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プロカウンセラーに学ぶチームビルディング

プロカウンセラーに学ぶチームビルディング術

第7回 メンバーを評価する前に、“自分フィルター”を点検しよう

ピースマインド
カウンセラー 石川賀奈美
2010/12/8

チームビルディングとカウンセリングには共通点がある。「人の話をきちんと聞く」「相手の立場になって考える」――口でいうのは簡単だが、実行するのは難しい。訓練を受けたプロカウンセラーからカウンセリングで使うコミュニケーションスキルを学び、メンバーとの信頼関係構築、チーム内のモチベーション維持、すみやかな情報伝達のために生かそう。

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PMから見て、マイナス評価になるメンバー

 プロジェクトマネージャのSさんが、メンバーの業績評価について相談にいらっしゃいました。

 「Mさんというメンバーが、なかなか積極的に発言してくれないんです」

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 「もっと自分の意見を出してほしい」と以前から伝えているにもかかわらず、変化が見られないとのことでした。Mさんはチームリーダー格のメンバーで、期待が高いだけにSマネージャは不満のようです。「どうしても、高い評価を付けられない」といいます。

 そこで、Sマネージャがメンバーだったころの話を聞いてみました。Sマネージャは、自分の提案を積極的に出すタイプで、その姿勢が認められていたそうです。

 「ああ! 自分が通ってきた道だけを“良い”と思い過ぎていたかもしれませんね」

 Sマネージャは、当時の話をしながら気付いたようです。

 もう一度、Mさんのことについて聞いてみました。「彼は普段から冷静で、厳しいスケジュールでも仕事を遅らさず、頼れる存在」なのだそうです。「熱さとかガッツが足りないとマイナスに評価していたんですが、必ずしもそうとはいいきれないですね。プロジェクトが火を噴いたとき、的確な解を導くうえで彼の存在はとても重要です。自分の物差しばかりで考えず、もっといろいろな方面から評価しないといけないですね」と、Sマネージャは語りました。

自分の傾向をチェックしておく

 評価は、プロジェクト内容や状況、メンバーの業績との兼ね合いで考えることが必要ですが、「メンバーがどのような役割を果たしているか」という広い視点で考えることも大切です。

 Sマネージャのように、成功を経験してきたマネージャほど「良いメンバー像」が偏っている傾向があります。人を評価する立場にいる人は、自分が良いと思うイメージ、良いと思えないイメージについて、あらかじめ点検しておくことをお勧めします。

 カウンセラーも、自分が経験してきたことと重なる相談を受けた場合、思い込みが作用して適切な対応ができない場合があります。そのため、カウンセラーはトレーニング過程で自分の心理的問題を整理しておき、自分の経験をまずは脇に置いて相手の話を聞くようにしているのです。

わたしは誰? 自己を知る「フー・アム・アイ・テスト」

 偏りをチェックするためには、まず自分自身についてどのくらい理解しているか、次のテストを使って確認してみましょう。

 ※下記は、テストの取り組みやすさを考慮したうえで例を挙げています。

●フー・アム・アイ・テスト

 (1)まずは紙とペンを用意します。

 (2)「わたしは……」で始まる短い文章を、思いつくままに20個、個条書きにします。事実だけでなく、抽象的なことでも構いません。例えば、下記のような事柄です。

  • 「わたしはSEだ」

  • 「わたしは男性である」

  • 「わたしは結婚している」

  • 「わたしは人見知りだ」

  • 「わたしは空気のようだ」

 (3)20項目書けたら、それを眺めてみます。どんなことが書かれていますか? また、書いている途中にどんなことを考えましたか?

 このテストは、アメリカの心理学者クーニとマックバーランドが考案した「フー・アム・アイ・テスト」と呼ばれるもので、“Who am I ?”――「わたしは誰か?」と自分に繰り返し問い掛けることで、自分が持っている自己概念を言葉に表すテストです。

・20項目、すらすらと書けましたか?

 最後はひねり出すような感じになった人もいるでしょう。

・書くにつれ、書いた内容はどのように変わっていきましたか?

 最初は名前や所属、卒業した学校、職種などの事実が多いかもしれません。その後「○○が好きな人です」「△△なことをする人間です」「×××な性格です」など行動面、内面的なことに触れる内容になっていったのではないでしょうか。15個を超えると、より深い内面の欲求や悩みが出てきて、自分ながら驚くこともあるでしょう。どの内容が良い/悪いということはありません。

・20項目全体を眺めてみて、どんなことに気が付きましたか?

 会社や仕事のことがほとんどで「自分は仕事人間だなあ」と思った人はいますか? 行動面の記述が多い場合は、判断の価値基準を「何をしたか」ということに置いているのかもしれません。

 これらの20項目が、あなたが自分に抱いている自己イメージです。この自己イメージが、日常生活における判断や行動に無意識のうちに影響しています。では、どのように影響するのでしょうか?

誰もが持つ“自分フィルター”、評価者は必ず確認  

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自分戦略研究所、フォーラム化のお知らせ

@IT自分戦略研究所は2014年2月、@ITのフォーラムになりました。

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これからも、@IT自分戦略研究所をよろしくお願いいたします。