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面接官の視点と本音

第2回 「志望動機は?」の裏に隠された判断基準


新田龍
2010/4/28

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● 話の内容1/経験面

  • 主体的に目標を設定して、物事を「やり遂げた」「やり切った」経験がある

  • 困難やトラブルからも逃げずに「乗り越えた」「突破した」経験がある

  • 結果として、「努力する姿勢」が自然に身に付いている

 学生時代の経験については、学業でもサークルでも、アルバイト、ゼミ、インターンシップ、留学、ボランティア……など、なんでも構いません。採用側が知りたいのは「経験そのもの」ではなく、その奥にある「思考様式」や「行動様式」です。すなわち、「この人は、特定の局面においてどのように考え、どのように行動する人なのか?」を知りたいのです。

 例えばシステム会社であれば、こんな場面が起こり得ます。

 「納期ギリギリで受注した開発案件。すでにスケジュールから遅れているのに、顧客から『納期をもう1週間、早めてほしい。できなければ次からは依頼しない』という注文が入った!」

 こんなときにどう対応するのか。学生時代の実際の考え方や行動をヒアリングすることで、うまく対応できるかどうか、「期待できそう」か、「難しそう」なのかが見えてきます。

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 面接官は、こうした「可能性」を、具体的な事例をひもとく中で解明しようとしています。判断ポイントは前述の3つ。いずれも、「ビジネスの場面でも経験し得る」ことです。自社で起こり得る場面を想定しながら、どんなふうに反応するのか、引き出しているのです。

 「何かをやり切った」という話であっても、単に「役割だからやった」「やれといわれてやった」といった「受動的」なシチュエーションはあまり評価につながらないのが現実でしょう。そのような環境下では、いくら「努力した」「粘り強くやった」「行動力がある」とアピールしても、「役割なんだから、それくらいできて当然でしょ」で終わりです。あくまで、判断基準は「ビジネスレベル」ですから。

 企業側としては「主体的に行動した」「自分が貢献できる役割を見つけてやり切った」という展開を期待したいのです。それがビジネスの現場で期待されることであり、皆さんを採用したいと思うポイントなのです。

● 話の内容2/能力・知識面

  • 志望業界、会社、仕事への理解があり、何らかの即戦力性が感じられる

  • 自分自身の価値観、仕事観と結び付けた形で志望動機が説明できる

  • 論理思考力やコミュニケーション能力を、話の中で自然に感じ取ることができる

 新卒採用の場合、一般的に企業は学生の「素養」「資質」「伸びしろ」を判断するものです。しかし、IT/システム業界においては比較的、即戦力性を重視する傾向があります。そのため、「使えるコンピュータ言語は何か」「自分で何かしらのシステムを組んだことがあるか」といった質問を投げ掛け、単に「興味がある」レベルではなく、具体的な行動に落とし込むくらいの能動的な意欲やエネルギーがあるかどうかを確認します。

 志望動機も同様で、単に「大手だから……」「技術力が……」「社員の印象が……」といった表面的なイメージだけでは厳しいのです。

  1. 自分は、これまでこんなことにやりがいを感じてきた

  2. 会社や仕事について、このような考え方を持っている

  3. 貴社の理念や仕事のスタイルは、自分自身の仕事観に合致しているので、強い興味を持っている

という論法で、いかに自分がその会社・仕事に合っているか、「マッチング度合い」を示してほしい、というのが面接官の本音です。

 最後に1つ注意。「わたしはコミュニケーション能力があります」と自己主張するのはやめましょう。コミュニケーション能力や論理思考力の有無は、聞き手があなたの話から判断するものです。

● 意欲や姿勢

  • 「いままでとはルールが違う社会に入る」という事実を受け入れて、「腹がくくれている」

  • タフで打たれ強く、負けず嫌い

  • 小さなことでも「幸せ」を感じることができる

 最後に精神面のお話です。一言でいえば、「社会人としてのマインド」を期待する、ということです。

 社会人になれば自由時間が少なくなり、気の合わない人とも付き合わなければなりません。その前提をしっかり認識できているかどうか。厳しい局面でもいとわない精神的な強さがあるか。これらはいずれも、社会人として必要な資質です。

 面接官が皆さんの経験談を聞く意図は、決して「何をしたか」という事実が知りたいからではありません。経験から結果に至る過程を通して、これら「社会人としての資質」を判断しているのです。

■ 「志望動機は?」の裏に隠された判断基準

 面接で聞かれるのは、大きく2点です。

1. 学生時代に頑張ったこと/打ち込んだことは?

  • やろうと思ったきっかけは?

  • どんな目標設定をしたのか?

  • 集団で取り組んだ場合、自分の果たした役割は?

  • トラブルや大変なこと、つらい局面をどう乗り越えたか?

  • 結果として得られたことは何か?

2. 当社の志望動機は?

  • なぜこの業界/会社/仕事を選んだのか?

  • ほかにも同じような会社がある中で、なぜ当社なのか?

 1から面接官が知りたいのは、次の2点です。

A. 経験を通して何を学んだ/得たのか?

 単に体験談を聞きたいのではなく、同じ経験の中からいかに多くを学び取れる人間なのか、本人の「気付き」の深さと、将来の伸びる余地を判断します。

B. それを社会でどう生かせるのか?

 具体的なエピソードを通じて、どんな行動特性(意識せずとも発揮される強み)を持っているのか、それをビジネスでどのように生かせそうかを判断します。

 2から面接官が知りたいのは、次の点です。

C. 当社と本当にマッチングするだろうか?

 ユーザー目線しか備えていないような、単なる「ファン」を企業は求めていません。また、人気ランキングや社員の印象など、表面的なイメージだけに引かれる人も求めていません。入社後、「イメージと違った」と思われても困るのです。

 どんな価値観/仕事観を持っていて、自社とどこが合うと考えているのかを面接官は知りたいのです。実際に仕事をすると大変だと感じる部分はあるでしょう。それでも「理念」や「やりがい」に共感する部分があれば、ミスマッチは起きないはずです。価値観のズレはないか、マッチングしているか、といったことを面接官は判断しています。

■□■

 面接は確かに「選考の場」ではありますが、皆さんの「優劣を決めている」わけではありません。むしろ「自分に合っている会社かどうかを確かめるコミュニケーションの場」であるといえるでしょう。

 ぜひ、面接官とのコミュニケーションを楽しんで、幸せに働ける会社を見つけていただきたいと願っています。

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筆者プロフィール
新田龍(にった りょう)
ブラック企業アナリスト、キャリア教育プロデューサー、大学講師、株式会社就活総合研究所 代表取締役、および株式会社ヴィベアータ 代表取締役。
早稲田大学政治経済学部卒業後、ネット上で「ブラック企業」といわれる2社において事業企画、コンサルタント、人事採用職を経て独立。「すべてのはたらくひとをハッピーに」を目指し、これまで5000人以上の面接・カウンセリング経験、早稲田大学など20大学でのキャリア指導経験を持つ。著書に『人生を無駄にしない会社の選び方』、(日本実業出版社)がある。

連載:学生よ騙されるでない! ブラック企業の見抜き方



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