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コラム:自分戦略を考えるヒント(7)
決断力を高める2つの条件

〜もう優柔不断な性格をタタキ直そう!〜

堀内浩二
2003/12/25

こんにちは、堀内です。今回は、「転職を考えているが、自分の決断力不足に悩む」若手SEの大江芳孝氏(仮名・26歳)から相談を受けました。

優柔不断な性格のために転職先を決められない

大江 実はもう半年前から転職を考えているのですが、転職先選びにちゅうちょしてしまうのですよ。転職ネタというのは会社の先輩や同僚には話しにくい。人によっていうことも違うし……。われながら優柔不断で困ってしまいます。仕事の内容で選べばいいのか、あるいは報酬なのか。自分戦略があればバシッと決められるようになるんでしょうか?

堀内 決断する際に「何を最優先すべきなのか」。これは尽きない悩みです。先月、@IT自分戦略研究所で「@ITジョブエージェント登録者のための転職アドバイスメール」というイベントを開催しました。転職相談といっても具体的な企業や職種に関する相談は意外と少ない。むしろ、「今後どういう方向でキャリアを考えればいいのか」という、キャリアビジョンに関する相談を多く受けました。

@ITジョブエージェント登録者のための転職アドバイスメールはこちら

大江 それは分かります。雑誌を読んだり、たまにはセミナーに出席し、情報収集します。だけど、最近は情報収集をすればするほど情報に振り回され、決断時に混乱をきたすような気がします(笑)。

堀内 実は、わたしも優柔不断なタイプだったので、物事を「決断する」ことが苦手でした。

大江 自分戦略のエバンジェリストなのに?(笑)そもそも、どうして「起-動線」のように「決めること」を支援する事業をやろうと思ったのですか。

「よい決断」の条件は2つある

堀内 きっかけは以前勤めていたベンチャー企業が事業を清算したことですね。「次にどんな仕事をやろうか」と思い、大学進学あたりからの自分の選択をいろいろ考えてみました。すると、自分がそれまで行ってきた“選択”には、ポリシーがなかったことに気付いたのです。後々選択肢が狭まらないように、つまりいつでも路線変更ができるようにしておきたいという“後向きのポリシー”しか見えなかったのです。

 どうして路線変更できるようにしておきたかったかというと、「特にやりたいことがなかったから」なのです。本当にやりたいことが見つかったら、スムーズに移行できるようにしておきたかったから……。

大江 でも、ベンチャーに転職するというのは「やりたいこと」だったわけでしょう?

堀内 そうですね。30歳を過ぎ、初めて積極的に動いてみた。そして1年半で失敗した(笑)。そこで、ますます「よい決断とは何だろう」ということを考えるようになりました。いろいろ調査と研究を重ねましたよ。こういうものはあまり学問的にやってしまうと深みにハマります。日常生活の指針にも使えるくらい簡潔でなければ、意味がないですからね。

大江 「よい決断」ができれば、優柔不断とはオサラバできそうですね! ズバリそれは何ですか。

堀内 まず、「よい決断」ではあまりにあいまいなので、もっとシンプルに定義しました。よい決断とは、下の2つです。

・「機を逃さない決断」
・「後悔しない決断」

機を逃さずに決断しているか

堀内 まず「機を逃さない決断」から解説しますと、多くの場合、決断しなければならないことには「期限」があります。

大江 僕の場合は、転職なので、特に期限はないですけどね。

堀内 確かに「締め切り」という意味では、期限はありませんが、例えば「27歳を過ぎるとポテンシャル採用の確率は落ちるらしい」という情報を持っていたとしましょう。ということは、純粋に「何でも経験してみたい」という動機で転職できるのは、27歳が1つの期限になる可能性があるということです。

 現在の仕事が面白いので夢中になっているうちに27歳が過ぎても、イヤな仕事だなと思いながらなんとなく時間を過ごしても、いまの職場で「このスキルが身に付くまで働く」と決めて働き続けるのも、「27歳で転職しなかった」という選択をしたことには変わりがないのです。

大江 なるほど。だから「機」を意識しろということですか。

堀内 ええ。これって、転職だけではありません。毎日起こるさまざまなイベントについても当てはまります。そして「自己責任」で決めなければならなくなってきています。

後悔せずに決断する方法とは

大江 2番目の「後悔しない決断」というのは、もっともです。よい決断とは、「機を逃さず、後悔しない決断」であることが分かったのですが、問題はどうやってそのよい決断をするのかということ。つまり方法論について考えなくてはいけませんよね。

堀内 そのとおりです。方法を知らなくては意味がありません。これもシンプルに考えてみましょう。よい決断のコツは、 「目標(チャレンジ)」と「目的(ありたい自分)」との関係をハッキリさせておくことに尽きます。

大江 転職というのは、「目標」ですね。

堀内 はい。目標というのは具体的な行動や状態のことです。それに対して目的とは何だと思いますか。

大江 転職という「目標」を目指す「目的」ですか……。おカネですかね、やっぱり(笑)。

堀内 目的は人によって違いますから、本人が目的としてとらえられるものだったら何でも構いません。とすると、1円でも給料のいい職場を探せばいいのですから簡単ですね(笑)。

大江 いやいや、さすがにそこまで割り切れないですよ。仕事のヤリガイや勤務地、そして職位とかもしっかり見て決めないと。

堀内 そうですよね。目的は必ずしも1つではないと思います。互いに矛盾するような目的もあるかもしれません。ただ、目的意識がある人は、判断基準がはっきりしています。判断基準を持つことが、よい決断への第一歩です。

まずは目標の“仮バージョン”を作ってみよう

大江 それはそうですね。では、「やりたいことが見つからない」っていう人の場合はどうですか?

堀内 わたしもそのタイプでしたからよく分かります。「これだっ!」というものが見つかりさえすれば全身全霊でコミットしたいんだけどなあ、と思っていました。しかし「見つからないなあ」といって黙って座り込んでいる間は結局何も見つからないものです。せめて腰を上げて自分から探しに行かなければ、問題解決のヒントを見つけることは難しいでしょう。

 例えば、「やりたいことが見つからない」ようなときは、目標も目的も、後ろに“仮”と書いておけばいいのではないでしょうか。

大江 それでもいいのですか。

堀内 仮に目標(チャレンジ)が転職だとすると、その目的(ありたい自分)を考える作業は、ある意味人生の目的を問うような、大きな話になります。そんなものは1カ月や2カ月で分かるものでもなければ決められるものでもありません。それにずっと目標や目的が変わらないというわけではないと思います。

 一度、目標と目的の“仮バージョン”を作って、どんどんリバイズを掛けていくつもりで考えたり動いたりしてみるといいですよ。同じように本を読んだり話を聞いたりしていても、「何のための転職なのか」「転職して、それでどうなるのか」を考える癖がつきますから。

筆者紹介
堀内浩ニ●アーキット代表取締役。早稲田大学大学院理工学研究科(高分子化学専攻)修了。アクセンチュア(当時アンダーセンコンサルティング)にて、多様な業界の基幹業務改革プロジェクトに参画。1998年より米国カリフォルニア州パロアルトにてITベンチャーの技術評価プロジェクトに携わった後、グローバル企業のサプライチェーン改革プロジェクトにEビジネス担当アーキテクトとして参画。2000年に帰国、ソフトバンクと米国VerticalNet社との合弁事業において技術および事業開発を担当。

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