第2回 オープンマインド――チームがまとまらないときの処方箋
ピースマインド
カウンセラー 石川賀奈美
2010/6/30
チームビルディングとカウンセリングには共通点がある。「人の話をきちんと聞く」「相手の立場になって考える」――口でいうのは簡単だが、実行するのは難しい。訓練を受けたプロカウンセラーからカウンセリングで使うコミュニケーションスキルを学び、メンバーとの信頼関係構築、チーム内のモチベーション維持、すみやかな情報伝達のために生かそう。 |
■「メンバーが打ち解けてくれない」と悩むPM……
プロジェクトマネージャのSさんは、最近憂うつそうな顔をしています。聞いてみると、「メンバーのMさんと気持ちに距離があるような気がして、仕事がやりにくい」とのこと。
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「Mさんは、表だって反抗的だというわけではありません。指示したことはきちんとこなしてくれます。ただ、どうにも打ち解けないというか、気軽に仕事を頼みづらいのです。そのため、つい前からいるメンバーに頼んでしまいます。仕事量に差が出てしまっているため、まずいとは思っているのですが」
Mさんは後からプロジェクトに参加したので、Sさんと仕事をし始めてからまだ日が浅いのだそうです。
人と人との「心地よい距離感」には個人差があります。「一気に距離を詰めればいい」と一概にはいえません。しかし、1つの目標に向かって一定期間を共に働くうえで、「一体感」は必要不可欠です。一体感を持つチームとして働くためには、マネージャ側が「距離を縮める工夫」をしなくてはなりません。
距離を縮めるための鍵となる考え方として、今回は「オープンマインド」を取り上げます。
■開かれた心と姿勢――「オープンマインド」
「オープンマインド」とは、固定観念にしばられずに相手を認め、自分についても正直に表現できる「開かれた心や姿勢」のことです。
ばらばらな状態のチームに一体感やまとまり感を形成したいなら、メンバーが持っている「心の垣根」を越えていくことが必要です。そんなとき、オープンマインドを持つことは、非常に大事です(マネージャだけに限らず!)。では、オープンマインドでいるためには、具体的にどうすればよいのでしょうか。
メンバーとの距離を縮めるためにマネージャが行いたいポイントは、以下の3点です。
(1)活躍の場をつくる
(2)否定を受け入れる
(3)自分を開示する
これらのポイントを実行するに当たって大事なことは、「特定の価値観に偏らないこと」です。
●(1)活躍の場をつくる:「自分の居場所がある」と感じてもらう 新しくメンバーが加わった場合、まずはそのメンバーに「自分の居場所がある」と感じてもらいましょう。
「これは自分の仕事だ」という役割分担がしっかりしていること、そして「この人はこの仕事をしている」という事実がほかのメンバーから十分に認知されていることが大切です。要するに、「組織になじむための後方支援をするよ」ということがメンバーに伝わり、相手の心に「安心感」が生まれればよいのです。
マネージャが具体的にやることとしては、
- 1対1で向き合っている時間に、仕事の進ちょくを聞くこと
- 会議で仕事について報告してもらうこと
などが挙げられます。これらのことができるようになったら、相手が得意なこと(仕事でも趣味の分野でも、どちらでも構いません)を、チームで話題にできるといいでしょう。
●(2)否定を受け入れる: 否定されたとしても相手を否定しない
仕事に慣れてくると、新しいメンバーは既存のやり方やマネージャの考え方に不満を持ったり、改善を要求したりする場合があります。マネージャとしては、自分の方針や能力を否定されたと感じるかもしれません。しかし、すぐに反応することは禁物です。むっとしてもまずはひと呼吸して、気持ちを落ち着けましょう。
話を聞ける姿勢を整えたら、「どういう点からそう思うのか」と、きちんと相手の話に耳を傾けてください。そして、内容にかかわらず、話をしてくれたことについて感謝の気持ちを伝えます。不満や改善要求は、「相手が1歩踏み込んできた」と受け止められるからです。メンバーがマネージャを試している場合もありますが、この場合は「ネガティブなことを伝えても受け止めてくれる人」と認識されていると考えてみましょう。
「話を聞く姿勢を持つこと」と「要求を受け入れること」は違います。話を聞くことはすなわち、「その人がそう考えたことを認める」ということです。これは、第1回「すべてのチームビルディングは『共感』から始まる」で取り上げた「共感的な態度」で、「同意すること」とは異なるものです。
話の「内容」に同意できなくても、「話し手」を否定しない。これが、カウンセリング時にカウンセラーが取る態度の基本です。マネージャの方も、このことを心がけてみると何かしらの変化があるかもしれません。
さらに、持ち込まれた事柄に対して「相手や自分がどのようにかかわれるのか」「どうしたら新たなものを生み出せるのか」といった“問い”を言葉にできたら、相手と同じ未来を眺める視点が持てるでしょう。
話を聞くだけでは足りない。自分のことも話そう |
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