第10回 ついつい「責任逃れ」――その悪癖を直すために
樋口研究室
飯田佳子
2010/7/23
リーダーには、重い責任がのし掛かる。時には逃げたくなるかもしれない。だが、仕事に誠実に取り組み、「逃げない」ことがリーダーには求められる。 |
リーダーになると、任される仕事は増えるし、責任の重い仕事も増えてくる。そんなとき、うまく気持ちを切り替えられないと、責任に押しつぶされ、そこから逃れることばかり考えるようになってしまう。
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逃げる前に、まずは相手(仕事・上司・会社)が自分に何を求めているのか、それをきちんと理解することが、良いリーダーになるための第一歩だ。今回は、リーダーとしての要素に欠けている人がステップアップするためのビューチェンジの方法をご説明しよう。
■ 「逃げる」リーダー
今回登場するAさんは、あるITサービス会社でプロジェクトリーダーを務めて7年目になる。Aさんは半年後に社内のプロジェクトマネージャへの昇格試験を控えており、樋口研究室でその対策を練っていた。
Aさんのテーマは、ずばり「逃げない」ことだ。「責任逃れ」「議論を避ける」「急場しのぎ」などの傾向があるのが自分の悪いところだ、とAさんは自覚している。これらは、リーダーがすべきではない行動だ。
例えば、こんなことがあったという。
● 事例1:責任逃れ
Aさんがある大きな社内会議の司会を任されたときだった。会議中に突然、音声が聞こえなくなってしまったらしい。会議は佳境に入っていたが、しばらく中断してしまった。Aさんは慌てて総務部門の責任者を呼び、復旧をお願いした。その後、出席者に謝ったのだが、そのいい方がまずかった。
「これはわたしのせいではない。総務の設備不足のせいだ」
大事な会議が中断してしまったことに対する、素直なお詫びの言葉が1つもなかったらしい。しかも、会議終了後、このハプニングについて上司への事後説明もしなかったらしい。Aさんは上司から「責任逃れ」の行動を強くたしなめられたという。
● 事例2:議論を避ける
Aさんは、他人と議論をするのが嫌いだという。議論をしても何も決まらないし、自分も相手も納得することはないから、結果的に時間の無駄だというのがAさんの主張だ。
だからAさんは会議の席で何も意見をいわない。上司からは、「議論から逃げないで、もう少し自分の思ったことをしゃべりなさい」といわれているそうだ。
● 事例3:急場しのぎ
自分ができそうもないことは、周りの同僚に手を貸してもらい、あまり努力せず急場しのぎで対応してしまう、というのもAさんの特徴だ。「要領がいい」ともいえるが、いつもこれでは技術が身に付かないし、不まじめなやつだと思われるかもしれない。もっと自分に自信を持って行動しろ、と上司にいわれているそうだ。
こうした「自分の悪いところ」を自覚しているAさんは、「昇格試験を受けても絶対に落ちる」と考えていた。
■ 「もっと責任の重い仕事が与えられれば……」
そこまで自分の行動が悪いと分かっているのだから、Aさんは何か改善策を取っているのだろうか。
Aさんの回答は、
- もっと責任の重い仕事を与えてもらう
- より経営や戦略に密着した会議に出させてもらう
- じっくりと腰を落ち着けて作業をしないといけない仕事に従事する
というものだった。逃げ場のない仕事を与えてもらって、乗り切らざるを得ない状況をつくれば、きっと自分の悪いところは直るだろう、とAさんは考えていたのだ。
これを聞いて、筆者は固まった。いまのような状態で、まったく逃げ場のない仕事を与えられたら、これまで以上に大変なことになるのではないか。それに対してAさんは、こう答えた。
「そのとおりだとは思うのだが、ほかにどうすればいいか、考えられない」
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