第9回 仕事を抱え込まず手際よくさばく方法は?
樋口研究室
山本隆之
2009/7/3
過酷な環境にさらされながら、常にコンピュータ並みの正確さを要求されるITエンジニアたち。メンタルヘルスをうまくコントロールするには? 樋口研究室の「ITコーチ」たちが、現場でいますぐ使えるメンタルヘルス改善のワザを教えます。 |
■実行されないアドバイス
仕事が忙しいときほど、新しい仕事が増える。皆さん、そう感じることはありませんか? 納期はすぐそこに迫っている。そこに別の急ぎの仕事が入る。いつまでたっても減らない仕事の量。こういうときは、身も心も疲れてきて、パワーが出なくなってしまいます。今回は、途切れなく押し寄せる仕事を、停滞させずにテンポよくさばいていくためのヒントをお話ししたいと思います。
ここに、ITサービス会社で、技術リーダーをしているAさんがいます。Aさんの悩みは、たくさんの仕事を抱えてしまうこと。いつも余裕がなくて、何をしているのか分からないままに、どんどん仕事がたまっていくそうです。
そういうAさんに、わたしはテンポよくアドバイスするように心掛けています。そこで役立つのがメールです。わたしはパソコンや携帯電話を使って、素早くアドバイスを送るようにしています。
先日、Aさんから急ぎの相談メールが届きました。メールの表題に「忙し過ぎます!」と書かれています。一体、Aさんに何が起こっているのでしょうか。Aさんのメールを開いてみると……。
「あるミドルソフトを使っていて、不具合が多くて困っています。毎日、残業の連続で、どう乗り切ればいいでしょうか……」
ミドルソフトが動かないと、業務プログラムも動かないので大変です。このまま放っておくと、仕事がたまってしまうな。わたしはすぐにAさんに、ミドルソフトメーカーの専門家にアドバイスをもらうと乗り切れるよ、そんなアドバイスを送りました。すぐにAさんから、返信がありました。
「なるほど、専門家がいれば安心ですね。分かりました。ありがとうございます!」
これが、Aさんの1つ目の仕事でした。
それから1週間後、またAさんからメールが届きました。メールの表題に「時間がまったく足りません!」と書かれています。メールの内容を見てみると……。
「部長からいまのプロジェクト状況を会議で報告しろ、そういう指示がきました。忙しいときなのに報告日は来週です。どう乗り切ればいいでしょうか……」
忙しいときに限って、会議が多くなる。これはわたしにも経験があります。でも上司の指示なので無視することもできません。わたしはすぐにAさんに、日中の会議を夜に変更してもらって乗り切るように、そうアドバイスを送りました。Aさんの返信がすぐに戻ってきて、こう書かれていました。
「なるほど、夜だと日中の仕事に影響が少ないですね。チャレンジしてみます!」
これが、Aさんの2つ目の仕事でした。
それから1週間後、再びAさんからメールが届きました。今度は「緊急事態発生!」という表題です。メールを開いてみると……。
「チームのリーダーがインフルエンザになって、会社に出勤できません。わたしがリーダーの代行をしろといわれましたが、どうやって乗り切ればいいでしょうか……」
リーダーさんがインフルエンザとは運が悪いですね。わたしはAさんに、上司と相談して誰か応援を呼べば乗り切れる、そうアドバイスを送りました。以下がAさんの返信です。
「なるほど、応援がくれば大丈夫ですね。やってみます!」
これが、Aさんの3つ目の仕事でした。
さてここで、わたしは嫌な予感がしました。アドバイスはテンポよくできているのですが、ひょっとして、Aさんから、また緊急メールが飛んでくるかもしれない。いつになったら、Aさんの仕事はなくなるんだ?
案の定、1週間後のことです。Aさんからメールが届きました。メールには「無理です!」と書かれています……。何がダメなのでしょう。内容を見てみると……。
「過去に担当したお客さまのプログラムで不具合が出ました。わたしが作りましたが、仕様書を作っていなくて……。どうやって乗り切れば……」
これがAさんの4つ目の仕事でした。
でも、なんだか妙だぞ。確かに、Aさんは仕事を抱えていきますが、わたしはAさんにテンポよくアドバイスしています。アドバイスがうまくいっていれば、とっくに仕事は終わっているはず。ひょっとしてAさん、アドバイスを、1つも実行していないのでは。わたしは、そう思ったのです。
「動く」「確かめる」「報告する」 |
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