Google流「いいサービスの作り方」
千葉大輔(@IT自分戦略研究所)
2007/9/26
■開発者とユーザー双方に使いやすい工夫を
「GoogleガジェットとiGoogleのシステムが成り立っているのは、グーグルのエンジニアだけじゃなく、質のいいガジェットを作る開発者の皆さんと、使ってくれるユーザーの皆さんの協力のおかげ」
エリス氏がこう話すように、iGoogleやGoogleガジェットには開発者が開発しやすい環境と、ユーザーが使いやすい工夫が盛り込まれている。
例えば、Googleガジェットエディタやライブラリの提供を行っているほか、画像やFlashをグーグル側でキャッシュすることでガジェットの表示が短縮される機能を設けている。ガジェットのレスポンスの速さは利用するユーザーの側から見ても重要だ。
「ガジェット開発者とユーザーの間にグーグルが入ることによって、より簡単にガジェットを開発することができたり、利用できるようになると考えています。開発者の方には、面白くて、格好良くて、速いガジェットを作ってほしいと思いますし、ユーザーの方はガジェットだけでなく、iGoogleをどんどん使ってほしいですね」とエリス氏も期待を寄せている。
■いいサービスを作り出すコツ
次々とサービスを開発するグーグルだが、いい製品やサービスを開発するコツのようなものはあるのだろうか。エリス氏は次のように話す
「美術の話ですが、絵画を描く人にとって最も必要なことは、『見る才能』だといわれています。対象を見て、大切なところや構成が理解できなければ絵は描けません。それと似ていると思います。いくらコードが書けても、いくらプロジェクトマネジメントがうまくても、最初に製品やサービスを見て、そこに何が欠けているのか、あるいは何がいらないのか、そういったことを見る目がなければいけないと思います」
つまり、作ろうとしているサービスの本質を見抜く力が必要になるということだ。また、いいサービスを開発するには、自分が開発者でありつつユーザーであるという視点も重要だという。
「例えば、国際電話をかけるときに『何番を押せばいいのか分からない』という場合、ユーザーは『自分が悪い』と思うかもしれません。しかしそうではなくて、使い方が分かりにくいのはユーザーのせいではなく、やはりその製品やサービスの問題だと気付きました。ユーザーが製品やサービスをどのように使うのか考えて、さらに実際に使っているところを見て、ユーザーに使いやすい形に改善していくことが、いい製品やサービスを作るポイントだと思います」
ユーザーが使いやすいサービスを追求することは非常に重要な要素だ。しかし、対象となるユーザーを考えるとき、そのユーザーがパワーユーザーなのか、あるいは初心者なのかによって必要とする機能や見せ方は変化するのではないだろうか。幅広いユーザーがサービスを利用するグーグルでは、そういった多くのユーザーニーズに対応するのは大変なことではないだろうか。
「Gmailを見ると分かりやすいのですが、Gmailでは、マウスを操作して、どこをクリックすればいいのか、初心者にとっても分かりやすくデザインされています。しかし、パワーユーザーであればキーボードショートカットで操作することもできます。そういうふうに初心者とパワーユーザー両方に対応できるインターフェイスを備えています。そしてパワーユーザーでもユーザーインターフェイスが簡単であれば、その使い勝手を喜んでくれます」
■iGoogleとGoogleガジェットのこれから
日本でのiGoogleやGoogleガジェットの展開について、「今後も、開発者との交流を軸にしながら、システムを作っていきたいと考えています」というエリス氏。また、現在提供されている、自分が集めたガジェットや自分で作成したタブを友達に送る機能など、iGoogleを使ったユーザー間のコミュニケーション促進を考えているという。「せっかく集めたガジェットを1人だけで使うのはもったいないので、人に教えてあげられることを考えています」
さらに、パーソナライゼーションという部分にもこれまでと同様に注力する。iGoogleではタブを新しく作る際、タブの名前を「Recommendations」とするとユーザーの検索履歴から関連するガジェットを持ってきてくれるといった機能もあるという。
「ユーザーがもっと簡単に自分に合った情報が見られるようにと考えています。実際にユーザーに『何が欲しいですか』と聞いても、欲しいものが分からない場合もあります。それを探ってユーザーに紹介したいと思います」
幅広いユーザーにとっての使いやすさ。それがグーグルのサービスにおける数ある重要な要素の1つであることは間違いない。Webサービス、あるいはソフトウェア開発は、開発者自身が「自分が必要だから」という理由で始まることもある。自分にとって使いやすいだけでなく、ほかの人にとっても使いやすさを追求すること、それが「いいサービス」「いい製品」を目指すうえで1つの鍵になるだろう。
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