第2回 XMLを体系立てて学ぶには
穴沢悦子、木村達哉
2006/7/15
■XMLを体系立てて学ぶことの意義
「XMLは、かかわっている案件で必要になったときにでも勉強をしよう」と思っていないだろうか。
しかしながら、前回の「XML、学びの第一歩」で紹介したように、XMLを活用するかどうかを判断・提案するのは、お客さまではなく、XMLの採用によって最も恩恵を得る、開発者側のITエンジニアの方が多い。「お客さまは神様です」と、お客さまの指示だけを待っていると、XMLを使えばよりよいシステムを作れたのに、それを知らなかったばかりに拡張性の乏しいシステムを構築して、後々自分が困るということにもなりかねない。
そういう意味で開発エンジニアはあらかじめ、きちんと体系立ててXMLを勉強しておいてほしいと思う。XMLでは何ができて、何ができないのかを正確に把握しておいていただきたい。
「私には時間がないのでXMLのメリット、デメリットを簡潔にまとめて教えてくれ」と思うかもしれない。しかし、XMLを体系立てて学習したエンジニアでないと、担当するシステムでXMLを使うべきかどうかを、自信を持って答えられないのではないだろうか。
人からの受け売りでXMLのメリットを聞いた人は、総論としてXMLのメリットは述べられても、実際の案件で本当にXMLを採用して大丈夫かどうかの判断は難しい。スタイルシートを使えばHTML化できることは分かっていても、XSLTの機能の限界、システム開発にどのくらいの時間がかかるのか、などが分からなければ、XMLを利用すべきかどうかの判断もできないからである。
■XMLを自習する
◆初めて学ぶ
まったくの初心者がいちからXMLを学ぶ場合にお薦めしたいのは、『10日でおぼえるXML入門教室 第2版』だ。扱っている内容は、入門というほど低レベルの内容ではないので、10日ですべてを理解できるかどうかは個人差があると思う。サンプルファイルがすべてダウンロードできるようになっており、実際にPC上で確かめながら学習を進められるので、初心者には理解しやすい内容となっている。
10日でおぼえるXML入門教室 第2版 山田祥寛著 翔泳社 2004年10月 ISBN:4798104876 2625円(税込み) |
◆「XMLマスター:ベーシック」を取得する
XMLを初めて勉強する人で、XMLマスターの資格も取得したいという人にお薦めしたいのは、『XMLマスター教科書 ベーシック V2』だ。本書はXMLマスター:ベーシック受験者に向けた書籍だが、現役のXML講師が執筆し、解説が丁寧で分かりやすい。体系立ててXMLを勉強するにはよい1冊である。付録のCD-ROMにはサンプルファイルが収録されている。演習問題も比較的簡単な問題から始まっているので、無理なく学習を進めることができるだろう。
XMLマスター教科書 ベーシックV2 日立システムアンドサービス 森田浩美、中原敬子著 翔泳社 2005年5月 ISBN:4798109096 3360円(税込み) |
◆試験合格+現場での実力UPを目指す
試験対策に加え、XMLの実践力を身に付ける際にお薦めしたいのは『徹底攻略XMLマスター ベーシック問題集V2試験対応』。手応えのあるXML SchemaやXSLTの問題も多く、現場での実力を付けるのによい問題集だ。単に机上で解くだけではなく、実際にPC上で作成し、デバッグすることをお勧めしたい。
徹底攻略XMLマスター ベーシック問題集 V2試験対応 福内かおり著、ソキウス・ジャパン編 インプレス 2005年7月 ISBN:4844321420 3360円(税込み) |
◆上級レベルを目指す
より深くXMLを勉強したい人にお薦めなのが『改訂版 標準XML完全解説(上)・(下)』。XMLの仕様を英語で読むのはなかなか面倒なため、筆者はこの書籍を仕様検索代わりの辞書として利用することが多い。
改訂版 標準XML完全解説(上) 日本ユニテック 中山幹敏、奥井康弘著 技術評論社 2001年3月 ISBN:4774111864 2394円(税込み) |
