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「誰もやらない仕事を受け止めるのがCTO」
――CTO48レポート

岑康貴、金武明日香(@IT自分戦略研究所)
井上敬浩(慶應義塾大学大学院)
2010/6/25

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ベンチャー企業のCTOが集まるイベントが、Twitter上での「思い付き」から実現した。どのような仕事なのかが見えづらい「CTO」という役職について、52人のCTOが議論を交わした模様をレポートする。

 6月18日、東京ミッドタウンにあるシスコシステムズのオフィスにて「ベンチャーCTOだらけカンファレンス vol.1」が開催された。マイネット・ジャパン 代表取締役社長の上原仁氏がTwitterで「ベンチャーCTOばっかり20人くらい登壇するセミナーやりたい。やろう」と企画を発案。約1カ月の準備期間で、登壇CTO 52人、モデレータ9人、参加者250人が集まる巨大イベントとなった。

 上原氏はTwitterで「CTOってのはギークと経営双方の代弁者なのだ。日々悩ましいのだ」「お金と進化のはざまで叫ぶCTOたちにスポットライトを当てろ!」と企画趣旨をつぶやいており、その言葉通り、多くのCTOが「CTOの役目」や「エンジニアの在り方」について意見を交換する場となった。本記事では、メインセッションおよび2つのテーブルセッションの模様をレポートする。

上原仁氏(マイネット・ジャパン)と岩佐琢磨氏(Cerevo)
上原仁氏(マイネット・ジャパン)と岩佐琢磨氏(Cerevo)

CTOは「何でも屋さん」

 上原氏と、Ustream中継協力の岩佐琢磨氏(Cerevo 代表取締役)によるプレセッション終了後、かなり時間が押したところでメインセッションがスタート。小飼弾氏(ディーエイエヌ代表取締役)、仙石浩明氏(KLab 取締役CTO)、安武弘晃氏(楽天取締役)の3人によるパネルディスカッションが行われた。小飼氏は元オン・ザ・エッヂ(現ライブドア)CTO、安武氏は厳密にはCTOではないものの(楽天はCTOという役職を置いていない)、技術系の取締役ということで参加となった。モデレータは平田大治氏(ニューズ・ツー・ユー 取締役)が務めた。

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 最初の質問は「CTOの仕事とは何か?」。小飼氏が「(CTO当時は)何でもやった」と話すと、仙石氏も「みんながやらない仕事をやる。最近は人事の仕事をしている」と発言。安武氏は「技術が好きな人たちが楽しく働ける環境を作るのが、CTO的な人の仕事」と語った。

 「経営層でありながら技術者でもあるCTOはスーツを着るのか?」という質問に対しては、

  • 小飼氏 「そもそもスーツを持っていない」
  • 仙石氏 「スーツを着るのは年4回」
  • 安武氏 「いかにスーツを着ないようにするかが勝負」

と3人とも「非スーツ」志向を表明した。小飼氏が安武氏に「楽天はドレスコードってあるの?」と尋ねると、安武氏は「社長の前では一応、襟付きの服装ですね」と答えた。

小飼弾氏
小飼弾氏
度々、安武氏に英語で話し掛け、会場の笑いを誘った
(楽天は社内公用語の英語化を進めている)

 「CTOになった年齢」については、小飼氏が30歳のとき、仙石氏が34歳のとき、安武氏は(取締役になったのが)36歳のときと回答した。CTOになったきっかけとしては、仙石氏は「たまたま、転職先で新しい会社を作るというので、参加したらCTOになった」というエピソードを披露。小飼氏は「ネットワーク屋さんをしていたころ、堀江貴文氏と出会い、『半年後に会社を上場するんだけど、CTOがいないので、やってくれますよね』といわれてCTOになった」と、堀江氏との邂逅を振り返った。安武氏は「いきなりCTO」の2人とは異なり、企業内で取締役になったパターン。「なぜかサポート的な仕事をやるようになった途端、役職がつくようになった」と語った。

 「CTOの役割について、悩んだことはあるか」という問いに対しては、「悩む暇がなかった。CTOのころに一生分の勤勉さを使い果たした」(小飼氏)、「最初の5年間は必死だった」(仙石氏)と大変だった過去を振り返った。仙石氏は「5年くらい経ってからは少しずつ仕事を周りの人に任せられるようになって、CTOの役割を考えるようになった」とし、「CTOとは技術者にとっての社長だと思う」と持論を述べた。安武氏は「取締役会では技術的な込み入った話はしないんです。『Cassandraを採用しようか』なんて話にはならない」と笑い、「それでも技術にお金を使うとき、なぜ必要なのかをきちんと説明しないといけない」と、楽天における自身の役割を語った。

仙石浩明氏
仙石浩明氏
「CTOは技術者にとっての社長」という持論を展開した

 「アメリカではオバマ大統領がCTOを置いた。日本にもCTOが必要ではないか。もし日本のCTOを頼まれたら引き受けるか」というテーマでは、小飼氏が「そもそも日本にはCEOがいないですよね。日本はCEOやCTOといったChiefの職が成立しない仕組みだと思うので、『仕事ができません』と断りますね」と語った。一方、仙石氏は「どんなに興味のないことでもチャレンジすることにしているので、頼まれたら引き受けると思います。ただ、何をやるかは全然思い付かないけど」と答えた。安武氏は「国にもCTOは必要だと思う。日本の政治の中枢にいる人たちの中には、インターネットを使って何かをしよう、という人が全然いません」とCTOの必要性を強調した。

 「日本人技術者は海外進出すべきか」という質問には、「社内公用語の英語化」が話題の楽天に注目が集まった。安武氏は「世界で活躍できる会社にしたい、というのがそもそもの目的。さらにいえば、日本のマーケットが無限に拡大するわけではないので、企業規模の拡大を考えると自然なこと」と、海外進出の必要性を述べた。小飼氏は「そもそも会社がないと仕事ができない時代でもない。個人でやっていれば、仕事をする相手は世界中にいる」と“弾言”した。

安武弘晃氏
安武弘晃氏
厳密にはCTOではないが、「CTO的な役割」だという

(※初出時、「楽天の取締役で唯一『いまだにコードを書いている』という」としましたが、現在はプロダクションコードを書いていないというご指摘があり、2010年6月28日11時、修正いたしました。お詫びして訂正いたします)

 最後にまとめとして、小飼氏は「CTO自身もCTOの仕事が何なのかよく分かっていない。ただ1ついえるのは、仕事を断れないのがCTO。誰もやらない仕事が最後に回ってくるのがCTOだろう」とCTOの立ち位置について述べた。仙石氏も「いろんな仕事をすることになる。ただ、どんな仕事が向いているかは、やってみないと分からない。だから、チャンスがあったら、いろいろなことをやってみるといい」と語った。安武氏は「肩書きは本当は嫌いだし、人前に出て話すのも苦手。あくまで技術者なので、自分の作ったものを見てほしい」と技術者らしさを見せながらも、「肩書きがあると便利なことがあるのも事実。自分の作ったもので会話できないような相手と話すときは、肩書きを利用できる」と話した。

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