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IT業界の冒険者たち

第23回 Javaを作った伝説的プログラマ

脇英世
2009/6/16

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 1991年5月、コンシューマ製品のハードウェアは「*7」(スター7)と命名された。1991年6月ごろからジェームズ・ゴスリングはオーク言語の開発に取り組み始めた。コンシューマ・エレクトロニクス製品が市場で広く支持されるためには、特定のハードやアーキテクチャに依存しないことと信頼性が重要であった。このためジェームズ・ゴスリングが特定のハードやアーキテクチャに依存することの少ないC++言語を改良したオーク言語を開発した。これが後のJava言語である。

 1992年9月3日、「*7」は完成した。「*7」は5×6×5インチの小型のSPARCステーションであり、200kbpsの無線装置、赤外線入出力ポート、タッチスクリーン、5インチ液晶、2つのPCカードスロット、2つの内蔵スピーカを持っていた。ずいぶん重装備で、絞り込みのないブカブカした製品である(*2)。ジェームズ・ゴスリングはこれをハンドヘルドリモコンと呼んだ。「*7」はスコット・マクニーリとビル・ジョイに見せられた。この後、「グリーン・ドアーの裏側」「グリーン・ドアーの向こう」「ファーストパーソン・ビジネス・プラン」の3通りの事業計画書が書かれた。

*2)「*7」は失敗であったが、デュークというキャラクタは残った。デュークのデザインはジョー・パルラングが担当した。

 このころ、三菱電機に対して、携帯電話、テレビ、家電、民生自動化製品にオークベースのインターフェイスを使用することを提案した。

 1992年11月1日、ファーストパーソン社が設立された。

 1993年3月タイムワーナーがオーランドでのインタラクティブTVの実験を始めることになりファーストパーソンもこれに応募したが、シリコングラフィックスに敗れた。

 1993年8月、3DOが同様のセットトップボックスを計画し、ファーストパーソンはこれに応募した。3DOのトリップ・ホーキンスはファーストパーソンの技術をすべて買い取ることを主張したが、サン・マイクロシステムズのスコット・マクニーリはこれを拒否したため、交渉は決裂する。

 1994年4月、ファーストパーソンは解体に追い込まれる。インタラクティブTVチームはSUNインタラクティブと改称され、オーク言語なしでトムソンのセットトップボックスとビデオサーバの開発に従事した。壊滅である。

 この窮境を救ったのがキム・ポーレーゼである。

 キム・ポーレーゼはサン・マイクロシステムズに7年間勤めた。まずサン・マイクロシステムズのサンプロでC++のプロダクトマネージャを務めた。1993年8月ファーストパーソンにオークプロジェクトのプロジェクトマネージャとして出向した。着任したキム・ポーレーゼはグリーンプロジェクトを検討した結果、いくつかの仕掛けを打つ。まず製品の名前が重要である。そこでキム・ポーレーゼはJavaという名前を選択した。またキム・ポーレーゼはキラーアプリケーションが必要ということを知っていた。そこでキム・ポーレーゼはJavaで書かれたWebブラウザであるHOTJavaを作らせた。さらに1995年3月23日サンノゼ・マーキュリー・ニュースとのインタビュー記事でキム・ポーレーゼはJavaを吹きまくった。この記事の中でインターネットの絶対的カリスマであるマーク・アンドリーセンが手形の裏書きをしてくれた。

 これで一挙に燃え上がった火はインターネットで増幅され、キム・ポーレーゼの仕掛けは大成功する。こうして連戦連敗のオークはJavaとして飛び立ったのである。

 こうしてみると、伝説的なプログラマであるジェームズ・ゴスリングは実際にはあまり成功を収めていない。しかし、彼の講演は面白い。含蓄がある。また趣味も広い。SFをよく読み、SF映画もよく見ている。彼の講演のスライドから1枚紹介しておこう。

 「その主題については2つの考え方がある。一方は楽観的な見方を描くものであり、他方は暗く不気味なものである。この2つのビジョンは一対のSF界最大の星、ディビッド・ブリンとウィリアム・ギブソンの軌道を描くものだ。映画でいえば、『ブレードランナー』か『スタートレック』というところだろうか」

本連載は、2002年 ソフトバンク パブリッシング(現ソフトバンク クリエイティブ)刊行の書籍『IT業界の冒険者たち』を、著者である脇英世氏の許可を得て転載しており、内容は当時のものです。

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