第2回 あなたが本当にしたいことは、何ですか?
テイクウェーブ 竹内義晴
2008/2/12
■無理なく目標に向かう方法
ここからは、あなたが見つけた「本当にやりたいこと」に向かう方法を紹介しましょう。少し趣向を変えて、どうしたらできるだけ無理をせず、目標に向かうことができるかという観点でお話ししたいと思います。そのためには、脳の構造を知っておくと便利です。
・無理に頑張らない
眠れない夜に「眠ろう眠ろう」と考えると、余計に眠れないということを、私たちは経験から知っています。
このように、無理に何かをしようとしたとき、脳はそれを嫌がります。目標に向かって何かを、例えば資格の勉強をすることを考えてみましょう。どうしても気分が乗らないとき、「やらなきゃ……」と無理するのは逆効果。「こういうときはプラス思考で」と考えても、いきなりプラスに考えられるものではありません。だからといって「資格の勉強をやらない」を選択すると、いつまでたっても勉強が進みません。
そんなときは、「何が私をやる気にさせないんだろう?」と自分に問い掛けてみるのがお勧めです(「なぜ私はやる気にならないんだろう?」と自分を責めることではありませんので注意してください)。さらに、「資格に合格することで、私は何を得るのだろう?」と問い掛けると、脳は自然と得られるものを探そうとします。得られるものがあなたのありたい姿に重要なことなら、勉強する必然性を感じることができるでしょう。
・興味を示すと、脳は勝手に動きだす
何か欲しいものがあるときのことを思い出してください。洋服でも車でも何でも結構です。CMや雑誌を見て、お店に行って「これ欲しいなぁ」と思ったときから、街中にその商品があふれているように感じられた経験はないでしょうか。
私にはこんな体験があります。私の前の車は神奈川に住んでいたときに買いました。神奈川はほとんど雪が降らないので2WDです。雪国新潟に帰郷しても同じ車に乗っていましたが、スタッドレスタイヤを付けていてもタイヤが空転してしまうため、車を買い替えることにしました。
いろいろと迷った末に、いま乗っている車に決めました。決めた瞬間から、「あれ? この車って街中にこんなにたくさん走ってたっけ?」と思うようになったのです。
もちろん、私が決めたとたんに街中の同じ車のオーナーが車を走らせたわけではありません。「いままで気が付いていなかった同じ型の車に、私が気付くようになった」のです。
そうです。何かを意識すると、アンテナが立つようになります。いま買ったブランド物のバッグを、ふと気が付くと多くの人が持っているように感じるのも、あなたが意識し始めたからです。意識すればするほど、あなたのアンテナは自然に情報を受信するようになると考えられます。
あなたが何かになりたいとしっかり思えば思うほど、必要な情報に自然と気が付くことになるということです。このことからも、自分のありたい姿をきちんと決めておくことが重要だということが分かると思います。「車が欲しい」と思うよりも、「○○(車種)が欲しい」と思う方がアンテナが向くように、ありたい姿が具体的であればあるほど効果的です。
もしあなたが将来コンサルタントになりたいと思うなら、「取りあえずプログラミングから始めて……」と何も考えずにステップを踏むよりも、「私は将来○○のコンサルタントになっている」と、具体的に自分のありたい姿へ意識を向けましょう。自然と有用な情報が入ってくると思います。
それは「ひらめく」とか「何となく気になる」という気付きかもしれません。直感力を信頼して、思ったことは実際に行動してみることがキーポイントです。
・「モデリング」でさらにアンテナの感度を高める
「こんな人になりたい」と思う理想の人物を探して、その人をまねてみるのもいい方法です。その人の服装・髪型・持ち物、口調・言葉遣い、行動・姿勢などを意識的にまねてみます。そして、その人になりきってみるのです。
いま、あなたの理想の人が思いつくなら、その人を想像してみてください。何を着ているか、どんな口調で話しているか、どんな姿勢を取っているかを具体的にイメージします。その人になりきったあなたは、物事をどのように感じるでしょうか? なりきったあなたに現実味があればあるほど、理想が実現したようで楽しくなってきます。
このように意識を向ければ向けるほど、アンテナの感度は高まっていきます。心理学的には、これをモデリングといいます。
私の場合、好きな人の対談CDをよく聞いたり、服装をまねたり、口調や声のトーンを意識的にまねて、その人になったように振る舞っています。自然とその人に近づいたような感覚になって楽しいですし、自然と理想の自分に近づくための情報が集まってきます。
■人生はスピードの出るスポーツのようなもの
今回は、「なぜ、自分のありたい姿を決めておくことが重要なのか」「目標に近づくためには、具体的にどうすればよいか」についてお話ししました。いかがだったでしょうか。
私は、人生というのはスピードが出るスポーツに似ていると考えています。自転車で坂を下りることを想像してください。下を向いていると怖くて下りられませんが、顔を上げて行き先をしっかり見つめていれば、案外怖くありません。たとえカーブがあったとしても、行き先さえ見ていれば、体は無意識にハンドルを切り、自転車を傾けて曲がろうとします。
行きたい方向とは……ITエンジニアとしてどうありたいかということかもしれませんし、自分の人生の目的かもしれません。
多くの人が「いま、ここ」だけを見つめています。つまり、顔を下に向けて自転車に乗り、将来を不安に感じています。それよりも少し遠くの「行きたい方向」を見つめれば、どれだけ自然に、そして恐れを克服しながら進めるかはお分かりいただけると思います。
「行きたい方向」はすぐには思いつかないかもしれません。けれども「10年後は○○になっている。そこから考えると、いま必要なことは○○だ」という思考のクセをつければ、最終的にあなたが向かいたいところへ到達できる確率は、格段に高くなるのではないでしょうか。
最後に、あなたのありたい姿が見つかるような質問を紹介して、今回の話を終わりにします。
・もし、明日の朝起きたとき、何でも夢がかなっているとしたら、あなたは何になっているだろうか?
・もし、お金や時間や立場などに何の制限もなかったら、あなたは何を始めるだろうか?
・もし、あなたが95歳になったとき、いまと同じような時間の使い方をしているとしたら、何に後悔するだろうか?
これらを手掛かりに、ぜひあなたの「ありたい姿」を見つけてください。
今回のインデックス |
資格上の「ITコンサルタント」だった私 |
「目標」=「資格」??? |
人生は、スピードの出るスポーツのようなもの |
筆者プロフィール |
テイクウェーブ 代表 竹内義晴●システムエンジニアとしてさまざまな規模の開発を経験した後、心理学のトレーナーになるという異色の経歴を持つ。現在は人材育成を中心としたパーソナルコーチングや組織活性化のための企業研修を行う。「技術命」のエンジニアとしての経験と、脳機能の理論から生まれた独自の視点でマネジメントの楽しさを伝えている。そのほか、夢を持って人生を切り開く方法やモチベーションアップ法などをメールマガジンやWebサイトで無料提供中。ITコーディネータ・生涯学習開発財団認定コーチ・NLP(神経言語プログラミング)トレーナー。 |
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