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「誰もやらない仕事を受け止めるのがCTO」
――CTO48レポート

岑康貴、金武明日香(@IT自分戦略研究所)
井上敬浩(慶應義塾大学大学院)
2010/6/25

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「スーツ」との上手な付き合い方

 イベントの後半では、8つのテーブルに分かれてセッションが行われた。

当日は8つのテーブルでそれぞれUstream中継が行われた

 テーブルセッションM2のテーマは「プログラマとCTOの狭間」。参加者は尾藤正人氏(元ウノウ CTO)、仙石浩明氏(KLab 取締役CTO)、井上誠一郎氏(アリエル・ネットワーク 取締役CTO)、鷲北賢氏(さくらインターネット研究所 所長)、金田忠士氏(イデアリスタ CTO)、松尾康博氏(元マイネット・ジャパン CTO)、及川喜之氏(セールスフォース・ドットコム CTO)の7人。モデレータは「GoTheDistance」を執筆するブロガーの湯本堅隆氏が務めた。

 「CTOになったきっかけ」については、前述の仙石氏をはじめ、「いきなりCTOになった」「会社を作ったときにCTOを名乗っただけ」という人がほとんどだった。「キャリアアップでCTOになるのは難しいのでしょうか?」と湯本氏が尋ねると、「ないことはないけど、この年齢(30代)でなるのは難しいですね」「下からのし上がるには優秀じゃないといけないけど、最初からいるなら優秀じゃなくてもいいですしね」という発言が飛び交い、笑いを誘った。

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 「エンジニアの上司は技術の分かるエンジニアであるべきか。どのような上司が理想的か」というテーマについては、松尾氏が「上司はやはりエンジニアが理想」と発言。「部下の能力を見極め、困難な課題を因数分解して割り振っていくのが重要。常に部下の成長を意識する上司が理想でしょう」と主張した。仙石氏は「エンジニアに限った話ではないが、マネジメントの本質は『相手のことを理解してあげる』『興味を持ってあげる』『話を聞いてあげる』ということに尽きる」と、マネージャとしての心得を解説。「エンジニアの上司はエンジニアであるべき。上司が、自分の興味を持っている技術を理解してくれなければ、頑張ろうというモチベーションを失ってしまう」と述べた。

テーブルセッションM2の様子

 「スーツ(非エンジニア)とエンジニアの対立についてどう思うか。エンジニアは非エンジニアとどのような関係を築くべきか」という質問に対しては、鷲北氏が「実は非エンジニアとの対立というイメージがわかない」と前置きをしつつ、「社長からの『無茶振り』はたくさんあります。でも、それを実現するのがCTOの役割でしょう」と回答した。一方、松尾氏は「非エンジニアのいうことをすべて受け入れるのが良いというわけでもない」と主張。「顧客から無理な納期や価格を提示されたときは、きちんと断るのが重要。CTOはそういうときの『ブレーキ役』ではないでしょうか」と、CTOがエンジニアを守る役割にあることを強調した。

 及川氏は「自分の役割は、エンジニアと非エンジニアの間に立つ『通訳者』。技術が分からない人に対して、この技術はこういうバリューがあるから、こうすべきだ、ということを伝えるのが仕事」と自身の役割を説明し、対立が起きないようにすることの重要性を説いた。仙石氏も「対立ではなく協力。エンジニアは技術を、スーツは技術をお金に変えることを、それぞれとことん考えて、協力していかないと」と語ったが、尾藤氏は「みんな仙石さんみたいに理解のある人ばかりじゃないから、難しいですよね。お互い、相手が自分の仕事を邪魔している、なんて思っちゃうんじゃないでしょうか」と、この問題の難しさに言及した。このテーマについては議論が白熱し、「非エンジニアとエンジニアの交わる部分を見つけ、そこからお互いに歩みよる姿勢が重要」という結論に至った。

「学習」が35歳限界説を打ち破る

 テーブルセッションM7では、「ギークのキャリア論――35歳は限界か?」というテーマでセッションが行われた。

 参加者は渡邉智洋氏(ライブドア 執行役員CTO)、福田昌弘氏(元Yont CTO)、高橋三徳氏(元Speee CTO)、野々村範之氏(サンゼロミニッツ 代表取締役CTO)、中尾彰宏氏(比較.com 取締役)、小飼弾氏(ディーエイエヌ 代表取締役)、吉岡弘隆氏(元ミラクル・リナックス CTO)の7人。川崎裕一氏(はてな 社外取締役)がモデレータを務めた。

 川崎氏は「メンバーが濃すぎて困る」と発言して場をなごませてから、参加者に「もともとCTOになりたいと思っていた人はどれくらいいるか」を尋ねた。CTOになろうと思ってCTOになったという人は1人もおらず、突然「CTOにならないか」と誘われた人もいれば、「創業するからには、取りあえずCTOを作っておこう」という場の流れでCTOに就任した人もいた。「CTOになるとはまったく予想もしていなかった」という発言もあった。

テーブルセッションM7の様子

 キャリアパスについて、小飼氏は「考えられるのは、せいぜい3日から1週間先のことぐらいまで。何年も先のことなんて考えられない」と意見を述べた。テーブルからは「目の前の仕事をがんがんこなすだけ」「明快なキャリア論はないと思う」という声が相次いだ。

 「35歳限界説」は本当だと思うか、という質問には、「限界はある派」と「限界はない派」で意見が二分した。吉岡氏が「40代になってから転職した。限界はないと思う」と主張する一方、野々村氏や中尾氏などは「何も考えずにエンジニアをやっていると、体力的な意味で限界が出てくるのでは」と意見を述べた。福田氏は「何も勉強しない人は限界が来るかもしれないが、勉強し続けていれば限界は超えられるのでは」と発言し、参加者の多くから賛同を得た。

 「35歳限界説は10年前に出てきた話題で、いまでも通用するかどうかは分からない」という意見や、「そもそも『35歳になったらどうなる』と考えること自体が幻想に過ぎない」という意見もあり、最後に川崎氏が「『35歳で限界』はない。学習し続ければ大丈夫」とまとめた。

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