仕事に役立つビューチェンジのノウハ

第10回 ついつい「責任逃れ」――その悪癖を直すために

樋口研究室
飯田佳子

2010/7/23

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■ 誠実に仕事をする――それが責任から逃げないということだ

 政治の世界では、選挙前の公約が後で変更になったとか、問題を起こした議員が責任を取るために辞職した、という話を聞くが、あまりいい印象を受けない。恐らく、「逃げた」とか「責任逃れだ」と感じるからだろう。政治家に求められるのは、やるといったことに誠実に対応することであり、もし何かの理由で約束を守れないときは、理由も含めてみんなに分かるように、きちんと説明することではないだろうか。

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 これはわたしたちの仕事の世界でも同様だ。サービスを誠実に提供することが大切なのであって、失敗したらその理由をきちんと説明して謝ることが大切だと思う。

 Aさんが誠実に仕事に取り組んでいるかというと、そうは思えない。また、うまくいかない場合、その理由をきちんと相手に説明していないところにも問題がある。

■ 仕事をするときの、3つの大原則

 Aさんは仕事をするとき、何事も及び腰になる。だから、積極的でなかったり、逃げているように見えたりする。これを改善するためには、どうしたらよいだろうか。

 まずは、相手がどういう理由で自分にその仕事を頼んでいるのか、突き止めることが必要だ。手いっぱいなので仕事を分担してほしいと思い、面白くない仕事を頼みにくる人も、中にはいるだろう。内容だけを見ると、自分にとってはメリットのない仕事かもしれない。だが、それを引き受けることで、相手も喜んでくれるし、自分への評価も高まるだろう。仕事の結果や質を重視することも大切だが、それ以前に、何のためにその仕事を引き受けるのか、その理由を明確に理解しておくことが大切だ。

 次に、とにかく精いっぱい、誠実にその仕事に取り組むことが重要だ。時には頼まれた仕事が面倒くさいものであったり、やりたくない仕事であったりして、誠実に取り組む気持ちが起きないかもしれない。そんなときは、その仕事が一生涯続くわけではない、と考えよう。モチベーションの維持には、こうした自分の心のコントロールが欠かせない。

 最後に、仕事の成果は、しっかりと相手に説明できるようにしておくこと。場合によっては失敗もあるだろうが、失敗した理由をきちんと説明できれば、相手も納得してくれる。成果を相手にどう届けるか、というところまで考えないといけないのだ。

■ いまの仕事は誰のために、何のためにやっているのか

 Aさんの事例に当てはめてみよう。まず、いまの仕事は誰のために、何のためにやっているのか、確かめることから始める。

 例えば、前述の社内会議なら、たくさんの出席者に何を伝えるための会議を主催しているのか、しっかりと突き止めることが必要だ。

 そのためには、日々の会議で何も発言せず、ただ出席しているだけでは駄目だ。仕様書の確認や進ちょくレポートなど、相手が何を求めているのかを確かめるチャンスは、自分が出席している会議や打ち合わせの場にしか存在しないからだ。

 また、人に頼って楽をすることばかり考えていてはいけない。急場しのぎばかりだと、相手の意図を見逃してしまう。これが続くと、次に難しいことに出くわしたとき、また逃げたくなるという悪循環が起きる。

 筆者は、これから新しくAさんに与えられる案件や追加の指示について、しっかりとその指示の目的や意図を把握するよう考えてほしい、とお願いした。

 Aさんは筆者の指示を守って仕事に取り組むようになった。「いままで漠然とやっていた仕事にも、すべて意味がある」とAさんは語る。昇格試験まで、あと半年。なんとかこの成果を、昇格試験の合格という結果で獲得してほしい。

■ 点から線、線から形をイメージして仕事を引っ張っていく

 作業の一端を担っていたメンバーが、リーダーやサブリーダーになったとき、職務の責任から逃げてばかりでは駄目だ。大切なことから逃げずに、しっかりと全体像をとらえて仕事を進めることが求められる。そんなときは、「点から線、線から形へのビューチェンジ」が使えるだろう。

 「点」で見ていた仕事をつなげていき、それがどういった成果の「線」上にあるのかを考える。そして、それがどんな「形」をした全体像を目指しているのかイメージする。

 このイメージどおりにチームを引っ張って、仕事を成功に導くのが、リーダーの役目なのだ。

図 点から線、線から形へのビューチェンジ

1. 点を見るビュー

 まず与えられた仕事(点)の内容や意図、目的を知る。

2. 線を見るビュー

 その仕事をつなげて(線にして)、作業のどの部分を受け持っているのか考える。

3. 形を見るビュー

 最終的に線が集まって、どんな成果や全体像(形)で完了するのかイメージする。

 じっくりと腰をすえて、全体像を見ること。それが、リーダーとして成功するために不可欠な視点である。

筆者プロフィール
飯田佳子●樋口研究室の認定ITコーチ。仕事と生活のバランスが取れて初めて、人間の品質もアップする。これを基本方針に、常に効果的なビューチェンジの方法を考えている。

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