ストレスと上手に付き合うために
ITエンジニアにも重要な心の健康
第5回 カウンセラーはどう選ぶ?
ピースマインド
カウンセラー 谷地森久美子
2004/1/29
エンジニアにとっても人ごとではないのが心の健康だ。ピースマインドのカウンセラーが、毎回関連した話題を分かりやすくお届けする。危険信号を見逃さず、常に心の健康を維持していこう。 |
■必要な情報はどこにあるのか
インターネットの検索機能を使うとあっという間にさまざまな情報を入手できるような時代になりました。ところが膨大な情報量のため、かえって自分にとって一番必要な情報は何であるのかが分からなくなり、途方に暮れてしまうことはありませんか。
例えば歯の治療をしたいと思っても、近所のどの歯科医がいいのかは、なかなか分かりにくいものです。それが「カウンセリング」という分野であればなおのことでしょう。
今回紹介したいのは、どのようなカウンセラーを選び、そしてどのように活用すればいいのか、という点です。いくつかの留意点をポイントにして紹介しましょう。
■留意点1:カウンセラーの資格・肩書き・実力
カウンセラーの資格で認知度が高いのは、日本臨床心理士認定協会が認定する「臨床心理士」です。
しかし、資格を持たなくてもきちんとしたトレーニングを受け、実力のあるベテランのカウンセラーも多く存在します。その一方で、専門的なトレーニングは受けずに、自己流のにわか勉強で看板を出している人が存在するのも事実です。
では、どこに注意すべきか。すべてがそうだとはいえませんが、カウンセラーのプロフィールに注意してほしいと思います。面接の際に用いる療法に関して「これらが全部できます」とメニューを並べているような場合は、ちょっと注意した方がいいかもしれません。
カウンセリングは“癒し(いやし)”や“心のお薬”となる半面、扱い方を間違うと劇薬と同じで、時として傷になることがあります。さまざまな療法・肩書きはある種の社会的なランクになるかもしれませんが、それよりも自分の器を知って地道に人とかかわるカウンセラーの方が、専門家として信用できることが多いと思います。
スーパーバイザーがいるかどうか、どのようなところで臨床経験を重ねてきたのかなどのチェックポイントはありますが、お互い生身の人間同士です。通常の人間関係と同様に、ご縁や相性も選ぶ際の大事な要素です。その点もチェックしてください。
■留意点2:カウンセラーの探し方
(A)公的な機関に問い合わせをして探す方法
「第3回 心の専門家の探し方と活用法」 での探し方の応用です。子どもに関することであれば、子どもの学校のスクールカウンセラー、地域の教育センターや青少年センターに問い合わせます。ドメスティック・バイオレンスやセクシュアル・ハラスメントの問題などについては、地域の女性センターを活用することをお勧めします。保健所などは地域の医療機関の情報には詳しいですが、仕事の悩み、職場の人間関係、夫婦およびそのほかのカップルの問題などであれば、次の(B)以降を参考にしてください。
(B)医療機関以外でのカウンセリングを望む場合
都市部では、タウンページや街の看板などで、民間の相談室の宣伝を目にすることが多くなりました。民間の相談室の場合、例えば私が所属しているピースマインドでは、カウンセリングルームの紹介、どんなときに相談してみるとよいか(具体的な分野別相談内容)、登録しているカウンセラーのプロフィールや専門分野、カウンセラーからのメッセージなどをWebサイトで公開しています。
また、対面の面接のほか、電子メールや電話でのカウンセリングを行っている相談室もあります。その場合、カウンセリングを初めて受ける人や遠方の人でも、利用しやすいシステムになっています。
なお、最近は臨床心理学科のある国立・私立大学が、地域に開かれた教育機関を実践すべく、一般向けにカウンセリングサービスを提供しています。ただし専門家育成の目的もあるため、教官の指導の下に、勉強中の大学院生(修士課程以上)が担当カウンセラーとなる場合もあります。
■留意点3:システムや料金などについて
病院で受ける場合も、そうでない場合も必ず予約をしてください。問い合わせをしながら、事前に自分に合うかどうかの雰囲気をつかんでいくことも活用のポイントです。
病院でのカウンセリングは、保険がきく場合とそうでない場合があります。保険の範囲内の場合は、1回のカウンセリングは30分以内となります。しかし初診(初めての診察)だけは、1時間程度取ってくれる良心的な病院もありますので、それも事前に電話で問い合わせてみるとよいでしょう。医師の診察は保険がきいても、カウンセリングは自費扱いにしている病院では、1回50〜60分の面接時間で、民間と同等の料金(5000円〜)がかかる場合もあります。
民間相談室の面接室の場合は、前提として“治療機関ではない”ため、診断・診察・治療(薬の処方も含む)が必要な方は、同時並行で医療機関と連携して行うことになります。
例えば、パートナーが浮気をしていることが分かり、何とかしたくて相談室を訪れた人がいたとします。その人はその事実を知ったショックで不眠症状が表れており、本人の希望もあって病院で睡眠導入剤などを処方してもらうことになりました。
■留意点4:病院と民間相談室の違い
さて、ここからがポイントです。病院は「治療」(=症状の軽減・消失)がメインです。“どんなに自分が大変な状況であるか”よりも、「症状に対する具体的な対処」が優先されます。つまり、まず症状を治すことが病院の目的なのです。
しかし、上記のような夫婦の問題などの場合は、病状として症状が表れていようがいまいが、「いま起きている問題はどう考えればいいのか」「2人はどうしていくのがよいのだろうか」「取りあえず、これまでためていた思いを吐き出したい」「(ご本人自身は)結論は分かっているが、それを選ぶまで、もう少し時間が欲しい」といった個々の状況を分析することが、解決につながる第一歩となることがあります。
こうしたことを受け入れるのは、民間の相談室の方が適している場合があるわけです。ただし、治療が必要な場合は、先ほど述べたように、病院と連携していくこともあるのです。
なお、個人開業の面接室に限っては、話し合いによって相談者の経済状況に応じた料金設定を取り入れているところもありますので、そのことも含めて相談してみるといいでしょう。
カウンセリングを通して、普段は、なかなか触れることの少ない自分の大事な部分や未解決なことに取り組むわけですから、前段階としての「カウンセラー探し・選び」はとても大事なこととなります。これまでの記事を参考にしながら、よいご縁(カウンセラーや医師)を自分の力でつかみ、選んでいくという自覚が何よりも大事なのです。
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