改訂版 標準XML完全解説(下) 日本ユニテック 中山幹敏、奥井康弘著 技術評論社 2001年10月 ISBN:4774113026 3129円(税込み) |
◆XMLマスター:プロフェッショナルを取得する
「XMLマスター:プロフェッショナル」の取得を目指す人には、『XMLマスター教科書 プロフェッショナルV2』をお薦めしよう。Javaのコードで書かれたサンプル問題を多数解くことで、試験対策としてだけではなく、実際のアプリケーション開発を行う際に必要なプログラミングスキルを身に付けることができる実践的学習書だ。
XMLマスター教科書 プロフェッショナルV2 日立システムアンドサービス 高嶌裕、森田浩美、迫直美、野田洋平著 翔泳社 2005年11月 ISBN:4798109150 4200円(税込み) |
■講習会を活用する
仕事の合間に勉強する場合、自習書を購入して読破するには、最低3週間から1カ月程度の学習期間が必要となるだろう。また、強い意志がないと途中で挫折してしまったり、1冊読み終えるのに半年かかってしまうこともある。
短期間に集中して業務に必要なレベルまでのXML技術を確実に習得したい場合には、講習会を受講することをお勧めしたい。1日(または2日間)単位にコースが分かれているので、書籍で理解できなかった部分のみを受講してみるというのもよいと思う。なお、講習の情報は、インフォテリアのWebサイトを参考にしてほしい。
◆「XML基礎」講座(1日間)
XMLの文法解説と簡単なXML文書作成実習からスタートし、XMLの特徴、XML関連技術の概要、XMLの利用分野などが解説される基礎コース。
◆「XML SchemaによるXMLデータの定義」講座(1日間)
XMLのスキーマ定義言語の主流であるXML Schemaを理解し、実際にスキーマを定義できるように集中して学習する実習付きの講習会。
◆「XSLTによるXMLデータの活用」講座(1日間)
XMLデータを有効活用するにはXSLTスタイルシートが必須。このXSLTスタイルシートが作成できるようになることを目標とした、ちょっとハードな実習付きの講習会。
◆「XML実践演習」講座(1日間)
実在業務を想定した2つの課題を1日かけて実習するハンズオンコース。付録で付いてくる練習問題集は、XMLマスター:ベーシック受験にも役立つ。
◆「XMLアプリケーション開発I」講座(2日間)
JavaによるXMLアプリケーション開発の基礎スキルを身に付けられる実習付きの講座。DOM、SAX、JAXBという3つのAPIを学ぶことができる。APIごとの利点、欠点などを理解できるので、どのような場合にどのAPIを使用すべきかも判断できるようになるだろう。
◆「XMLアプリケーション開発II」講座(2日間)
「XMLアプリケーション開発I」の知識をベースにして、より実践に近いケースでの応用実習を行うことにより、XMLアプリケーション開発の現場での実践力を養う講座。
◆「Webサービス/SOAPによるシステム連携」講座(2日間)
SOAPメッセージの構造とSOAPを利用したWebサービスの構成を理解したうえで、実際にApache Axisを用いて、WebサービスサーバとWebサービスクライアントの開発ができる技術を習得する実習付き講座。
■「XMLマスター」を取得するメリット
資格よりも実務経験が大事という考え方もあるが、XMLを使ったシステムの開発に携わったことがある人が、必ずしもXML関連技術を総合的に身に付けているとは限らない。XMLの技術スキルを証明する手段として、また勉強の成果を確かめる腕試しとして、資格取得にチャレンジしてみてもいいのではないだろうか。
XMLマスターの認定内容、受験方法などについては、XML技術者育成推進委員会のWebサイトで確認できる。
筆者プロフィール |
穴沢悦子:インフォテリアで、2002年1月よりXMLの教育事業に従事。XML技術者の育成活動を積極的に推進している。 木村達哉:インフォテリアでXMLの教育テキスト開発の取りまとめ担当者として、コース開発やインストラクタ教育などに従事。 |
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