第1回 すべてのチームビルディングは「共感」から始まる
ピースマインド
カウンセラー 石川賀奈美
2010/5/31
■同じ目線に立つ、そうすれば人は話を聞いてくれる
さらに「正論」について考察します。正論はそもそも「上から目線」であることが多いのではないでしょうか。
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カウンセリングでは、カウンセラーが助言を行う割合はそれほど多くありません。「こうしたらいい」ということを伝えても、「それができないから相談に来ている」相手にとって、アドバイスは苦しさを増加させるだけになりがちだからです。
「この人は自分と同じ目線に立っている」と相手が感じたとき、初めて、人は提案を聞いてみようと思うのです。「話す内容」ではなく、「目線」が重要、ということです(と、このような文章を書いていること自体が上から目線になりかねないですね!)。
■「共感する」だけではなく「共感される」ことも大事
相手が話す「目線」について考えると、相手のいる場所はどこなのか、つまり「相手に自分はどう見えているのか?」ということが気になってきます。
相手はどこに違和感を持っているのか、どこでうなずいているのか、相手はどうしたいと思っているのか――。これらの「相手が自分に共感するポイント」を探すことが必要です。ポイントを確認したら、「ここまではOK。では、その先をどうするか」と、話の方向性を定めていきます。相手に寄り添った話の進め方をすると、相手に伝わりやすくなります。
■自分と相手の関係を見る「目」を養う
共感を鍵に、伝えたい相手の思考に沿ってみること、相手が自分に共感できるポイントを探すこと――これらを実行するときに必要となるのが、“目”です。
「第1の目」は、自分の状態(どれくらい相手に共感しているのか、どんな目線でいるのか)を観察する目。
「第2の目」は、相手の状態を見る目。相手はどのくらい心を開いてくれているのか、どこに共感ポイントがありそうなのか。
そして、自分と相手との両方を含んだ“関係”を客観的に見る「第3の目」が大切だと思います。「押して駄目なら引いてみよ」という言葉は、両者の関係性を見ながらやってみよう、とアドバイスしているのではないでしょうか。
■「自分も相手も悪いわけではない」――第3の目で得る視点が鍵
「関係を見る目」があると、コミュニケーションがうまくいっていないときに「相手ばかりを責める」「自分ばかりを責める」という状態を防げます。
「なんであいつは分からないんだ!」と、相手を責めてしまう場合、相手が変わらない限りコミュニケーションは進まない、ということになってしまいます。相手を変えるのはかなり困難です。結果として行き詰まった感じになり、相手とのコミュニケーションがストレスになってしまうでしょう。
逆に「自分の考えは間違っているのだろうか」「自分のいい方が悪いのだろうか」と自分を責めてしまう場合、自分に対する自信がどんどんなくなっていって、やはりストレスが高まってしまいます。
「関係を見る」に当たっては、「自分も相手も悪いわけではない」ということが前提になります。関係の在り方を変えていこうとするとき、「誰が悪いのか」という悪者探しでなく、「何があれば分かり合えるのか」「伝わるのか」と、前向きに考える可能性が出てくるのです。
もし話の合意点が見えていなくても、「相手を否定しているわけではない」というこちらの姿勢が不思議と相手に伝わり、やがて突破口が見えてくるものです。
「説得」というスタイルが必要なときもあるでしょう。しかし、チームビルディングという点から考えると、仕事の中で行うコミュニケーションそのものを「共感的に心掛けていく」ことが、信頼を醸成するプロセスとなります。そしてこの「信頼」が、チームとして成長していくための「基礎」となるのです。
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