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@IT自分戦略研究所

第2回 読者調査結果発表

8割の技術者がヒューマンスキル向上に前向き

小柴 豊
アットマーク・アイティ
マーケティングサービス担当
2003/10/10

 現代のITエンジニアにとって、給料よりも健康よりも大きな課題は“スキルアップ”……。@IT自分戦略研究所が2003年春に実施した第1回読者調査では、多くのITエンジニア読者から「十分な技術スキルが身に付いていない」「ビジネス/ヒューマン・スキルが不足している」といった、スキル向上に関する悩みを聞くことができた。

 ではITエンジニアが、今後身に付けたいと思っているスキルとは何か? さらにITエンジニアの内面に迫るべく実施した第2回読者調査から、その状況をレポートする。

Linux、セキュリティのスキル習得に強い意欲

 まずITエンジニアの業務と直結する技術分野について、読者が「現在保有している(身に付けている)スキル」および「今後身に付けたいスキル」を尋ねた結果が、図1だ。現在保有しているスキルでは、「Windows(システム)管理」「クライアント/サーバ(C/S)系開発」「Web系開発」「Visual Basic(言語)」などの項目が上位に挙げられた。これらを見ると、「Windows上でVisual BasicベースのC/Sシステム開発を経験してきたが、現在はWeb系開発の案件が増えている」といった、いまどきのITエンジニアのキャリア・パターンが浮かんでくる。

図1 テクニカル・スキルの保有状況(複数回答 N=512)

 一方、読者が今後身に付けたいスキルを見ると、「Linux(システム)管理」「セキュリティ管理」「オブジェクト指向分析/設計(OOAD)」「XML」など、現在の保有スキルとは異なる分野のものを習得したいという意思が感じられる。これらはいずれも今後のシステム構築/管理のかなめとされる技術分野であることから、将来を見据えて、自己研さんに励むITエンジニアの姿勢がうかがえる。

プロジェクト管理よりもコミュニケーション力を重視

 最近は、ITエンジニアも技術スキルだけではやっていけないといわれている。では技術が本分のITエンジニアにとって、技術以外に必要とされるスキルとは、何なのだろうか? そこで、ITエンジニアに重要なヒューマン・スキル/ビジネス・スキルを尋ねたところ、要求ヒアリング/提案/交渉などの「顧客コミュニケーション力」、および指導/相談/動機付けなどの「チーム内コミュニケーション力」が、要員配置/予算/スケジュールなどの「プロジェクト管理力」よりも重視されていることが分かった(図2)

図2 ITエンジニアに重要なヒューマン・スキル/ビジネス・スキル(複数回答 N=512)

 確かに複雑化、短納期化が進むソフトウェア開発の現状を考えると、コミュニケーション能力の優劣が、プロジェクトの成否に大きな影響を与えることも多いだろう。一般にエンジニアといえば技術一筋の“職人”が連想されるが、これからのITエンジニアには、職人であると同時に“人間心理に敏感”でなければいけない。極めて高度なヒューマンスキル・セットが求められているようだ。

ヒューマン・スキル/ビジネス・スキル向上の手段とは?

 次に、上記のようなヒューマン/ビジネス・スキルを高めるために、今後実践したい行動内容を尋ねた結果が、図3だ。

図3 実践したいヒューマン・スキル/ビジネス・スキル向上の手段(複数回答 N=512)

 全体の過半数が支持したのは、「現職で業務経験/場数を踏む」ことだった。ここで、読者のコメントを引用しよう。

読者のコメントより
●技術スキルは本人の意思と努力次第で身に付けられるものだが、ビジネス・スキルはこれまでの経験で左右される(28歳:テクサポ/QA)
●体系的に学習し実践することで身に付くテクニカル・スキルとは違い、ヒューマン・スキルは実践することで習得できるのだと思います。そのため、企業がヒューマン・スキルを意識的に高めるような育成方法を取らなければ、エンジニア個人の努力だけではなかなか身に付かない現状があるように感じています(26歳:システム運用・管理)


