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パソコン創世記
日電オフコン「システム100」、マイコン化に先駆ける

オフコン・ディーラー

富田倫生
2010/1/14

「システム100」へ

本連載を初めて読む人へ:先行き不透明な時代をITエンジニアとして生き抜くためには、何が必要なのでしょうか。それを学ぶ1つの手段として、わたしたちはIT業界で活躍してきた人々の偉業を知ることが有効だと考えます。本連載では、日本のパソコン業界黎明期に活躍したさまざまなヒーローを取り上げています。普段は触れる機会の少ない日本のIT業界の歴史を知り、より誇りを持って仕事に取り組む一助としていただければ幸いです。(編集部)

本連載は『パソコン創世記』の著者である富田倫生氏の許可を得て公開しています。「青空文庫」版のテキストファイル(2003年1月16日最終更新)が底本です。「青空文庫収録ファイルの取り扱い規準」に則り、表記の一部を@ITの校正ルールに沿って直しています。例)全角英数字⇒半角英数字、コンピューター⇒コンピュータ など

 システム100の価格は、最小構成で約370万円。マイクロプログラミング方式の採用で低価格化と小型化を推し進めたというハードウエアの特長に加え、さまざまなアプリケーションをあらかじめ用意しておくというソフトウエアの備えによって、システム100はコンピュータの利用の裾野を広げようと狙っていた。

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 既成ソフトのAPLIKA(APplication LIbrary by Kit Assembling)シリーズには、販売管理、顧客管理、財務管理、給与計算などのさまざまなプログラムが用意された。渡部はさらにBEST(Beginner's Efficient & Simple Translator)と名付けた事務処理用の簡易言語も準備した。

 主に事務処理用のプログラムを書くために使われてきたコボルを手本にしたBESTによって、渡部たちは午前中に使い方の講習を受ければ午後には簡単なプログラムが書けるような環境を提供したいと考えた。

 アメリカではディジタルイクイップメント(DEC)の開発したミニコンピュータがまず研究者や技術者の注目を集め、ユーザー自身が必要とするプログラムを開発するという流儀に沿って、コンピュータの小型化の波が進んでいった。プログラムを開発するためのユーティリティーと呼ばれる小道具ソフトや言語が整備され、こうした環境はマシンをしゃぶりつくすように使いこなすポール・アレンやビル・ゲイツ、そして後藤富雄のようなハッカーを育てる土壌ともなった。

 大型コンピュータを独占するIBMの足下を食い荒らしはじめたDECの快進撃を受けて、日本でも1970年前後、各社がミニコンピュータに参入していった。だが、こと日本においては、ミニコンピュータは下位の市場を押さえきることができなかった。小型機導入の中心となったのはむしろ中小企業であり、この市場を掘り起こしていったのは、中小企業の求めるソフトウエアも面倒を見ようとするオフィスコンピュータだった。

 いざコンピュータを導入する際も、日本の多くの経営者は従来の仕事の進め方にこだわった。

 システム100に用意されたAPLIKAのプログラムでも、頑固な中小企業の親父たちを納得させることは難しかった。オフィスコンピュータのディーラーは、それぞれの会社の仕事の流儀にぴったり沿ったプログラムを用意してはじめて、マシンを売り込むことができた。

 必要なソフトウエアはメーカーがすべて用意する。それでも満足がいかなければ、ディーラーがより細かな希望に沿った特注のものを書く。オフィスコンピュータによる小型化は、こうした至れり尽くせりのソフトウエアあつらえ文化に沿って進みはじめた。

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