インターンシップを実施する企業や参加する学生が増えてきた。「インターンシップでは何ができる?」「どんなスキルを得られる?」――インターンシップを行うIT企業の取り組みを紹介しながら、学生が気になる疑問に答える。 |
インターンシップを実施する企業や参加する学生が増えてきている。2009年に毎日コミュニケーションズが行った調査によれば、2010年卒の学生のうち45%がインターンシップに参加した経験があるという(参考)。
では、学生はなぜインターンシップに参加するのだろうか。大学生の就業支援をするピグマ 代表取締役 兼 コーチの太田智文氏は、インターンシップの参加意義について、次のように述べている。
就業体験をとおして、想像していた仕事の内容を現実のものとして理解でき、自分がやりたいことかどうかが分かる。百聞は一見にしかず、それがインターンシップの醍醐味(だいごみ)だ
インターネットや書籍でさまざまな情報を収集するのはもちろん大事だが、実際に体を動かしてみなければ分からないこともある。
ただ、せっかく参加するからには、新しい知見や経験を得られるような「自分のためになる」インターンシップに参加したい。
本連載では、今年インターンシップを実施するIT企業の具体的な取り組みについて紹介する。「IT企業のインターンシップに参加してみたいけど、何をするのかよく分からない」と悩む学生の一助になれば幸いだ。
ECナビは、新規事業をつくる「Frontier」、プログラミングでものづくりをする「Treasure」という2つの夏季インターンシッププログラムを行っている。特に「Treasure」は、プログラミングに興味を持つ学生が集まるインターンシップとして注目を集め、最近は数百人の応募が集まるという。同社は何を目的にインターンシップを行っているのか、参加した学生はどんなことを学べるのか。ECナビ 人事本部 本部長の後藤尚人氏、人事本部の清水一貴氏、インターンシップ経験を通じてECナビの子会社 adingoに入社した南大津寛(ひろし)氏に話を聞いた(以下敬称略)。
――「Treasure」プログラムの概要について教えてください。
人事本部 本部長 後藤尚人氏
|
後藤:8月から9月にかけての1カ月間、10時から18時までしっかりプログラミングを学び、実際にプロダクトを作る「実践形式」のプログラムです。いわゆる「業務経験」といったものではありません。「プログラミングをしたことがない学生でもインターンシップ終了後にはものづくりができるようになる」ことを目指しています。
――「1カ月間、朝から晩まで」というと、かなり濃い内容のプログラムになると思います。その狙いは何ですか。
後藤:学生に、「成長」を実感してもらいたいためです。プログラミングスキルがほとんどない人でも確実に成長を実感してもらうためには、このぐらいの期間と密度が必要です。実際、参加した学生のほとんどが「成長した」「1人でものづくりができるという自信が持てた」といってくれるので、始めたときからずっとプログラムの基本的な構造は変えていません。
――「成長」というキーワードが出てきましたが、ECナビがインターンシップを行う目的と関連があるのでしょうか。
後藤:そうですね。ECナビではCSR活動の一環として「学生支援」を行っています。インターンシップは、社会で通用する技術や事業を学生に知ってもらう良い機会だと考えています。Traasureは、「インターネットテクノロジーの面白さを体感してもらう」ことを最大の目的としています。より多くの学生に、プログラミングの面白さを感じてほしいですね。
――インターンシップは、採用活動と直接結びついているのでしょうか。
後藤:採用に直接結びついているというわけではありません。インターンシップ告知の時点で「採用活動の一環」だと打ち出していた時期もありましたが、現在は違います。もちろん、学生とわたしたちの思いが一致したら採用するケースはあります。インターンシップの目的は、「学生に成長を感じてもらうこと」と「未来の技術者育成」です。たとえ、インターンシップに参加した学生がうちの会社に入社しなくても、まったく問題はありません。IT業界のどこかで、楽しく仕事をしてくれればいいと思っています。それは「業界の活性化」というわたしたちの願いと矛盾しません。
――プログラムのスケジュールについて教えてください。
人事本部 清水一貴氏
|
清水:まず、インターネット上で募集をして、プログラマとしての適性検査を行います。そして適性検査に合格した学生全員と面接を行い、合格者を決定します。応募は毎回400人程度。適性検査で半分ほどになり、面接でさらに8分の1まで絞ります。文系、理系は不問です。
――かなりの倍率ですね。毎年、どれぐらいの人数が参加するのでしょうか。
清水:2006年は、「インターンシップ」という言葉がいまほど知られていなかったにもかかわらず、6人の学生が参加してくれました。2007年は12人、2008年は24人、2009年は14人と、毎年10人以上の学生を受け入れています。今年は、これまでで最大規模の30人程度の学生を受け入れようと考えています。
――合格基準について教えてください。
清水:研修内容はほとんどが「プログラミングの実践」なので、もちろんプログラミングを理解するための基礎的な素養などを求めています。ただ、最も大切なのは「インターネットやWebに対する興味関心を持っているか」ですね。
――1カ月間、具体的にどのようなことを行うのでしょうか。
清水:プログラムは、大きく分けて前半の「座学・演習」と、後半の「グループワーク」の2部に分かれています。「座学・演習」では、講師を担当するエンジニアが、言語やデータベース、フレームワークやセキュリティといったプログラミングの基礎を、朝から晩までかけてしっかり教えます。
前半の最後の1週間は「中間発表」のための課題制作を行います。座学で習った技術を生かしながら、学生がおのおの掲示板サービスやRSSリーダーなどの課題作品を作ります。中間発表で合格した人のみが、後半のグループワークに参加できます。
――現場のエンジニアが講師としてずっと教えるのですか! それはすごいですね。
清水:講師を担当するエンジニアは、インターンシップの間は通常業務に加えて講師も主業務となります。社員のコミットメントは非常に高く、エンジニア全体でインターンシップを支えるような感じですね。うちの社員は教えたり、世話を焼いたりすることが好きな人が多いので、皆が楽しんでやっています。
――課題制作の審査があるということですが、難易度はどれくらいなのでしょうか。
清水:インターンシップに本気で取り組んでほしいため、「頑張れば合格できるレベル」にしています。講義中は皆で非常に和気あいあいとしていますが、それだけではやはりだらけてしまいます。明確な目的があった方が、座学参加によい緊張感が生まれると思います。
――不合格者はいるのでしょうか。
清水:半分ぐらいが不合格になる年もあれば、全員が合格する年もあります。年によってまちまちですね。「教えられた技術をきちんと使っている」「要件を満たしている」という判断基準にのっとって、合否を決めています。もちろんインターンシップに取り組む姿勢も重要な評価ポイントとなります。
「プログラマに適性があるかを知りたかった」、参加した学生の本音 |
@IT自分戦略研究所は2014年2月、@ITのフォーラムになりました。
現在ご覧いただいている記事は、既掲載記事をアーカイブ化したものです。新着記事は、 新しくなったトップページよりご覧ください。
これからも、@IT自分戦略研究所をよろしくお願いいたします。