第3回 優れたPMは、プログラマの相談にすぐには解決策を示さない
ピースマインド
カウンセラー 石川賀奈美
2010/7/29
■解決案をすぐに出さない
なぜ、すぐに解決策を示さず、相手の気持ちを聞いた方がいいのでしょうか。それは、「相手が自ら解決案を模索する可能性」をつぶさないためです。
第1回「すべてのチームビルディングは『共感』から始まる」で取り上げたように「共感の姿勢」を持ったうえで、こちらがあたかも相手を写す「鏡」になったかのように相手の話を受け止めて、相手に返しましょう。そうすることで、相手の中で「気付き」が起こり、さらに「こうしてみよう!」という次の1歩が生まれます。
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経験豊かなマネージャが考える「こうしたらいい」というアドバイスは、確かに的確かもしれません。しかし、先に解決案を出してしまうと「あなたには解決する能力が足りない」という暗黙のメッセージを与えることになります。それでは、相手が成長する力を発揮する機会を奪ってしまいます。
人の感じ方は本当に人それぞれ。何が一番大事な問題なのかは、本人しか分からないのです。聞き手はまず、その人が自分なりの解決の道筋をたどれるよう「支援する」ことが重要です。
■「悩むことはダメじゃない」というメッセージを出す
悩んでいる気持ちをしっかり聞くことによって、相手に「悩んでいることはOK。悩んでいるあなたはダメではない」というメッセージが伝わります。すると、相手の心に安心感が生まれ、自信のなさが和らぐように感じます。
そうすれば、自分なりの解決策を模索できるようになります。このようなプロセスでマネージャの支援を得た場合、メンバーはマネージャに大きな信頼感を持つでしょう。
■実際の聞き方の手順
では、部下から相談を受けた場合、どのように話を聞けばいいのか、具体的な「聞き方の手順」を紹介します。やり方としてはとてもシンプル。「話を受け止める」→「『あなたの話をこう聞いたけれど、合っていますか』と確かめる」を繰り返します。
(1)相手が感情面を話せる場をつくる。体の構えを相手に向ける。うなずく。あいづちを打つ。笑いでごまかさない。
(2)相手の話を繰り返し、確認の質問をする。区切りがつくところで、まとめを入れる。
例「ミスが多くなって注意されたんだね」「それは〜ということだろうか」「これまでの話を聞くと、XXXがうまくいかなくて○○がしんどいということなんだね」
(3)感情をくんだ言葉を掛ける。相手の身になって、「どんな感情だろうか」と推し量る。
例「自信がなくなって、やっていけるか不安なのかな」
上記のステップを繰り返しながら、話を整理していきます。そのうえで、「じゃあ、どうしようか」と解決の模索へと進めていきます。
とはいえ、1回で解決までたどりつけない場合もあるでしょう。ある程度の時間で区切って「今日はここまで聞いたけど、あとの点は来週また話し合おう」としてもよいと思います。
●注意点
健康についての不安などの話の場合(眠れない、食欲がない、めまいがするなど)は、相手がどう思っているかを聞くことも大切ですが、産業医や専門医への相談につなげることを最終的には優先します。相手の意思を尊重しつつ、場合によっては「君の体が心配だから医師の診察を受けてほしい」と明確に伝える必要があります。
話し合いの時間を取っても、なかなか相手が話しだせないこともあります。そんなときは、せかさず「いいにくい話なのかな」とか、相手のため息に対して「そんなふうにため息をつきたくなるようなことがあるのかい」など、やんわりと話に水を向けてみてください。
質問を使う場合は、尋問調にならないようにしましょう。「いつから?」「なぜなんだ?」と矢継ぎ早に聞いてしまうと「話したくないところまで探られるかも」と、相手が警戒心を起こす可能性があります。
相手の気持ちを聞くことは、相手を尊重することにつながります。相手の考え方が未熟であっても、相手を尊重したうえで考え方を話し合ったり注意したりすると、相手の納得感が変わってくると思います。信頼関係をつくるというのは、こうしたことの積み重ねなのではないでしょうか。
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