新人歓迎会、なのにトラブル? 波乱の予感……
ナレッジエックス 中越智哉
2008/3/17
■こんなときに電車まで止まるなんて
そんなわけで、しんじ君は昼食を取る間もなく現地に向かいました。ところが、悪いことは続くものです。現地に向かう途中の電車が、なんと踏切トラブルで止まってしまったのです。
しんじ君 | うわあ〜、なんでよりによってこんなときに……。順調にいってもギリギリだっていうのに、これじゃ間に合わないかなあ? どれくらいで復旧するんだろう? |
3分、5分と時間は過ぎますが、車内アナウンスは「もうしばらくお待ちください」と繰り返すばかり。復旧の見込みは、しんじ君たち乗客には、まったく見当がつきません。
しんじ君 | 困ったなあ……。でも、会議は緊急の招集だし、僕がいなくても協議を進めること自体はできるから、僕が遅れても、取りあえずはなんとかなるかな? |
そうこうしているうちに、電車が止まってから10分ほどがたちました。ラッシュアワーではないので、電車は比較的空いており、しんじ君も席に座って復旧を待っていました。これ以上復旧が遅れれば、おそらく会議の開始には間に合わないでしょう。このとき、しんじ君はあることを思い出したのです。
しんじ君 | そうだ! 鮫島さんに連絡しないと! |
そうです、しんじ君は入社してすぐに、打ち合わせ時間に遅れる連絡をしなかったために、麻根主任に怒られた経験がありました。それなのに、納品が済んで少し気が抜けていたのか、仕事に慣れて初心を忘れてしまったか……。しんじ君は「連絡する」こと自体を危うく忘れそうになっていたのです。
間一髪そのことに気付いたしんじ君は、いったん電車を降り、鮫島さんに電話をしました。
しんじ君 | 鮫島さんですか? 中山です。いま、そちらへ向かっているのですが、電車が事故で止まってしまってまして。 |
鮫島さん | え、そうなの? そうか、それは困ったな……。やっぱりしんじ君がいた方が、確認がしやすいし……。ちょっと、お客さんにいって、打ち合わせをずらしてもらうようにしてみるよ。その間にできる調査はこっちでやってみるから。 |
しんじ君 | 分かりました、ありがとうございます。 |
■対策会議、そして不具合の修正
電話を終えると、電車はその後すぐに動きだしました。降りた駅から再度連絡してみると、打ち合わせは30分遅らせることになったとのこと。しんじ君は無事、1時半からの打ち合わせに出ることができました。
協議の結果、その日は稼働を見送り、不具合の調査と対処に注力することになりました。「なるべく早くシステムを再開したいが、再開を急いでさらなるトラブルが発生することは避けたい」との顧客の意向からです。
幸い、鮫島さんが調査を進めていてくれたため、打ち合わせの場でおおよその対処の見通しはついていました。コード内容については、しんじ君がひととおり把握していたため、鮫島さんの推測をしんじ君がその場で確認し、顧客に説明することができました。
そして調査の結果、不具合が判明しました。結局、不具合はごくまれな内容のデータでだけ起こるもので、テストの際のデータでは再現しない内容だったのです。不具合の修正自体は、それほど時間がかかるものではありませんでした。
鮫島さん | ふう、まあ、分かってみれば、どうということはないんだけどな……。 |
しんじ君 | そうですね、でも、今日は焦りました。 |
鮫島さん | ああ、ご苦労さん。あ、そういえばしんじ君は懇親会の幹事があるんだろ? 幹事が仕事で引っ掛かって欠席でもしたら、新入社員が心配するぞ? |
しんじ君 | あ、そうでした。でも、いま戻れば十分間に合います。 |
鮫島さん | 後は、こっちのメンバーで片付きそうだから、しんじ君は戻っていいよ。 |
しんじ君 | はい、すみませんが、後はよろしくお願いします。 |
■来期の新人の無邪気な質問。しんじ君は?
しんじ君は会社に戻り、ほどなくして懇親会の開始時間となりました。
終始、和やかなムードで進んだ懇親会の最中。しんじ君の隣の席に座った新入社員が、しんじ君にこんな質問をしたのです。
新入社員 | 中山さん! あの、この会社の仕事って、楽しいですか。 |
しんじ君 | うっ……。うん、ま、まあ、楽しいよ、ハハハ。 |
思わず、一瞬答えに詰まってしまったしんじ君でした。仕事はもちろん楽しいに越したことはありませんが、楽しくない場面が多いのもまた事実。根が正直なしんじ君は、つい、そんなことを考えてしまったのかもしれませんね。
さて……。無邪気な質問をしてきたこの新入社員が、4月からしんじ君を悩ませることになろうとは、このときのしんじ君には知る由もなかったのです。
今回のインデックス |
しんじ君、新人懇親会の幹事に。なのに当日、システムトラブル! |
トラブル対応に向かうも踏み切りトラブル。どうなる? |
筆者プロフィール |
中越智哉●北海道出身。北海道大学大学院電子情報工学専攻修士課程修了。在学中はJavaとLinuxに熱中。卒業後、Javaの仕事にあこがれ、1999年にテンアートニ(現・サイオステクノロジー)に入社。Java の受託開発案件や教育事業、コンサルティングなどを幅広く担当した後、2006年2月に同社を退社。同年3月にナレッジエックスを設立。 JavaをはじめとするIT開発技術の教育に奔走する。趣味は自転車と草野球、そして毎日欠かさない耳かき。 |
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