仕事に役立つビューチェンジのノウハ

第8回 「異動」や「転職」と並ぶ「起業」という選択肢

樋口研究室
樋口節夫

2010/5/14

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■ 異動と転職は似ている

 異動や転職は「自分のやりたい仕事」というビューで見ると制限がある。

 異動しても、転職しても、やりたい仕事を手に入れることはできるだろう。

 しかし、会社である限り、その仕事が5年先、10年先もあるかどうかは分からない。

 会社に在籍する以上、時には自分のやりたくない仕事をしたり、望まないキャリアを歩まないといけないケースがあるだろう。

 もし、この状況を改善して、自分のやりたい仕事をしたい、あるいは望むキャリアを歩みたいと思ったら、会社や組織にとらわれない選択肢、つまり「起業する」「独立する」という道が現実味を帯びてくる。

■ クリエイティブな作業をしたいと感じているエンジニア

 多くのITエンジニアは、「新しいものを創造する」「生み出す」など、クリエイティブな仕事や作業をしたいと考えている。

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 起業や独立は、とてもクリエイティブな作業だ。自分で仕事(事業)を作って、その仕事を自分で実行するからだ。

 だがITエンジニアは、起業や独立となると二の足を踏む。なぜかというと、仕事を作る(起業)となったとたん、対象が「コンピュータ」から「人間」に変化するからだ。

 起業というのは顧客(人間)に満足してもらって、その対価としてお金を得る。それを意識して行う行動にほかならない。

 コンピュータは決められたことを正確にこなすが、しばしば人間は想像を超えた動きをする。ITエンジニアはこのギャップの大きさが苦手なのだ。

 だが、人と付き合うのが苦手という理由で起業や独立をあきらめてしまうのはもったいない。

 起業や独立は、自分の頭と行動力を駆使して、新しいもの(仕事や商品)を生み出す作業だ。自分の力でモノを作り、自分の力でお金を生み出す。それが成功するのも失敗するのも、すべてが自分のパワーにかかっている。

 だから、起業や独立はクリエイティブであり、夢があり、納得感がある。人間の満足度を向上させる要因がすべてそろう、キャリアアップの素晴らしいテーマなのである。

■ 「異動」や「転職」と並ぶ「起業」という選択肢

 起業や独立はハードルが高く感じるかもしれない。だが、それほど心配することはない。わたしたちは起業や独立とよく似た行動を毎日、実行しているからだ。

 「よく似た行動? そんなこと、してないよ」と思った人は、「オペレーションビュー」という考え方で、自分の行動を分析してみるとよい。

図 キャリアアップを目指す時に使えるオペレーションビュー

 「キャリアを作る」とは、職業を基盤とした「行動の設計図を作る」という作業だ。この作業は、わたしたちがワープロやプレゼンテーションソフトなどのドキュメント作成ツールを利用し、「移動(ムーブ)」「複写(コピー)」「作成(クリエイト)」という操作(オペレーション)をしてドキュメントを作る作業と似ている。

1. 移動(ムーブ)ビュー

 移動という操作は、自分の仕事の場所を、今の課(部門)から別の課(部門)へと移す行動(異動)に相当する。

2. 複写(コピー)ビュー

 複写という操作は、自分の仕事の場所を、今の会社から別の会社に求める行動(転職)に相当する。

3. 作成(クリエイト)ビュー

 作成という操作は、自分の仕事の場所を、新しく作り出す行動(起業)に相当する。

 オペレーションビューでキャリアアップの行動を眺めると、「起業」や「独立」は、ハードルの高い行動ではないことが分かる。「『異動』や『転職』と『起業』は同じレベルの話」であることを感じてほしい。

 「異動」や「転職」について考えるときは、「起業」や「独立」も選択肢に入れて行動しよう。バランスのいいキャリアアップの道を歩めるはずだ。

筆者プロフィール
樋口節夫●樋口研究室の代表。テクニカルに強い、ヒューマンにも強い、ビジネスにも強い――これらのバランスがいい人間が一番強い。これをモットーに人材育成を進めている。

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