井上:KLabの求めるエンジニア像を教えていただけますか。
天羽:わたしたちは次の2種類の人材を求めています。
1つは、「技術の本質に対して正面から向き合える人」。いまのWeb開発現場には、さまざまなフレームワークがあるため、ツールの使い方を調べて習得すれば、わりと簡単に開発を行えます。しかし、そういった経験を経てできあがるのは「ツール使いの達人」「検索の達人」でしかありません。わたしたちは、そういう「ツール使いの達人」ではなく、「ツールの中身をきちんと理解して実装できる人」を求めます。検索してもヒットしないようなツールのバグでも解決できる人です。普段使っているOSSなどの便利なツールを作ることができると、さらにいいですね。
もう1つは「ハイブリッドな活躍ができる人」。フットワークが軽くて、企画や営業、デザイナーの意図をしっかりと把握し、「エンジニアならではの視点」をプラスしながら開発を進められる人材を、非常に重視しています。特に、ソーシャルアプリは企画と連携したスピーディーな開発が必要不可欠です。そのため、ハイブリットな人材は非常に重要な存在なのです。
井上:就業時間の一部を自分のやりたいことに使える「どぶろく制度」について、お話を聞いたことがあります。非常にユニークですね。
天羽:はい、どぶろく制度では、就業時間全体の10%を、自由な開発時間に充てることができます。この制度は非常にうまく機能しています。書籍『【24時間365日】サーバ/インフラを支える技術』、repcachedやmakuosanといったOSSの公開、大手企業とのタイアップ商品が生まれています。実際のプロジェクトに昇格したものも、多数あります。先日は、iPad向けアプリ、コミックビューア(仮)がどぶろく制度から生まれ、TechCrunchのミーティングで社員が発表※しました。今後も、こういった活動をより活発にし、「エンジニアがやりたいことを仕事としてやれる環境」を提供していきたいです。
※:参考記事:「[jp] レポート:Startup Meeting vol.4 iPad登場で何が変わるのか?」
井上:天羽さんの、今後の野望について教えてください。
天羽:ITは、社会のあらゆる部分に浸透しています。エンドユーザーにとって、生活が豊かになるのは喜ばしいことです。しかし、もしITが既存の価値のリプレイスをするだけであれば、これまで既存の価値を提供していた人の仕事を奪い、全体の消費力を落とすことになってしまいいます。わたしは「リプレイス」ではなく、「ITならではの価値」を社会に浸透させたい。今後は新しい価値を提供するプラットフォーマーを目指します。また、「常に発信し続ける会社」としての体制を、より強化していきたいです。
井上:「常に発信する」会社とは。
天羽:KLabのエンジニアは皆「発信すること」を意識しています。わたしたちは積極的に社外勉強会を行い、資料をすべて公開しています。また、DSASを含めた社内のあらゆる技術もすべて公開しています。これらの技術は、まねしてもらってまったく構いません。なぜなら、「オリジナルのわたしたちは、まねに絶対負けない」という自負があるからです。
また、「発信」することは、エンジニアの成長に大きく役立ちます。頭の中にあるものを発信すれば、自分の知識が整理でき、どの部分が分かっていないかに気付けます。ですから、KLabの新卒エンジニアは必ず日報や週報を書きます。
井上:社内勉強会も盛んだと聞きました。
天羽:そうですね。うちの勉強会は「発信する人の成長だけを考えた勉強会」です。つまり、聞く人が知識を得て成長するのではなく、話す人が「プレゼンテーションすることによって成長する」ことを目指しているのです。毎回5人ほどのエンジニアが発表しています。「○○賞」を決めたりして、技術プレゼン大会のような感じで盛り上がっていますよ。
若くして執行役員になられた天羽さんに、KLabという会社、そしてエンジニアにかける思いについて、存分に語っていただけました。若手エンジニアが声を上げることで組織が動くこと、常に発信することを信念に、さまざまなオープン技術で世の中に貢献してきたこと、エンジニア1人ひとりが自由な裁量を得て、それを最大限に生かしながら仕事をしていること――すべてのお話が僕の胸を熱く、ワクワクさせるものでした。
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