第7回 メンバーを評価する前に、“自分フィルター”を点検しよう
ピースマインド
カウンセラー 石川賀奈美
2010/12/8
■気に入らない相手は、自分の“裏の”鏡
前述のSマネージャのように、自分の良いと思う部分(自己イメージ)が物差しになり、自分とは違う行動を取る他者に対して否定的になる場合があります。また、自分が苦手だと思う行動ができる人に対して、相手の価値を値引きしてしまう場合もあります。例えば、Sマネージャが「冷静な判断や粘り強さを持つことが苦手」だと自分で感じていたとすると、これらの特性を低く見てしまう可能性があります。
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時々、「仕事をしない同僚のことを考えると、手が震えるほどの怒りがわく/吐き気がして会社に行けない」という相談事例があります。仕事をしない人に対して否定的な気持ちが起きるのは自然なことですが、誰もが身体症状が出るほどの強烈な怒りを感じるわけではありません。このような強い反応を示すのは、人一倍無理をして頑張っている人です。
「自分はこんなに頑張っているのに」
「本当は自分だってやりたくないし、我慢しているのに」
「仕事をしないなんて、自分は不安でできないのに」
こうした心の声の裏返しが、手が震えるほどの怒りとして表れるのです。上記のような相談の場合、初めは「相手をどうしたら変えられるのか」というところからスタートします。しかし、怒りの正体を丁寧に見ていくと、「頑張り過ぎている自分」が見えてきます。結果として、相手への怒りは「自身の働き方」を見直すきっかけになっていきます。
「気に入らない人がいる」ということは、気に入らない特性に強い関心を示す自分がいる、ということなのです。気に入らない人は自分の心の“裏”を映す鏡といえるでしょう。
■“自分というフィルター”を点検しよう
人が人を判断したり評価したりする際、価値観やイメージが介入することは避けられません。
マネージャなど、公平な見方が必要な立場の場合は、まず自分がどういうフィルターを持っているのかをよく知っておくことが大切です。自分の傾向が分かっていると、人を判断しなければならないときに“その判断には限界がある”と考える慎重さにつながります。
評価は、相手の「次の成長」に向けての材料として生きてきます。成長につなげるためには、
- 評価結果は現時点でのものであり、できる限り公平に実施したこと
- しかし、この評価が相手のすべてではなく、これからの変化を期待していること
を伝え、共に頑張ろうといえる機会にしたいものです。
なお、こうした信頼関係を築くうえでは、日ごろから自分に対してあまり「こういう自分はダメだ」と思わないことです。「ダメなところもあるけど、いいところもある」ぐらいの方がいいのです。自分に厳しい人は他者にも厳しい見方になりがちです。成長への“のりしろ”を残しておくのがポイントです。
■参考文献
- 樺旦純『底の底まで「相手の心」がわかる本――オモテの心理、ウラの心理』大和書房、2000年(ソフトカバー版は2008年)。
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