第9回 プロジェクトの最も手ごわい敵は「べき」という思い込み
ピースマインド
カウンセラー 石川賀奈美
2011/1/25
■最も手ごわい「こうあるべき」
さて、思い込みの中で最も手ごわいのが“〜であるべき”や“すべき”という発想です。自分には、どんな“べき”があるか点検してみてください。
「リーダーとはこうあるべき」「父親はこうあるべき」――それは正論かもしれません。理想が高いのは素晴らしいことです。“こうあるべき”と考えるからこそ、人は向上するというのも事実です。
しかし、自分に“こうあるべき”を使ってしまうと、そうでないときに「自分は間違っている」「俺は駄目人間だ」と感じてしまいます。自分を駄目だと感じているとき、それを乗り越えようとするエネルギーは湧きにくくなります。
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いまある姿をそのまま認めること、そこから次の一歩は始まります。「いまの状態はOK」と認めたうえで、少しずつ「こうなっていこう」というイメージを持つとよいでしょう。現状で、自分が描く“こうあるべき”の姿につながる部分はきっとあるはずです。そこを膨らませていくのです。
他人に対しても同様です。相手に対して“こうあるべき”と思っていると、それとは違う行動や態度を相手が見せたときに不満や憤りを感じます。“こうあるべき”を脇に置いたとき、きっと見えるものは変わってくると思います。
“べき”を脇に置く方法として、以下を試してみてください。
- 相手に対する不満を別の新しい視点で解釈してみる
(仕事が遅い→自分のペースに合わせてほしい)
- 新しい発想をするためにジョークやユーモアを使う
(仕事が遅い→「のんびりくん」と心の中で呼ぶ)
- 不満に新しい名前を付けてみる
(「オレの爆弾」など)
- いまの自分と相手の関係や在り方を、第三者になったつもりで見てみる
(映画のシーンを見るように一歩引いて見る)
自分に合うやり方がきっと見つかると思います。
■解決志向のアプローチの要点
このアプローチは、部下の問題解決援助に応用できます。キーポイントは次の2点です。
(1)問題を抱えている相手の考えや行動、価値観をまず認めてあげる
あなたが解決を支援していることが伝わると同時に、相手が自分の力を使って行動を起こせるように責任感を持たせられます。
(2)上司=あなたが“変化は可能である”という前提を持つ
「何かいいことがあった?」と聞くよりも「どんないいことがあった?」と良い変化があったことを折り込んだ聞き方をすると、部下を良い変化へと導くことになります。
このアプローチ全体の重要なポイントは「行動」です。研究者のビル・オハンロンは、このアプローチの原則を次のように挙げています。
- いまやっていることに効果がなければ、何か別のことをする
- 行動を変えた後の結果に注目する
- うまくいったらその行動を続け、うまくいかなかったらまた次の新しいことにトライする
行動を重視することには「測定が可能」というメリットがあります。目標に近づいたことや変化したことを、行動を通じて確認できるため、さらに変化を生みやすくします。
また、オハンロンは問題解決へのアプローチを「銃を撃つときの例え」で表現しています。
構えて→発射→それから狙いを定める
「準備して、とにかくやってみて、その後で望んだ結果が得られるまで修正する」という意味だそうです。普通は「構えて→狙いを定めて→発射」ですね。
まずは小さな行動からスタートする。「人は変わる力を持っている」と信じることが、このアプローチの核なのです。
■参考文献
- ビル・オハンロン著、阿尾正子訳『考え方と生き方を変える10の法則―原因分析より解決志向が成功を呼ぶ』主婦の友社、2000年
- 宮田敬一編『ブリーフセラピー入門』金剛出版、1994年
筆者プロフィール | ||
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