マイクロソフト最上位資格“アーキテクト”合格への道

荒井亜子(@IT自分戦略研究所)
2009/1/30

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インタビュー

 ドキュメント提出から約1カ月後に、米国でReview Boardがある。福井氏の試験会場はシアトルだった。Review Boardを行うボードメンバーは4人。すべてMCAの有資格者だ。(現在日本人のMCA取得者は福井氏を入れて2人しかいない。日本語でMCA試験ができない理由がここにある)。

 インタビューは4部構成になっている。

(1)ケーススタディのプレゼンテーション(45分)

 ドキュメントで提出したショーケースについて、ボードメンバー4人に対しプレゼンテーションをする。プレゼンテーションの内容、仕方が評価される。英語が得意でない人には通訳が付く。福井氏は通訳を付けた。「通訳とは試験前日に30分だけ打ち合わせを許可されました。ただし通訳は技術についてはご存じない方でした」(福井氏)。

(2)質疑応答(ボードメンバー1人につき15分、合計60分)

 プレゼンテーションの内容に対して、ボードメンバー4人がそれぞれ15分ずつ質問をする。1問1答なので、即答しなければならない。通訳は付かない。

 10分休憩

(3)インタビュー

 プレゼンテーションの内容とは関係なく、アーキテクチャについて広く質問される。質問は主に、ボードメンバーの得意分野から出題される。

(4)まとめ(5分)

 受験者はインタビューのラップアップとして、5分でまとめを発表する。

 (1)〜(4)を終え、受験者が退場した後、ボードメンバー4人が協議する。3人以上の賛成を得られなければ不合格。評価は4段階。上からExseeds(優れている)、mids(マッチしている)までが合格だ。結果通知と評価の内容が受験者に届くのは約2週間後。評価には、良かった点、悪かった点が詳細に書かれている。

得られるものは、名声か

 用意するドキュメントの分量やインタビューの時間を見ても、非常にハードな試験だといえる。福井氏がMCAを受けた理由は会社からの要請だった。世界22カ国の43拠点にオフィスを構え、約8000人のエンジニアを抱えるアバナードだが、昨年同社でMCA受験者として選抜されたエンジニアは14人。合格者は4人で、日本人は福井氏だけだった。厳しい試験だということは分かるが、福井氏がMCAを取得したことで新たに得られたものは何だったのか。そもそも、MCAを受験できる人の多くはすでに地位も給料も高い人が多いだろう。福井氏は「マイクロソフトのアーキテクト フォーラムで講師として呼んでもらえたり、エンジニアのコミュニティで高く扱っていただけるのは感じる」と述べる。金銭的な報酬とは違うが、技術者の中での尊敬が得られ、IT業界を引っ張っていくという認知や期待をされるということだろうか。

福井氏の今後の目標は、ビジネス視点とプロジェクトの成功

 MCA取得後の今後の目標を福井氏に聞くと2つ挙げてくれた。1つは、「ITアーキテクトの要素の半分はビジネス、もう半分がテクノロジ。もう少し、ビジネスサイドでメリット・デメリットをきちんと語れるようになりたい」というもの。ITアーキテクトは一般的に大規模プロジェクトで登用されることが多い。大規模なソフトウェア開発プロジェクトにおいてアーキテクチャと要件を策定する。経営上層部とも密接にかかわるため、テクノロジだけでなくビジネス的な知識・感覚も必要だ。

 もう1つは、ソフトウェア開発の成功だ。「ソフトウェア開発はまだまだうまくいかいないケースが多いのでそれを改善したい。開発プロセスだけでなく、コミュニケーションやチームビルドも含めて」(福井氏)。

 

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