プロカウンセラーに学ぶチームビルディング

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第6回 メンバーとプロマネの「話がかみ合わない」正体と対処法

ピースマインド
カウンセラー 石川賀奈美
2010/11/4

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会話が「平行」か「交差」しているかを確認する

 自分の自我状態を意識できたら、次は他者との交流について考えてみましょう。

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●「平行なやりとり」の会話例

メンバー:「レポートを明日提出します」(A)

マネージャ:「了解。3時の会議で使うよ」(A)

●「交差するやりとり」の会話例

メンバー:「レポートを明日提出します」(A)

マネージャ:「誤字脱字は許さないぞ」(P)

 上記の「平行なやりとり」の方では、A(大人)の客観的な報告に対して、同じくAの状態から答えを返しているので、スムーズに続きます。

 一方、「交差するやりとり」では、マネージャはP(やや批判的な親)の状態から答えを返しています。こうなると、コミュニケーションが途切れ、メンバー側に不満が残ります。

 もし、誤字脱字が多い相手に注意を喚起したいのであれば、いったんAで受けてから、あらためてPで言葉を掛けることを勧めます。

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 逆に相手が、「リーダー、困ったことが起きました!」とC(子ども)の自我状態から声を掛けてきた場合は、「どうした? 相談に乗るよ」と、まずPの自我状態から返事をした方が、相手は受け止められたように感じるでしょう。後から、「それで、どの部分が問題なんだ?」と解決に向かうAの姿勢で臨めばよいでしょう。

 「自分のいったことが受け止められた」とメンバーが感じると、次にマネージャ側がAの状態で話せば相手もAになりやすくなります。いきなり「落ち着けよ」とAの状態でいうと、落ち着いていない状態をメンバーに意識させることになり、かえって冷静になりにくいかもしれません。

メンバーがよく使う自我状態を把握して、かみ合わない会話を予防する

 上記のように、「相手がいまどの自我状態から話し掛けてきているのか」に着目すると、対応しやすくなるでしょう。また、相手がどの自我状態から発言や行動をすることが多いか、普段から意識してみてください。

 冒頭のAマネージャとEさんのやりとりでは、「楽しく会話したい」というC(子ども)の自我状態から話したマネージャに対して、Eさんが客観的にA(大人)の自我状態で答えを返しているため、状態が交差してしています。これが「話がかみ合わない」正体です。Eさんに対しては、仕事中心の話題を振るか、「笑い話で聞いてほしいんだけどね」などの前置きをするがいいかもしれません。

 メンバー同士を組み合わせる際、メンバーがそれぞれどのような自我状態を使うのかを考慮するのも1つの手です。いつも気が合う同士で組ませるのではなく、違う相手と組ませてみましょう。そのとき、それとなく「この相手には、まずこう対応してみたらいいよ」などと助言してみるといいかもしれません。

 仕事の中身に関する話し合いでは、お互いAの自我状態で話せると解決に進みやすいでしょう。しかし、そればかりでは、ぎすぎすした職場になりがちですし、ときにはCのわいわいとした感じも必要です。「面倒を見たり見られたり」といった先輩後輩の関係も、両者の成長にとって必要です。

 それぞれのメンバーのいい面を伸ばすために、前回の「ストローク」とともに活用してみてください。

参考文献

  • 滝口陽子、稲垣行一郎『サクセス・ブック 自己実現の道を開く本』産能大学出版部、1994年。
筆者プロフィール
profile  ピースマインド 石川賀奈美
 臨床心理士、産業カウンセラー。米国フォーカシング・インスティチュート認定フォーカシング・トレーナー。現在、ピースマインドで成人を対象に幅広い相談に応じるとともに、定期的に企業に赴き、社員のカウンセリングを行う。高齢者虐待防止に関連し、在宅介護者のカウンセリングにもかかわっている。著書に『SEのためのうつ回避マニュアル 壊れていくSE』(翔泳社刊、分担執筆)がある。「出口のないトンネルはない。しばし、一緒に光を目指して歩いていきましょう」

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