第10回 自称・非コミュの人に試してほしい「伝え返し」技
ピースマインド
カウンセラー 石川賀奈美
2011/3/11
チームビルディングとカウンセリングには共通点がある。「人の話をきちんと聞く」「相手の立場になって考える」――口でいうのは簡単だが、実行するのは難しい。訓練を受けたプロカウンセラーからカウンセリングで使うコミュニケーションスキルを学び、メンバーとの信頼関係構築、チーム内のモチベーション維持、すみやかな情報伝達のために生かそう。 |
■「コミュニケーション下手」は生まれつき?
なんとか顧客とのトラブルを収めたマネージャのSさん。原因はメンバーの顧客とのコミュニケーションミスにあったとのこと。
「彼は、技術に関しては、すごくいいものを持っているんだけどなあ……」
どうしたらそのメンバーのコミュニケーションスキルを上げられるのか、悩んでいるようです。
メンバー自身は「人と話すの苦手なんですよね」の一点張り。チームの中には「人と話すのが苦手だからエンジニアを選んだ」という人もずいぶんいるようです。
この言葉からは、“コミュニケーションがうまいか下手かは、性格によるもの。だから変えられない”という前提があるように感じられます。
コミュニケーションスキルは、確かに人柄や雰囲気に左右される部分もありますが、“1つのスキル”ととらえられます。スキルであれば、コツを押さえながら習得していくことが可能です。今回は「コミュニケーションスキルの向上」について考えます。
■コミュニケーションそもそも論
そもそも、「コミュニケーション」とは何でしょうか。
カウンセラーのよく使う言葉でいえば「関わり」です。2人以上の人がいて、伝えたい情報(言語だけに限りません)がやりとりされる状況のことを「コミュニケーション」と呼びます。「分かち合い」とも言えるでしょう。
「コミュニケーション」の語源は、ラテン語の「COMMUNIS(コムニス)」です。この言葉には「共通の」「同じものを持つ」という意味があるそうです。
プロジェクトにおいて、同じ目的に向かう共通意識は何より大切なものです。チーム内はもとより、社内関係者や顧客、協力する他社の関係者との間で、「共通の意識」は必要不可欠です。そのため、チーム内にコミュニケーションスキルをアップしてほしいメンバーがいる場合は、当人に「コミュニケーションスキルは、プロジェクト完遂に必要なスキル」ということを理解してもらうことから始めましょう。
さて、「コミュニケーションスキルは重要」と頭で理解できたとしても、すぐに実践できるわけではありません。原因は、“会話以前の段階”にあります。
信頼関係ができている間柄の方が、交渉や依頼が成立しやすいのは当然です。自分にとって必要な情報がしかるべきタイミングで入ってくるかどうかも、人間関係次第と言えるかもしれません。
■コツ(1):日々、信頼できるイメージをつくる
最初は「この人なら信頼できそう」というイメージをつくることから始めます。そのためには、毎日のささいな行動に気を付けましょう。
- 相手がどういう対応であれ、日常のあいさつは欠かさない
- 約束したことは守る
- 小さなことでも感謝の言葉を伝える
- 笑顔(!)
「えっこんなこと?」と思うかもしれませんが、これらの行動は「あなたの存在を認めていますよ」というイメージを相手に与えています。相手をきちんと認識して、日常的に行動で示すことが、口でいうよりずっと効果があるものです。
■コツ(2):両者のイメージを擦り合わせる
話をしている最中、人はそれぞれ話の内容に関する「イメージ(枠組み)を持っています。これを忘れて話を進めてしまうと、後で解釈の違いによる擦れ違いが生じて、トラブルの原因になります。
例えば、エンジニア側が「お客さまは最高の性能を望んでいるはず」と考えて提案しているとき、顧客側に技術的な知識があまりない、あるいは「こんなふうに実現してほしい」という具体的なイメージがすでにある場合、すれ違いが起こります。
たとえ、顧客側よりエンジニア側の提案が優れていたとしても、コミュニケーションがうまくいかない可能性が大きいです。なぜなら、顧客側に「自分の話を理解してくれなかった」という不満が残ってしまうからです。
トラブルを防ぐには、以下に注意しながらイメージを擦り合わせます。
- 言葉の定義、相手の言葉の使い方のくせに注意する→似たような言葉を使っていたとしても「同じ意味だろう」と思わないようにする
- 話の途中で、いまどのようなイメージを形成しているか、質問で確認する
- ポイントとなりそうな事柄については、視覚的な表現や具体的な表現で言い換える
「イメージの擦り合わせなんて、そんな面倒くさいことはいちいちやっていられない」――そんなふうに思う人がいるかもしれません。イメージの擦り合わせ作業を飛ばしてしまいがちな理由としては、下記のようなことが考えられます。
- 単純に忙しくて手間をかける余裕がない
- 「自分は正しい」と強く思いがちである
特にポイントとなるのが、「自分は正しい」という思考です。論理的な思考力があって仕事ができる人ほど、「自分は正しいのだから相手もそう思うはず」と無意識に思いがちです。「それ、違うんじゃない?」と他人に指摘されることが少ないため、自分ではなかなか気付きにくいかもしれません。
「伝え返し」と「問い掛け」を駆使する |
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