学生時代の経験については、学業でもサークルでも、アルバイト、ゼミ、インターンシップ、留学、ボランティア……など、なんでも構いません。採用側が知りたいのは「経験そのもの」ではなく、その奥にある「思考様式」や「行動様式」です。すなわち、「この人は、特定の局面においてどのように考え、どのように行動する人なのか?」を知りたいのです。
例えばシステム会社であれば、こんな場面が起こり得ます。
「納期ギリギリで受注した開発案件。すでにスケジュールから遅れているのに、顧客から『納期をもう1週間、早めてほしい。できなければ次からは依頼しない』という注文が入った!」
こんなときにどう対応するのか。学生時代の実際の考え方や行動をヒアリングすることで、うまく対応できるかどうか、「期待できそう」か、「難しそう」なのかが見えてきます。
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面接官は、こうした「可能性」を、具体的な事例をひもとく中で解明しようとしています。判断ポイントは前述の3つ。いずれも、「ビジネスの場面でも経験し得る」ことです。自社で起こり得る場面を想定しながら、どんなふうに反応するのか、引き出しているのです。
「何かをやり切った」という話であっても、単に「役割だからやった」「やれといわれてやった」といった「受動的」なシチュエーションはあまり評価につながらないのが現実でしょう。そのような環境下では、いくら「努力した」「粘り強くやった」「行動力がある」とアピールしても、「役割なんだから、それくらいできて当然でしょ」で終わりです。あくまで、判断基準は「ビジネスレベル」ですから。
企業側としては「主体的に行動した」「自分が貢献できる役割を見つけてやり切った」という展開を期待したいのです。それがビジネスの現場で期待されることであり、皆さんを採用したいと思うポイントなのです。
新卒採用の場合、一般的に企業は学生の「素養」「資質」「伸びしろ」を判断するものです。しかし、IT/システム業界においては比較的、即戦力性を重視する傾向があります。そのため、「使えるコンピュータ言語は何か」「自分で何かしらのシステムを組んだことがあるか」といった質問を投げ掛け、単に「興味がある」レベルではなく、具体的な行動に落とし込むくらいの能動的な意欲やエネルギーがあるかどうかを確認します。
志望動機も同様で、単に「大手だから……」「技術力が……」「社員の印象が……」といった表面的なイメージだけでは厳しいのです。
という論法で、いかに自分がその会社・仕事に合っているか、「マッチング度合い」を示してほしい、というのが面接官の本音です。
最後に1つ注意。「わたしはコミュニケーション能力があります」と自己主張するのはやめましょう。コミュニケーション能力や論理思考力の有無は、聞き手があなたの話から判断するものです。
最後に精神面のお話です。一言でいえば、「社会人としてのマインド」を期待する、ということです。
社会人になれば自由時間が少なくなり、気の合わない人とも付き合わなければなりません。その前提をしっかり認識できているかどうか。厳しい局面でもいとわない精神的な強さがあるか。これらはいずれも、社会人として必要な資質です。
面接官が皆さんの経験談を聞く意図は、決して「何をしたか」という事実が知りたいからではありません。経験から結果に至る過程を通して、これら「社会人としての資質」を判断しているのです。
面接で聞かれるのは、大きく2点です。
1から面接官が知りたいのは、次の2点です。
単に体験談を聞きたいのではなく、同じ経験の中からいかに多くを学び取れる人間なのか、本人の「気付き」の深さと、将来の伸びる余地を判断します。
具体的なエピソードを通じて、どんな行動特性(意識せずとも発揮される強み)を持っているのか、それをビジネスでどのように生かせそうかを判断します。
2から面接官が知りたいのは、次の点です。
ユーザー目線しか備えていないような、単なる「ファン」を企業は求めていません。また、人気ランキングや社員の印象など、表面的なイメージだけに引かれる人も求めていません。入社後、「イメージと違った」と思われても困るのです。
どんな価値観/仕事観を持っていて、自社とどこが合うと考えているのかを面接官は知りたいのです。実際に仕事をすると大変だと感じる部分はあるでしょう。それでも「理念」や「やりがい」に共感する部分があれば、ミスマッチは起きないはずです。価値観のズレはないか、マッチングしているか、といったことを面接官は判断しています。
面接は確かに「選考の場」ではありますが、皆さんの「優劣を決めている」わけではありません。むしろ「自分に合っている会社かどうかを確かめるコミュニケーションの場」であるといえるでしょう。
ぜひ、面接官とのコミュニケーションを楽しんで、幸せに働ける会社を見つけていただきたいと願っています。
筆者プロフィール | |
新田龍(にった りょう) ブラック企業アナリスト、キャリア教育プロデューサー、大学講師、株式会社就活総合研究所 代表取締役、および株式会社ヴィベアータ 代表取締役。 |
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早稲田大学政治経済学部卒業後、ネット上で「ブラック企業」といわれる2社において事業企画、コンサルタント、人事採用職を経て独立。「すべてのはたらくひとをハッピーに」を目指し、これまで5000人以上の面接・カウンセリング経験、早稲田大学など20大学でのキャリア指導経験を持つ。著書に『人生を無駄にしない会社の選び方』、(日本実業出版社)がある。 連載:学生よ騙されるでない! ブラック企業の見抜き方 |
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