 例えば、新たなプログラミング言語を学ぶ場合、入門書を読み、Webサイトや雑誌で情報を集めつつ、サンプル・プログラムを動かしたり、先人の作ったパターンやフレームワークを活用することもできるだろう。それに比べてヒューマン・スキルやビジネス・スキルの場合は、それなりに情報源があるとはいえ、万人に当てはまるようなスキル向上のパターンがあるわけではない。特にコミュニケーション力となると、現実に遭遇するさまざまな相手に合わせて対応を変えざるを得ないだけに、最終的には“場数”を踏むことで、自分なりの成功法則をつくっていくしかないのだろう。

 とはいえ、場数を踏みたくても、その場が与えられない人は、どうすればいいのだろうか? この点で示唆に富むコメントをもう1件、紹介しよう。

読者のコメントより
●転職活動を通じて文書作成能力、コミュニケーション力、そのほかビジネス・スキルを磨くことができました。仕事の合間を縫っての面談(スケジュール管理)、不安やプレッシャーの上手なコントロール(ポジティブ思考)、コンサルタントや面接官へのアピール(プレゼンテーション力)など、プロジェクトの推進にも通じることが多々あり、非常に実践的な訓練になると思いました(34歳:システム分析/設計)

 このようにスキル向上の場を自らでつくり出し、意識的にトレーニングを積むことが、ヒューマン・スキル/ビジネス・スキル向上の近道となるのではないだろうか。

IT関連資格の取得状況は?

 さて今回の調査では、スキルアップと関連して読者のIT関連資格の取得状況も調べているので、その結果を紹介していこう。まず国家/公的資格を見ると、現在は読者の40%が「基本情報技術者」を取得しており、「ソフトウェア開発技術者」「初級システムアドミニストレータ」がそれに続いている(図4緑棒)

 また読者が今後取得を目指している資格では、「テクニカルエンジニア(TE)ネットワーク」「テクニカルエンジニア(TE)データベース」の人気が高いほか、「プロジェクトマネージャ」「情報セキュリティアドミニストレータ」など、幅広い分野において資格取得の意向が高まっていることが分かる(図4黄棒)

図4 国家/公的資格の取得状況(複数回答 N=512)

 続いて、ベンダニュートラルな資格の取得状況では、現在のところオージス総研/UMLモデリング推進協議会による「UML技術者認定」の取得率が、比較的高くなっている(図5緑棒)。今後の取得意向では、「XMLマスター」のポイントが、ほかの資格よりも頭1つ抜け出す結果となった(図5黄棒)。XMLは図1の「今後身に付けたいスキル」でも上位に挙げられており、スキルアップ意欲と資格取得意欲が連動している格好だ。

 また、UML関係では、引き続き「UML技術者認定」の取得意向が高いものの、OMG/UML教育研究所による「OMG認定UML技術者資格」への関心度も、それに迫る勢いだ。OMG認定UML技術者資格試験は、2003年11月10日に開始される予定のため、UML資格の“標準”の座をめぐって、先行するUML技術者認定との関係がどうなっていくのか、注目される。

図5 ベンダニュートラル資格の取得状況(複数回答 N=512)

 最後にベンダ資格の動向を見ると、現在は「オラクルマスター」の取得率が最も高く、「マイクロソフト認定技術者(MCP)」がそれに続く状況となっている(図6緑棒)。また、今後の取得意向では、「サン技術者認定資格:Java」のポイントが大きく伸びている。サンの資格にはJavaとSolarisの2種類があるが、特定のプラットフォームに限定されるSolaris資格よりも、汎用性の高いJava資格に読者の興味が集中している点が、現在のオープン化の流れを象徴しているようだ。

 オラクルマスターの取得意向については、同資格が2003年10月に大きく制度改定されることを踏まえて、別質問で尋ねてみた。その結果、「制度改定前に、現行の資格を受験したい」との回答が9%、「制度改定後に、新資格を受験したい」が26%となり、取得意向が引き続き高い資格であることが確認された。

図6 ベンダ資格の取得状況(複数回答 N=512)

 なお、@IT自分戦略研究所では、人気の高いテクニカルエンジニア(ネットワーク)やXMLマスター、オラクルマスターなどに関する模擬試験問題「ITトレメ」を、毎日メールで配信している。興味のある方は、ぜひご利用いただきたい。

調査概要
調査方法 @IT自分戦略研究所からリンクした Webアンケート
調査期間 2003年7月25日〜8月22日
有効回答数 512件

 

 

 

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