する疑問の声も上がった。「取得しても実務に役立たない」「転職や昇進などのキャリアアップに有利にならない」と考えるエンジニアもいるようだ。
この読者調査の結果を見て、現役エンジニアたちは何を思うのか。エンジニアライフのコラムニストたちに読者調査を読んでもらい、資格に対しての意見を募った。
■資格を取る理由は「自分に自信が持てない」から
『恋愛感情で仕事はできるか?』の森姫氏は、「資格取得をする際、障害となるトップは時間」というトピックについて、「資格のために、あえて勉強時間を確保する必要はないのでは」と意見を述べている。「毎日1時間は勉強する」と予定を決めてしまうと、リズムが狂ったときにモチベーション維持が難しい。代わりに、森姫氏は「実務にかかわるところは、普段の仕事を通じて勉強しておけばいい」という。
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また、森姫氏は「資格はできる限り多く取っておきたい」と主張する。その理由は「自分に自信が持てないから」。
コードを書いているとき、人と話すとき、常に「自分はこれでいいのだろうか?」という疑念がよぎると、森姫氏は語る。資格を取得すれば「資格を取得できるだけのスキルがある」と、客観的に評価される。人に認められることによって、不安は自信に変わる。 「資格は自信をつけるために取る」という考えがあってもいいのでは、と森姫氏は提案している。
■「資格は当てにならない」? 資格をめぐる3つの疑問&5つの活用法
『ドロップアウトからのキャリア七転び八起き』の46氏は、よく目にする「資格にまつわる3つの疑問」について、回答を試みている。
- 資格なんか持っていても、仕事では当てにならない
- 資格の勉強よりも、まずは業務をしっかりやれ
- 資格だけじゃダメ、経験がないと意味がない
●資格なんか持っていても、仕事では当てにならない
上記の意見は、「資格を持っている=一定のスキルがある」という前提に立った批判である。資格を持っている人が必ずスキルがあるとは限らないが、だからといって十把ひとからげに「当てにならない」と切り捨てるのはもったいないと、46氏は主張する。
●「資格の勉強よりも、まずは業務をしっかりやれ」
新人のうちは有効な助言だが、ずっと同じ業務をやっていると事情は違ってくる。「ずっと同じことばかりしていていいのか」という焦燥があるなら、資格取得は1つの有効な解決方法となるだろう。
●「資格だけじゃダメ、経験がないと意味がない」
46氏は「資格と経験、どちらを先に取るべきかといわれたら、まずは経験」と述べる。かといって、「資格は意味がない、取らなくてもいい」わけではない。先に資格を取得していたからこそ、未経験のことにチャレンジできる可能性だってあるからだ。
46氏は、経験と資格の関係について、さらに考察を進める。最も良いのはもちろん「経験と資格」を両方持っていること。経験か資格、どちらか一方しか持っていない場合は、経験がある人の方が評価が高いだろう。
経験+資格>経験のみ>資格のみ>どちらもなし
上記のとおり、資格だけ持っていても有効に生かしきれない。ポイントは、資格を取りっ放しで終わらせるのではなく、いかに「経験と結びつけるか」である。46氏は、「5つの資格活用法」を提示している。
- 業務をより深く理解する:現場の仕事を理解するという、資格活用の王道手段
- 間接的に業務に生かす:直接業務と関係なくても、社内外の人とコミュニケーションする際に使える
- 仕事のチャンスを増やす:TOEICなど、ほかの人と差別化できるスキルを身に付けて、より良い仕事を得る
- キャリアアップに活用する:「一目見てスキルレベルがある程度分かる」のが、資格の良いところ
- 資格でもって、独立・開業する:社労士などの資格を取得できれば、独立だってできる
■資格と実務を結びつけて考えるのはおかしい?
『ITエンジニアの憂鬱』のケーワイケー氏は、同じく「資格なんて」という意見に疑問を投げ掛ける。
「資格があるからといって仕事ができるとは限らない」「資格を持っていても仕事ができるとは限らないから、資格は無駄」――資格に対する批判的な意見について、ケーワイケー氏は「そもそも資格の捉え方を間違えている」と指摘する。
ケーワイケー氏によれば、仕事と資格は結びつけて考えるものではない。資格で示せるのは「仕事ができるか否か」ではなく、探究心や向上心を持っていること、一定以上の「知識」を持っていること、この2つだけだ。
「普段からしっかり日々技術を磨いていれば、業務に使っている技術の資格なんて簡単に取れる」
ケーワイケー氏はこのように述べたうえで、「興味はあるけれど経験がない分野を知るため」「業務で使う技術の知識確認のため」に、資格を活用していると語る。
いかがだっただろうか。「資格は積極的に取りたい派」「資格の効果に疑問派」によって、意見はそれぞれ異なるだろう。コラムニストの主張もまたさまざまだが、「資格は、取ること自体よりどう生かすかが重要」「生かすかどうかは、自分次第」という意識が共通しているように見える。資格を取ろうと思ったら、まずは「何のために自分は資格を取るのか」について、考えてみるのもいいかもしれない。
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